居酒屋①

 〜数日後……


 森林地帯での騒ぎが近くの村で話題になった。


 ギルドのメンバー達が凶悪そうな魔物に襲われ、生き残ったのが2人だけで、しかも……助けてくれた男性は、謎の人物で聖魔剣を持っていた…と言う事だった。

 


 〜村にある居酒屋


 「それにしても、俺は聖魔剣の所有者ってのは、今まで綺麗なお姫様ばかりだと思っていたが、まさか……男性だったとは全く予想外だな」


 「お前な……聖魔剣とは、聖なる魔剣と言う意味なんだよ、つまり……聖剣でもあり魔剣でもあるのだ。それによ……昔、国を救ったお姫様が、転生しても必ずしも美しい女性とは限らないんだよ」


 「ほお……つまり、お前さんが言いたいのは、ギルドに参加している者を救ったと言うのは、転生した王女だと言うのかね?」


 「そうは言わんが、可能性として無いとも言えないだろう?話を聞く限りだと…」

 「まあ、そうだな〜」


 などと酒呑みの男性達の会話を耳にしながら、1人カウンター席で発泡酒を呑んでいる黒色のマントに、三角帽を被った男性の姿があった。


 彼は、数日前の事を思い出していた。



 〜マネニーゼ市場、宿の前……早朝


 リーミアは神殿に行く為に、荷物の整理をしていた。サリサもリーミアの荷造りの準備の手伝いをしていた。


 宿の主人と女将は、数日前に帰宅したばかりのリーミアを見て残念そうな表情をしていた。


 「神殿での修行が終わったら、是非ともまたご利用してください!」


 宿の女将が悲しそうにリーミアの両手を掴みながら言う。


 それを傍で見ていたセフィーの姿があった。彼は大神官の依頼で、旅に出る準備をしていた。出発前に一度宿に来て欲しいとリーミアに言われて、馬を連れて宿の近くで待機していた。


 (全く賑やかな連中だな……)


 そう思いながら1人で空を見上げながら立っていると、リーミアが彼の側へと来た。


 「祠に向かうのですね」


 「ああ……結界を張るだけの簡単な仕事だ。直ぐに戻って来るよ」


 「良かったら、道中の資金として使ってください」


 リーミアは、金貨の入った袋を彼に渡す。セフィーは袋の中身を確認して驚いた。


 「い……良いのかよ、こんなに貰っちゃって?」


 「いずれ貴方には、私の為に働いてもらうつもりですから、その為の前払いとして受け取ってください」


 「悪いけど、俺は剣士じゃないんだ。戦闘ではもう少し腕の立つ人を雇った方が俺なんかよりも良いぜ」


 「いえ、貴方には貴方に適した仕事をして頂こうと思っております。宝探しなんかお得意でしょう?」


 それを聞いたセフィーは、一瞬唖然としたが、直ぐに笑い出した。


 「クハハ、こりゃ良いわ。気に入ったぜお嬢ちゃん、俺の事を良くわかっているな!まあ……乗り掛かった船だ。とことん付き合わせてもらうぜ、取り敢えず…この前払い金は頂いておこう!」


 セフィーとリーミアが話をしている中、リーミアの側にティオロが来た。


 「ねえ、何でセフィーさんに金貨あげて、俺には金貨くれないの?ずるいじゃないか!」


 「順番で渡すから、ジッとしていなさい。言う事聞かないと上げませんよ!」


 「はあ〜い」


 そう返事をしながら、ティオロは宿の方へと戻って行く。


 少し呆れた表情で見ていたサリサがリーミアの側へと来た。


 「あの様な者に、貴女が手を差し伸べる必要はありませんよ。彼には自分で金を稼ぐ様に躾けるべきです」


 「分かっています。でも……彼のおかげで、私も色々学習させて頂いので、それなりに尽くしてますからね……それに放って置けないでしょう」


 その言葉を聞いたサリサはフウッと溜息を吐きながらリーミアを見た。


 「お優しいのですね、まあ……国を纏める者にとっては器量の深さも大切になりますから……そう言う意味では、宜しいかと思いますね。ただし甘やかし過ぎるのはダメですよ」


 「分かってますよ」


  話が一段落すると、彼は馬に跨り改めてリーミアを見た。


 「じゃあ、ちょっと仕事を済ませに行ってくるので、失礼するよ」


 「気をつけて!」


 リーミアは手を振りながら、セフィーを見続けていた。

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