10話:女って怖い……

 学校が終わり家に戻った俺は、アウラに安倍さんから聞いたことを全て話した。

 彼女は少し、複雑そうな表情をしていた。


「別に守ってなんて頼んでないわ。でも、ありがとう」


 感謝を告げるアウラを見て、俺は思わず顔を上げた。

 アウラは少し照れくさそうにしながらも、コホンと咳払いをしてそっぽを向いた。


「勇夜は仇だけど、それとは別なんだから!」


 耳まで真っ赤にしたアウラを見て、俺は微笑ましくなった。

 しばらくしてアウラが俺に言う。


「私も行く」

「え?」

「だから私も行くっていうの! その妖怪とかいうヤツを倒しに」

「来なくても――」

「行く!」

「……わかったよ。でも、変なことはするなよ?」

「しないわよ!? 私を誰だと思っているの!」


 そんなこんなで、当日はアウラを連れていくことになるのだった。


 数日が過ぎ、小さな地震が日に日に多くなってきた。

 恐らく安倍家が封印している妖怪の影響なのだろう。

 俺は安倍さんから学校で、いつその儀式が行われるのかを聞くと、来週の土曜日ということだった。

 それまでに一度、俺はアウラと安倍さんの顔合わせを行うことにした。

 アウラも会ってみたいというので、丁度良かったのだろう。

 安倍さんの日程に合わせ、夜に公園で会うことになった。


「安倍さん、この子がアウラだ」

「アウローラ・グラナティスよ。勇夜から話は聞いているわ」

「私は安倍彩華です。朝桐くんから話は聞いてます」

「あなた、勇夜とはどういう関係?」


 アウラの発言に、俺はブフッと、飲もうとしてたお茶を噴出した。

 だが二人は俺を無視して話を続ける。


「私と朝桐くんの関係ですか? そうですね……友達以上、恋人未満ってところでしょうか?」


 ゴホッゴホッと残っていたお茶が器官に入って咽る。


「そ、そうなの。私は勇夜と一緒に住んでいるけどね。夜も一緒なんだから」

「へ、へぇ~、そうなんですか」

「いや、ちょっと――」

「「勇夜(朝桐くん)は黙ってて!」」

「ハイ」


 それから小一時間二人は言い合いを続けていた。


「な、なあ? そろそろ止めにしないか?」


 俺は二人の間に割って入り、仲裁する。

 俺の仲裁もあってか、落ち着きを取り戻した二人。


「今日は勇夜に免じてこの辺にしとくわ」

「朝桐くんに免じて、今日はこの辺にしておきましょう」


 何か怖い物を感じるが気のせいだろう。

 聞いたらいけない気がした。


「それで、当日だが」


 俺とアウラは安倍さんから細かい話を聞いた。

 当日は安倍家が管理する山で行われるようだ。


「この山に封印されているのか?」

「はい。山頂に神社があり、しめ縄で周囲を囲ってます。逢魔が時に、儀式が決行されます」

「逢魔が時……」


 逢魔が時。古語であり、夕方と夜の移り変わる時間のことを示し、妖怪や怪異などの魔物と出会いそうな時間のことを言われている。

 確かに儀式を行うのに持ってこいの時間帯だろう。


「それと、儀式は複数人で行われます。山の周囲も安倍家の者が取り囲み、侵入者や外から見られないための結界が張られる予定です」

「分かった。言っておくが、俺は計画とかないからな?」

「え?」


 素で驚いたのだろう。

 アウラが口を開いた。


「大した敵でもないのに、計画を練る必要がどこにあるのよ。それに勇夜なら余裕だもの」

「まあ、油断するつもりはない。絶対に助ける」

「うん、ありがとう。ではまた」


 そう言って安倍さんは去って行った。

 俺とアウラも帰ることに。


「あ、勇夜。アイス買って!」

「お前……分かったよ。陽菜の分も買って帰るか」


 コンビニで買い物を済ませ帰る途中、俺は陽菜になんて言い訳をするか考えていた。

 それをアウラに相談すると。


「魔法で眠らせちゃえば?」

「エグイこと言うな……」

「そう? 別に命に係わるわけでもないじゃない」

「まあ、それについては考えておくよ」


 帰宅すると、陽菜が仁王立ちで待っていたが、アイスを渡したら機嫌を直したようだ。

 なんてちょろい妹なんだ……

 それでいいのかと思うが、幸せそうならそれでいいかと思うのだった。



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