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 …あっはっはっは〜っ…


 ここ2年マグロ組の教室に、生徒たちの笑い声が響きました。


 数学の授業中、担当の清水先生が面白いことを言ったからです。


 が、史都はといえば、相変わらず無表情…


 と思ったら、大間違い。


 なんと史都ときたら、皆と同じように笑顔を浮かべています。それも飛びっきりの。


 これは、どういった訳でしょう。


 さらに、打って変わって、今度は切ない話。それにも見事に対応、らしき表情を見せる史都です。


 もしや彼女、正義の為に戦って、晴れて人間に生まれ変わったとでも言うのでしょうか。


 いえ、実を言えば、その史都の笑顔にせよ切なげな顔にせよ、いずれもが精巧に作られた《お面》。例の思いつき・・・・により帝都が、知り合いの専門家に依頼して、それぞれ数パターンの表情を家族3人分、作成してもらったのです。


 にしても史都の、そのお面を操る巧みさと言ったら、まるで某国の秘技『変面』。それはそれは、一家揃っての訓練の賜物です。


「これで、もうどこへ行っても平気です〜」


 ただ、いままでがいままでだけに、やはり不自然に感じざるを得ぬ様子。先生もマグロ組の皆さんも、逆に無表情で史都をチラ見する有様。


「史都ちゃん…僕は素のままの君でいいと思うよ」


 有田くんも、なんとも言えぬ表情で彼女を見ています。


 でも、一向に気づかず。なお状況によって、次々と面を変えてゆく史都なのでした。



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