学生生活
遠藤良二
第1話 孤独を愛する男子高生
僕は今朝から図書館にいる。ひとりで勉強しているのだ。大学の受験勉強。お昼ごはんは、母がつくってくれたお弁当。母は、僕の大学受験を応援してくれている。でも、父は昼間からお酒をのみ、アル中だとおもう。たまに、母や妹や僕に暴力をふるう。そういう場合は、かまわず警察をよぶ。まえまでは、父の暴力にただ、がまんしているだけだった。父は、お金がないという理由で、進学を反対している。これについては、以前にも父にはなしたがわすれているのだろう。奨学金をかりて進学する予定。これなら、親に迷惑はかけないはずだ。
僕には、一緒に勉強するような友達はいない。でも、さみしいとは感じない。小学生のころから、独りで行動していた。先生から、自分からはなしかけないと、友達はなかなかできないぞ、と言われつづけている。でも、僕は友達はいなくてもいいとおもっている。ひとりのほうが気楽。それを言うと、変わったやつだなとおもわれているようだ。まあ、いいのだ。だれに、どうおもわれようと、ひとはひと、自分は自分なのだから。この発言は、周りからは、おまえつよいなぁ、と言われる。だからうれしい。
お昼になり、場所を変えてごはんを食べることにした。
いまは冬休み。道路はアイスバーンになっていて、ここに来るときもすべって何度もころびそうになった。
お昼ごはんを食べ終わって、すわっていた椅子から立ち上がろうとしたとき、同級生が図書館にはいってきた。あっ、あれは……。僕のきらいな
「よう! 押辺(おしのべ)。また、独りでお勉強かよ」
いやなやつだ、あいかわらず。
「きみには、関係ないだろ」
僕は彼女の顔を見ずに言った。どこかに行って欲しい。近づかないでくれ、そうおもうが言いはしない。というか、言えない。僕の気弱なところを関谷はばかにしてくる。卑怯なやつだ。彼女は僕とおなじクラスメイト。出逢ったころは、ばかにするような態度はとらなかったのに、なぜ? 慣れ、というやつか。
「そんなこと、言っていいのか? いじめるぞ」
そう言ってわらっている。僕は、
「ここは図書館だ。しずかにしろ」
「ずいぶんと強気じゃない。らしくないなぁ。おまえは、気がよわいんだ。いじめられて、陰で泣いてろ!」
僕は言い返すのが、だんだんいやになってきた。ばかばかしい! なんで、そんなこと言われないといけないのだ。でも、ここで引き下がってしまうから、なおさら馬鹿にされるのかもしれない。だから、
「勉強の邪魔だから、どっかに行ってくれ!」
と、僕は言った。
「けっ、かわいくないやつ」
そう言ってから去って行った。僕は、どっちがかわいくないのだ、とおもった。
僕は、苛々しながら勉強していた。でも、そんな気持ちで集中できるわけがない。手を止めて、ため息をついた。
「はーっ、いやになる。関谷め!」
きづいたら、つぶやいてた。
と、そのとき、スマホが鳴った。図書館のなかでは、スマホの電源を切るか、マナーモードにしなければならない。それをすっかり忘れて、普通に着信音が鳴った。やばい、とおもったので、着信を切った。図書館の職員がこちらを見ている。僕は目をそらして、スマホを見た。相手は、関谷からだった。いったい、なんの用があるのだ。とりあえず、スマホの電源を切り、勉強を再開した。全く、余計な邪魔者が来たものだ。でも、いなくなったから、また、集中しよう。
折り返しの電話は家に帰ってからにしよう。
今は国語の古文の課題をしているが、難しい。僕はどちらかというと、数学がすきだ。答えがはっきり出る科目。国語は読み手によっていくらでも答えがあるから苦手。まあ、テストの場合、答えは一つにしてあるけれど。だから、何とかなっている。
自慢じゃないが、今までで一度も赤点を取ったことはない。僕のクラスメイトで、唯一の話し相手、
僕はたまに、大道に勉強を教えている。教師じゃない僕から教わるなんて、プライドがないのかな。いいやつだけれど。律儀にも、勉強を教えてもらったという理由で、コンビニでパンやお菓子を買ってくれる。いらないと断っても、「いや、これからもお世話になると思うから、受け取ってくれ」と、言う。僕は、真面目なやつだな、と感心している。だから、ありがたく受け取っている。
僕はいないが、大道には彼女いるのかな? まえに、彼女ができた! と言ってよろこんでいた時期があった。あれから、どうなったのだろう。あのときは、本気でうらやましかった。今度、訊いてみよう。でも、今は彼女はいらない。察してほしいという子ばかりで困る。言ってくれないとわからない。
女子から告白されたら考えるけれど、僕から好きになることも、告白することもないと思う。今のところ。
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