コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~
京衛武百十
捨てられたおっさん
「ここに離婚届があります。これに署名押印してください。それであなたにとっても不本意だった結婚生活が終了します」
その日、十五年連れ添った妻にそう告げられ、俺は独り身となった。
離婚の条件は、
『財産は均等に分ける』
『慰謝料はなし』
『長女の親権は妻』
『養育費は月五万円(半分は妻が負担)』
『長女との面会については応相談』
というものだった。ただし、月収手取り二十二万円の俺と、会社役員で年収一千万円を大きく超える妻との間でのその条件だと、正直、俺にとっての方が大変に有利なものだった。主に妻の収入で構成されていた預金三千万円に自宅の評価額二千二百万円の半分を俺が現金で受け取り、その中から月々五万円の養育費を、長女が二十歳になるまでの約八年間支払えばいいだけなので、たとえ一括で支払っても二千万は残る。
ただ、長女は俺の子でもあるという事実を忘れないようにするために、毎月五万円を支払うという形になった。
まあ、これも要はただの<体裁>だ。本音を言わせてもらえば長女に対する愛情なんてものもないから、本当はどうでもいいし、長女も、俺がいなくなることについてはどうとも思ってないのを感じる。ここで変に泣かれたりしてもいい気はしないのでむしろありがたい。
ちなみに長女は俺にそっくりだ。<托卵>なんてものを心配する理由は微塵もない。赤ん坊の頃の俺の写真と長女の写真を並べると、写真の古さでしか区別がつかない有様である。
よく見れば眉毛の形が妻に似ているかも? という程度だった。
長女としてはそれが大変に不満なようだが。
でも、美醜なんてものは結局はバランスの問題なんだなと分かるほど、俺に似ているクセに顔立ちは可愛らしいんだ。つまりは俺の顔も、バランスさえ取れればそれなりに見られるものだということなんだろうな。
ただし、体形の所為もあってあだ名は<コグマ>だが。名字が<
別にこれもどうでもいい。
そんなこんなでアパートを借りて一人暮らしを始めた俺だったが、その三日目にいきなり厄介事に巻き込まれることになった。ようやく気楽な一人暮らしを始められたというのに、<大虎>が転がり込んできたんだ。
<
で、あだ名が<大虎>。市内の底辺高に通うという女子高生だ。
大虎は、いわゆる<パパ活女>で、待ち合わせ相手にすっぽかされて泊まる当てがないということで俺の部屋に強引に上がり込んだんだよ。
早速、<未成年略取で逮捕の危機>だとか、冗談じゃない。
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