もう1人の魔剣士②

 彼が一瞬油断した直後だった。


 ボンッ!


 セドラが、彼の腹部に強烈な一撃を加えて、彼は上空へと飛ばされる。


 (何だ、この力は、奴が剣の形状を変えただけで、まるで力も増した様だ……)


 激しい激痛と共に、彼は宙に浮かされる。その時、鎧の者が彼を追う様に上空へと飛んで来た。セドラが、剣を振り下ろそうとするのを見て、彼が剣で攻撃を交わそうとするが、彼の魔剣が騎士団の剣をパキンッと折って、更に胸元の厚い鎧を切り裂いた。


 「グワァーッ!」


 激痛と共に、彼は地面に叩き落とされる。


 ドンッ……


 砂塵と共に騎士団は、地面にのめりこむ。既に虫の息で震える様な感じで小刻みに動いていた。


 「ほお……まだ生きているか、さすがだな」


 セドラが近付き騎士団を見て言う。


 「き……貴様の目的は一体何だ?国を奪う事か…それともギルドの者たちを皆殺しにするつもりなのか?」


 「どちらでも無い、ただ……強い奴と死闘を繰り返すのが目的だ。お前は中々楽しめたぞ」


 「くだらん……そんな事をしても、己の身を滅ぼすだけだぞ」


 その言葉にセドラの激しい眼光が騎士団を睨みつける。


 「言いたい事は、それだけか?」


 「愚か者め、貴様は力と欲に魂を奪われた、情けない奴だ……ウグッ!」


 最後の言葉の直前にセドラは彼の胸に剣を刺して彼の息の根を止めた。


 騎士団に刺した剣を抜くと、彼は大きく剣を振るう、すると剣は柄だけの棒状へと変わり、セドラは、それを腰の紐へと差し込む。戦いが終わって一息付くと、彼の恐ろしい眼光は別の場所へと向けられた。騎士団に刺した剣を抜くと、彼は大きく剣を振るう、すると剣は柄だけの棒状へと変わり、セドラは、それを腰の紐へと差し込む。戦いが終わって一息付くと、彼の恐ろしい眼光は別の場所へと向けられた。


 「さっきから、そこで何をコソコソしているのだルディアンスよ」


 その言葉に、木の影から漆黒の魔剣士が現れる。


 「気付イテタカ」


 しゃがれた声の主がセドラの前に現れる。


 「殺気を出しすぎだ。嫌でも気配を感じるぞ」


 「私ハ、オ前ナド、ドウデモ良イガ……メヌザガ連レテ来イト煩クテナ」


 「フンッ、あの老婆に会ったところで何の得にもならない。俺は失礼するぞ」


 セドラは森の奥へと歩みを進める。


 「別二構ワナイガ、聖魔剣二関スル情報ダガ……」


 その言葉に彼はピタリと足を止めた。


 「何だと?」


 「貴様ノ持ッテイル剣ハ、本物ノ聖魔剣デハ無イ。俺ガ先日、転生者カラ奪ッタ物コソ本物ノ聖魔剣ダ」


 その言葉にセドラが先程倒した騎士団の言葉を思い出した。


 「成程、貴様が聖魔剣を奪った奴だったのか、フン……貴様のお陰で俺が要らぬ世話を妬かれたぞ」


 「ソノ相手ヲ既二殺シテ置イテ良ク言ウ。マア……ソンナ事ヨリモ最近メヌザガ面白イ事ヲ見付ケタノダ」


 「ほお、それは何だ?」


 「聖魔剣ハ、複数存在スルラシイ」


 「なるほど……それは面白い。つまり俺はその剣を集めて、最強の剣士になれると言う事だな」


 「ソウトモ言エルガ……聖魔剣ハ、常二所有者トノ契約ニヨッテ繋ガッテイルノダ俺ガ手二入レタ剣モ、所有者ガ生キテイテ、契約解除サレテナイカラ、マダ使エズ……メヌザノ元ニアル」


 「ならば殺してしまえ、何なら俺が殺ってやるぞ」


 「無駄ダ、奴ハ今、神殿二保護サレテイル。我々デハ神殿二近付クノハ不可能ダ」


 「なるほど……厄介な物に護られているのだな……ところで、他の聖魔剣の場所はわかるのか?」


 「気ニナルノカ?」


 「位置情報さえ教えれば、俺が全ての聖魔剣を集めて見せる」


 「ソレハ構ワナイガ、メヌザガ構想シテイル筋書キダケデモ聞ク価値ハアルト思ウガナ……」


 「ほお、一応念の為にどんな内容かだけは聞いておこうか」


 「聖魔剣戦争ダ!」


 それを聞いたセドラの鋭い眼光が兜の下からギラついた。


 「なるほど、面白そうな筋書きとも言える……グフフ」

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