第3話 お別れの道
「お
どこまで行っても見知らぬ町並み。次から次へと目新しい道ばかり。でもこの道でいいはずだ。ここを行けばお家に着ける。
みんなが僕を待っているんだ。
「早く帰らなきゃ。お家に帰るんだ」
歩けば歩くほど、進めば進むほど迷うような道だな。決して出られない迷路の中をぐるぐる回り続けているみたいだ。でも歩かなきゃ。戻らなきゃ。
暗くなり風も吹いてきた。周りの景色も闇に埋もれてよく分からない。
寒いなぁ。寒くなってきたなぁ。
「お家に帰らなきゃ。早く帰らなきゃ」
みんながきっと心配している。いなくなった僕を捜しているに違いない。知り合いにも声を掛け、みなで僕を捜し回っているに間違いないんだ。前のように温かい食べものを用意して僕を待っているはずだ。「ごめんね」って言わなくちゃ。「心配掛けてごめんね」って。
いつの間にかみんなが見えなくなって、ひとりになって、僕は自分がどこにいるのか判らなくなって。でもこの道だったと思う。僕が来た道はたしかこの道だったと思う。迷う道は無数にあるけど、帰る道は一つしかないんだ。
「お家に帰るんだ。みんなが僕を捜して、待っているんだから」
「道に迷ってごめんねって言うんだ」
「さよならじゃないんだ」
(つづく)
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