8

 帰宅後…


「…以前のよりも、ひと回り小さいが、それでも十分に力があるそうだ〜。明日から、これを持っていきなさい〜」


 史都が学校に行っているうちに、父の帝都が仕事(作家です)の合間を縫って、新しいラジカセを買ってきてくれました。


「パパ〜、ありがとさんです〜」

 

 リビング内。父と並んでソファに座った史都が、膝下のローテーブルの上に乗せられた黒いラジカセを、眺めたり触ったりしています。


 と、その最中、


 がちゃがちゃっ…ぱちんっ…


 玄関の鍵を開ける音が。


「お〜、ママか〜…でも、ずいぶんと早いな〜」


「ですね〜」

 

 ふと、顔を見合わせる父娘です。


 一方、なにやら黒服姿。まもなく、母の湖都がリビングに入ってきました。


「どうしたね、湖都〜。ずいぶんと帰りが早いようだが〜…」 


「なにかあったんですか〜」

 

 湖都を見上げつつ、帝都と史都が問いかけます。


「それが、かくかくしかじかで〜…」


 実は、近所で不幸が。それゆえ湖都は、先ほどお通夜に出かけたのですが、彼女曰く、その相手方から門前払いされてしまったのだそうです。


 いやま、当然といえば当然かも知れません。なにせ湖都は、常に笑顔ですからね。


「う〜む、このラジカセの件といい、我ら家族は何かと不便だな〜」


「ですね〜」


 父の言葉に史都も頷いています。


 まあ、3人が3人とも表情が固定されているだけに、やはり場によって向き不向きが出てくるのは、致し方ないことでしょう。


 という訳で、この機会に楠一家それぞれの、適材適所(?)を纏めてみました。


         

           【帝都】  【湖都】  【史都】

 

 《結婚式》       可     優     可


 《葬儀》       不可    不可     良

     

 《お笑いライブ》    可     優    不可

       

 《お化け屋敷》  不可〜可    不可     良


 《感動的な映画》   不可    不可     ?

 


 以上です。


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