序章
プロローグ①
中世ヨーロッパに良く似た世界……広大な7つの大陸の1つにレムリア大陸と呼ばれる大陸があった。その大陸には8つの独立した国があり、その中央に位置する場所にエルテンシア王国と呼ばれる王国があった。エルテンシア王国は他国と比べると小さな国ではあったが……300年以上続く歴史と繁栄を極めながら、他国との共立を保ち、常に先進性を維持し続ける小王国であった。その小王国に今……歴史上最大の大きな窮地が訪れようとしていた。
数年程前に、隣国との辺境に位置する地にある休火山が突如噴火した。当初国はそれほど重大な事とは受け取らなかったが…その噴火と共に、地上よりも遥か奥深くから魔獣群達の大量の群れが地上に現れた。
魔獣群達の群れは、地上に生きる全ての無秩序に生き物を襲い続けた。最初は北の隣国へと押し寄せたが、山脈の険しい山側が続き、村落ばかりの国である為魔獣群の侵攻は南へと侵攻へと切り替わった。
この出来事にエルテンシア王国は騎士団を派遣し、魔獣の群れの行進を食い止める行動に出た。
魔獣は全部で5種類いる事が確認され、それぞれに特徴的な呼び名がされる。最初に巨獣……巨大な獣で、4つの目があり、6本の角を生やした巨大な生き物。その大きさは成人男性が20人位が並んでたった高さと同じ位の高さに匹敵した。
その次に中獣……巨獣の半分位の高さであるが、巨獣よりも動きが早く、4本の角と鋭い牙を生やした生き物だった。更に……翼竜と呼ばれる上空を飛行する生き物。狼獣と呼ばれる、鋭い牙と爪を生やし、素早い動きをする人の身の丈程の生き物と……小獣と呼ばれる小型の生き物が居た。
その魔獣群の侵攻に対して王国は国境にある砦、セーぺア城で侵攻を食い止めの最初の戦線が始まった。王国騎士団は最初は奮戦したが、魔獣達の終わりなき追撃により、城主であり、騎士団長を勤めていた者が戦死し、指揮が乱れて混戦状態となり、魔獣群の侵攻に苦しまされる状態となった。
その直後、当初は調査として部隊を引き連れて近くを通ったセティオロスと言う若い騎士が、砦の危機を知って直ぐに援軍として駆け付け、魔獣の猛攻を防いだ。彼等が援軍として戦いに参加した事で、砦は陥落を免れたが…何千と言う、人の身の丈を超える魔獣達の群れが絶えず現れ、いつ終わるかも不明な争いにやがて騎士団は疲弊と恐怖が募り始める。
重軽傷者や死亡する者が増えはじめる中、セティオロスも戦死し、砦は陥落して…ついには逃走する者まで現れ始めた。
国境にある休火山から出現した魔獣の群れは、国の中央高原へと進行を続ける。騎士団達の抵抗も空しく国は次々に村が襲われて…やがて魔獣達の大群の進行が王国にまで差し掛かろうとしていた。
ー 秋中旬
まるでイナゴの群れかの様に、絶えず移動し続ける魔獣群……その光景を王国の城門から眺めている兵士達は、恐怖に怯え震えていた。
「お……俺達は、このまま奴等に喰われてしまうのかな……」
「くそォ…こんな事になるなら、居酒屋の姉ちゃんに告白しとけば良かった」
「このまま、全員サヨナラなんて嫌だ……」
兵士達の嘆きに対して老いた騎士団長が現れて一喝する。
「こら、何弱気な事を言って居るのだ。我等は国や民、王女である姫様を御守りする大事な役目があるだろう!」
それを聞いた兵士達が自身に関わる大切な任務を思い出し、統率を立て直した。老いた騎士団長は周囲を見渡して、軽く笑みを浮かべる。白髪の齢80歳を越える老齢の男性は、年齢を重ねたが、長年騎士団を纏めて来ただけ在って、その威厳だけで周囲を纏める術を身に付けていた。
「そ……そうだった、我等は国や姫様を御守りする騎士団だった」
「大切な役目を忘れかけていた……」
自分達の任務を失い掛けていた時に、声を掛けられ規律し直した兵士達は覇気して、勇ましさを取り戻す。その中で1人の兵士が騎士団長に向かって話す。
「騎士団長……その、お守りする姫様の姿が数日前から見られませんが……何処に?」
「まさか姫様一人で逃げられたのですか……?」
その言葉に周囲の兵士達の視線が騎士団長へと向けられる。
「逃げたのでは無い、姫様はこの事態に備えて最善の策を打つと言って、単身で城を離れたのだ……」
「王家の方が単身で城を離れるなんて……無謀過ぎます!」
「仕方あるまい、我々としては前例の無い窮地に直面して居るのだ、姫様を信じて待つしか無いのだ……」
敵国に四方を囲まれたのなら、何らかの案が思い着くのだが…自分達が直面しているのは、人間では無かった。そう…騎士団長が思っている中、城門を守っていた兵士の一人が慌てて騎士団長の前に来た。
「た……大変です、魔獣達が目の前の広野付近まで現れました!」
「何だと!」
騎士団長は遠眼鏡を使い、目の前の広野を見ると、そこには砂煙を巻き上げながら突進を続ける魔獣達の姿があった。
「ど……どうしましょう……」
一時は活気を取り戻した兵士達の中に怯え出す者が現れ始める。
「むう……とにかく今は姫様を信じるしか無い」
しかし…城を出た王女が何時戻るかも不明な中、騎士団長にも焦りの色が現れ始めていた。
その直後だった、周囲からざわめきが轟き、それと同時に「恐れる事はありません……」と、囁き掛ける声が聞こえた。
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