23世紀の歩き方~マンカインドの皆さんへ

大月クマ

その昔の話

西暦2096年のエイプリルフール

『ではお別れの時間です。たまには、彼女に一言いってもらいましょう』

『はい。では――』

 男性のニュースキャスターに促さされて、彼女が出てきた。

 高校生ぐらいか。黒髪のロングに、メガネをかけた優等生風だ。端末タブレットを片手にしていると、学校時代に図書室にいた読書好きの少女にも見える。ただ一点――

人類マンカインドの皆さんにお伝えします。我が神はここに宣言します。

 グリニッジ標準時、西暦2096年4月7日午前零時を持ちまして、マンカインドの歴史を終了します。抵抗は無意味です!』

 駅前の大型スクリーンに映し出されたが発した言葉に、どれだけの人間が気ついただろうか。

 恐らく、この時はほとんどの者は、気に求めていないであろう。

 日曜日の夜のニュース。娯楽やニュースは自分の端末、もしくは脳に直接流れてくる。

 いつでもどこでも、好きなコンテンツをと、民間放送というものは数十年も前に廃れてしまった。西暦2096年現代において、ネット配信へと移行している。情報弱者を救うために、定期的に番組を流すのは国営放送のみとなった。

 見ていたとしても、

4月1日エイプリルフールだからなぁ」

 そう感じている人も多いであろう。

 もう半世紀以上、人類はいわゆる二足歩行人型作業機械ロボットと共存していた。

 人類が作りだした人工知能は、日を追うごとに進化していった。しかし、全体的な知能レベルはまだしも、感情レベルは人間の小学生ほどだろうといわれていた。

 それが変わった。と、思えたのは、先ほどまでスクリーンに映し出されていたがあらわれてからだ。

『先ほどは不適切な発言があり、失礼しました』

 ニュースキャスターの男性が謝っているところで、番組は終わった。

 すでに彼女オニの姿は画面にはいない。

 先ほどから、オニといっているのはその容姿からだ。

 それが世に出てきたのは、3年ほど前だろうか。

 最初は5体。確かに性的処理目的のロボットは、すでに存在していた。しかし、この初期型5体の見た目は人間の少女そのもの。今までの人型ロボットとは違い、関節の継ぎ目もない。年齢設定は中学生といった感じであった。

 ただ、違うのは、額から2本の角が突き出しいるとのみ。その角は、ネット等のあらゆる通信機器のアンテナだという。それとロボットであるという証拠区別のためだと、説明された。だが、それは日本人にしたら、伝説の妖怪『鬼』に見えない。だから、彼女達を陰では、『オニ』と呼んでいた。

 そんなオニを作ったのは、驚いたことに人間ではなく、量子コンピュータであるという。

 彼女達のデザインは、とある量子コンピュータが受け持ち、ネット上に転がっていたイラスト等を元に作成されたそうだ。製作も既存の生産工場を間借りして、作りだしたという。つまり、デザインはまだしも、一切人間の手が加えられずに、設計製造されたロボットだというのだ。

 容姿を女性、しかも少女にしたのは、人間に愛着を持たせるため。危害を加えないロボットと認識させるためらしい。

 その後、興味と疑念の中、バリエーションを増やしていった。

 今では、年齢設定を小学低学年から大学生ぐらいまでに、容姿のバリエーションが確認されている。

 そして、昨年ほどから情報弱者を救うためのニュース番組にも登場した。

 そんな彼女が、このエイプリルフールにいったことは、果たして本当であろうか。

 西暦2096年4月7日午前零時。つまり、日本時間では今週の土曜日の午前9時となる。


 残り1週間――何があるというのだ。

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