第2話 家族そして決意



「……2人ともおはよう」



先ほど実戦が一番だと結論づけた俺は、自分の2階の部屋から1階のリビングへと移動していた。

そして、リビングにてテレビを見る母さんと妹の姿を見つけると、恐る恐る2人に挨拶をした。

……元の俺の記憶がある分緊張してしまったようだ。 2人に挨拶が届いたかも怪しいぞ。



「っ!?……はーくん……??」


「っ!?……お兄ちゃん……??」



――きちんと届いていたようだ。

二人は親子らしく全く同じ反応をして驚きつつもしっかりと俺を見つめていた。

そして俺から挨拶をされたことがかなり想定外だったようで――……二人は完全に不審者の挙動をしていた。

見た感じ恐らく、俺から挨拶された事への喜び・驚き・不安が同時に湧いてきたのだろう。

コレに関しては今までの俺が冷たく接していたことが原因だから、ごめんなさいとしか言い様がないな。


俺はそう心の中で詫びつつ、二人の表情に喜びの感情が見えた事を嬉しく思っていた。

何故なら、二人がまだ俺のことを嫌いになっていない事がわかったからだ。

加えて「俺が話しかけた」……ただそれだけのことで嬉しそうにしてくれたのだ。……そんなの嬉しくないはずが無い。




「……うん。母さん、美空みく……おはよう。 そしてごめん。今まで冷たくして。」


――この世界の俺は二人に沢山迷惑をかけたからな。



「ど、どうしたのはーくん?! 何かあったの?!」



「お、お兄ちゃん?!」


俺の突然の謝罪に二人はますます混乱してしまう。

――しかし此処でやめるわけにはいかない。



「大丈夫だよ。……ただ、今までのことを反省したんだ。 それに、あと少しで高校生にもなるから。……女性にはなるべく好意的に接していきたいんだ。」


明らかに怪しさ全開だが、俺にこれ以上上手い言い訳は思い付かなかった。

――――怪しまれるだろうか?



………………





………………





………………




「……はーくん偉いよ!お母さん嬉しいっ!」



「……お兄ちゃんっ!!!」



――俺の不安をよそに、二人は見たことの無いような笑顔を浮かべていた。

どうやら心配要らなかったようだ。



「また昔みたいに仲良くしたいってずっと思ってたの!」



「美空も!…………お兄ちゃんと仲良く出来なくて寂しかった!」



……思わずグッときてしまった。寂しい思いをさせていたようだ。

記憶にある限りでは、俺は小学校低学年くらいになったあたりで女性から嫌な視線を感じていたようだ。

それが原因で同じ女性である家族に対してもよくない感情を出してしまったらしい。


これはこの世界特有のものであり、ほぼ全ての男子が経験する出来事だというのだからしょうが無いのだろう。

女性が男性を求めるのは自然の摂理であり、前世で男性が女性を求めるのと同等もしくは男女比の偏りも相まってそれ以上の状態になっている。


女性が男性を求めれば求めるほど男性は女性を嫌いになっていくという、負のサイクルが出来てしまっているのだ。

そしてそれは一度始まったらもう修正できる物では無い。親は子に、子はまたその子へと伝わっていく。

既に常識と化している。


――しかし俺だけは別だ。俺は女性を嫌うことはあり得ない。

この世界の男性が女性をそんなにも嫌うのなら、全員俺が貰う気持ちで接してもいいだろうか?

……ちょっと本気で想像してしまった。しかし、これこそ男の夢だろう。



「……今までごめん。……その、改めて、これからよろしくね!」



それに関わらず、少なくとも俺の家族には幸せになって欲しいと言う思いはある。

償い――とは少し違うが、今まで出来なかった分仲良くしたいと思う。



「うん!! 嫌なことがあったら言ってね! 直ぐ直すから!」



「そうだよ! お兄ちゃんのためなら何だってするからね!」



やはりと言うか、二人の反応は前世の女性と比べるとかなり異なることがわかる。

そしてこの世界の女性は皆こういう感じなのだろう。積極的?である 。



「う、うん。ありがとう。母さん、美空。」



しかし俺的には女性は積極的の方が良いに決まっている。理想だろう。

前世では女性に接すると直ぐに「セクハラ」等と言わる。

そして皆はそんな男性を、女性は非難的に、男性は同情的な目で見るのだ。



……なるほどな。今と全く逆なことが起きている。見事に前世と今世の貞操観念が反対だ。



と言うことは、この世界で女性に好意的に接する俺は、前世で言うところの「誑かしあざと女」と言ったところだろう。…………なるほど、悪くないな。



俺は「あざとい」とか「誑し」とかいうのは、概ねモテない奴の嫉妬だと思っている。


しかし、それはモテたい奴がモテている奴を羨んでいるからであって、この世界ではライバルがいないので関係無い。俺の独占市場だ。つまり面倒な同性からの嫉妬が無いのだ。

「異性同士の確執」については、この世界の女性同士の問題なので俺は関係無い。……無いったら無い。



――やっぱり他人から変だと思われようとも、女性には好意的に接しよう。



この世界に訳もわからず転生させられたけど、俺のやりたいことは多分そういうことなのだろう。

そしてこれはこの世界の女性にとっても良いはずだ。



女性に好意的に接してもいいどころか世界的には推奨されている。

そうなればもうやるしか無いだろう。そしてこれは恐らく俺にしか出来ないことなのだ。



――そうとなれば、これからの計画を立てる必要があるな。

それに、この世界のことを色々調べる必要がある。法律とか。

大変だが情報を手に入れないとハーレムは出来ない。


どうやら俺にはそういった情報が無かったみたいだ。

これもこの世界ならしょうが無いのかもな。男はあまり勉強する必要が無いのかもしれない。





…………とりあえず調べますか、この世界のこと。



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