光の洗礼②

 ––––占星術師の店……


 ティオロはリーミアを連れて、レンティの店に来た。彼女にとってはギルド集会所に初めて参加登録した日以来だった。


 2人は相変わらずお化け屋敷の様な店を眺める。


 店の前には2つの人影があった。人影の1つはセフィーだった。


 「よお、遅かったな」


 セフィーは軽く手を振った。


 ティオロとリーミアは、もう1つの人影を見た。その人物は男性であるのは確認出来たが…風変わりな格好をしていた。


 フード付きのマントを掛けていて、そのフードを頭から被り、派手な眼鏡をして居て、鼻から口を布で隠していた。完全に素顔を隠した男性だった。


 彼はリーミアを見るなり、手袋を外して彼女に握手して来た。


 「やあ!君が噂の少女だったんだね。初めまして、君に会えてうれしいよ」


 「あ……はい。はじめまして。宜しく」


 陽気な雰囲気の彼に、2人は少し戸惑った。


 リーミアは彼が腰に携えている剣の鞘を見た。長剣で美しい煌びやかな模様が刻み込まれた鞘だった。鞘の口元付近と。剣の柄には赤色の魔石が埋め込まれている。金属で作られた鍔と相当使い込まれたと思わせる柄を見て、かなりの戦歴があると感じられた。


 「すみませんが、お名前は」


 リーミアの問いに彼は少し考えこんだ。


 「そうだね。アーレスとでも呼んでくれ」


 変わった返事に2人は唖然とした。


 (呼んでくれって何だ…?本名じゃないの?)


 ティオロはアーレスと言う人物を見て思った。


 「あ、私は……」


 「知っているよ、リーミアちゃんだね。君は僕達の間では有名人だからね、そっちの彼はティオロ君だろ?」


 「はい、そうです……初めまして」


 ティオロがアーレスに向かって返事をする。


 「まあ、立ち話もなんだ…。中で話をしよう。占い師の婆さんも待ちくたびれている筈だから」


 セフィーは一同を店の中に入るように手招きをする。


 「あのアーレスと言う方…相当強そうね」


 「え…そうなの?変わった男性にしか思えなかったけどな…?」


 彼女は握手した手を見ていた。


 まだ店の入口に立っている2人を見ながらセフィーがアーレスに声を掛ける。


 「例の嬢ちゃんはどうだった?」


 「噂以上だね。本領発揮したら、何処まで強くなるのやら…」


 彼は嬉しそうに言う。


 店には客人を待っていたレンティが大きなテーブルを用意して、彼等を待ち構えていた。


 「ようこそ。ヒヒヒ……」


 セフィーの後ろからリーミアとティオロが後に続いた。


 彼等はレンティを取り囲むようにして椅子に並んで腰を降ろした。


 「一応……次いでを含めて全員揃ったけど、どんな話なんだ?」


 セフィーがレンティに向かって話す。この場で彼が言う次いでとはティオロの事だった。


 「そうだな……湿地帯でリーミアちゃんが聖魔剣を奪われた事は皆が既に知っているよだな」


 そこに揃った面々は皆頷いた。


 「実はな、聖魔剣に付いて、私は先日王立図書館に大神官に招かれてな、そこである情報を得て知ったんだ。我々の知っている聖魔剣とは複数存在していたのだよ」


 「ええーッ!」


 その場に居る誰もが驚いた様子だったが、リーミアだけ落ち着いた様子だった。それを見たレンティは「なるほど……」と、頷きながら彼女を見る。


 「リーミアちゃんは、知っていたんだね」


 レンティの言葉に周囲の目が彼女に向けられる。

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