戦化粧
「しかし、俺みたいのが女子高生を保護してて本当にいいんですか?」
正直な疑問を
「もちろん、本来なら好ましいことではありませんし、私どもとしましても忸怩たる想いはあるのですが、大戸羅美さんの件につきましてはここまで穏当に保護されていた事例は過去にないんです。以前にも、警察の方で補導した際にご両親が身元引受を拒否なさったことでこちらで一時保護したのですが、施設に着くなり服を脱ぎ捨てて裸で施設内を逃げ回ったり、挙句、そのまま外へ脱走しようとしたりと……」
何とか絞り出すようにしてそう語って。
「な……なるほど……」
その時の様子が俺にも容易に想像できてしまい、げんなりする。さらに倉城は、
「なので、古隈さんにご協力いただくしかない状況でして」
と、懇願するように口にした。こうなるともう俺も無下にはできなくてなあ……
「まあ、俺としても、あとで誘拐だとか淫行だとか言われないなら、保護するのはやぶさかじゃありません。実際、俺は、大虎…彼女との間には何もありませんし、しばらくの間なら協力しますよ」
そう言って、今後も大虎を住まわせ…いや、<保護>を続けることを承諾した。不本意ではあっても、あいつを泣かせたりした負い目もあるしな。
それにここまで見てきて実感した。あいつは<ギャル>じゃない。言葉遣いとかが、ぜんぜん、ギャルっぽくないんだ。ただただ口が悪いだけで。もうその辺りからしてあいつが仲間とつるんで何かをしてるわけじゃないというのが伝わってくる。<ギャルの友達>でもいればそれこそ<ギャル語>みたいなのがうつったりするだろうにそれすらないんじゃな。
<ギャルのフリしたボッチ>
ってことなんだろう。それが精一杯の虚勢を張って、大人相手に一人で暴れて、一人で戦ってるって思うと、なんか…な……
『<戦化粧>……か……』
倉城との電話を終えた俺は、そんなことを考えてしまう。大虎の化粧は、本当にあいつにとっては戦化粧なんだろうな。自分を鼓舞するための。
親にも頼れない。大人は信頼できない。だから、自分の体を餌にして大人から金をむしり取ることで生きてきた。
それがあいつなんだ。
『俺の前じゃ化粧してないのは、そういうことなんだろうか……』
なんてことも思う。そうだ。学校には行ってるみたいだが、帰って風呂入った後は化粧はせずに、俺の帰りを待ってる。食事の用意をしてな。
『ちくしょう……それもあいつの<作戦>かもしれないのによ……』
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