3:クリーンで綺麗に!

「それじゃ、やってみますね」

 私はそう呟くと、頭の中に刷り込まれた魔法の使い方を思い出して、魔法を唱えた。


【クリーン】


 私がそう魔法名を唱えるとリサの身体をうっすらと光が包む。


 その光は眩しいものではなく、一瞬だけリサを包むとすぐに消えた。


「す、凄い⋯⋯」


:汚れが消えた?

:嘘でしょ!?


「り、リサが綺麗になった⋯⋯」

 使った私自身もこの目の前の光景が信じられなくて、綺麗になったリサを見て、いかに私達が今まで汚れていたのかを実感した。


「リサの髪、こんなに綺麗だったんだね⋯⋯」

 私は綺麗になったリサの髪を軽く撫でると、お話をしていた人達からまた返事が返ってきた。


:ねぇ、もう一回使えるなら自分にも使ってみたら?

:た、確かにそうね!


「そうしてみます!」


【クリーン】


 もう一度その魔法唱えると私の身体を優しい何かが包み込んだ。

 一瞬だけ暖かさを感じた気がしたけれど、それもすぐに光とともに無くなった。


「何だか、さっぱりした気がします」


:よくよく考えたら君の姿見えないんだった

:そうね⋯⋯


「えっ、私の姿見えてないんですか!?」


:多分君の見ている景色を俺達は見てるんだと思う

:嘘でしょ、私の作った解析ソフトでもCGじゃないって⋯⋯

:よしだったら投げろよ、約束だからな

:いいわよ、やってやるわ!


「な、何の話ですか?」


:今からコイツがスパチャ投げてくれるんだってさ


「良いんですか!? 凄く、本当に凄く助かります!」

 そう私は言うとふと気付いた。


「そう言えばこのスパチャっていうのはどうやって手に入れたんですか?」


:え? お金を君にあげてるだけだよ?

:スパチャ自体知らないのかしら?


「お、お金!?」

 何とスパチャと言うのはお金の事だったらしい。


「そ、その嬉しいんですけど、私にお金を渡しても、私にはお礼なんて出来ませんよ⋯⋯?」


:お礼なんて良いわよ

:代わりにさ、異世界についてもっと配信してよ、色々な街とかも見てみたいしな

:それも良いけれど、この子達の安全確保が第一だと思うわよ?

:うぐっ、それもそうだな


「私達に出来る事なら、やってみせます」

「だって、命の恩人ですから!」


:あーそれで思い出したんだけどさ、俺達の事はリスナーさんって呼んでくれたらいいよ

:そうだ、アナタの名前はなんて言うのかしら?妹はリサちゃんで良いのよね?


「あっ、そう言えば自己紹介してなかったですね! 私の名前はリナで、こっちの今寝てるのが妹のリサです」


:二人は何歳なのかしら?

:リナは10歳になったばかりって言ってたよな


「そうですね、私が10歳で、リサが8歳です」


:リサちゃん、結構大きいんだね

:発育かなり良いわね


「姉の私の方が身長小さくて⋯⋯あはは」


:スパチャあげるから、二人ともしっかり食べなさい!良いわね!

:俺ももっと色んな奴に声かけるよ

:アンタは早く働きなさいよ!そうすれば多少投げられるでしょう!?

:⋯⋯確かに、そうだな


「そ、そんな無理しなくても大丈夫ですから!」


:でもアナタ達を放置したら間違いなく後悔するのよ私

:俺も、だな

:とりあえず今からスパチャを投げるわ、だから活用して頂戴


「あ、ありがとうございます⋯⋯」

 温かい言葉に思わず涙が出そうになる。


「私達は、生きても良いんですね⋯⋯」


:と言うか何で孤児院すらないのか理解に苦しむわね私は

:こっちだと当たり前でも異世界だと当たり前じゃないんだろうな

:いや、よく考えればこっちでも似たような国はある⋯⋯か

:多くの子供を救うのは無理だけど、こうして知ったからには放っておけない、それで良いじゃない

:そう⋯⋯だよな


「孤児院、って何ですか?」


:身寄りのない子供を保護して大人になるまで生活を保障してくれる、って感じの場所かしら


「そんな場所が異世界だとあるんですね、なんだか羨ましいです」

 そんな場所がこの世界にもあったら、私達は苦しまずに生きていられたのかな。


:それじゃ、私は今から仕事があるから一旦抜けるわね、ちゃんとご飯を食べなさいよ!

:俺は時間あるからいるよ、何かあったら相談してね


「ありがとうございます、お仕事頑張ってください!」


:⋯⋯ありがと、また後で来るわね


「はい!」

 そうすると、今この場にいる人の数は1人になってしまった。


「ええっと、折角スパチャを頂いたので、少しどんなものが買えたりするのか確認してみますね!」


:うん、確認は大事だよ


「ええっと、まずは残高から見た方が良いよね⋯⋯?」

 そうして私は残高を確認してみた。


【スパチャ残高:50100】

【スパチャポイント:500】


「へっ? あの、私の気のせいですか?」


:どうしたの?


「あの、スパチャ残高が50100もあるんですけど⋯⋯」


:本当に上限投げたのか、律儀だなぁ


「上限って何ですか!?」


:1日に一人に投げられる上限の金額が50000円なんだよね


「あ、あのこれだけあったらパンが500個買えるって出てきたんですけど⋯⋯」


:パン500個は栄養バランスが悪いからやめたほうがいいよ


「栄養バランス? ですか?」


:うーん、同じ物だけを食べると栄養素が偏って体調悪くなったり、最悪死んじゃったりするんだよ


「そうなんですか!?」


:そそ、基本的にはお肉と野菜とパンやご飯なんかを食べるのが大事ってこっちでは言われてるんだ


「と言う事は、昨日貰ったあの美味しいやつは⋯⋯?」


:あれはその辺りの必要な栄養を無理矢理一つに押し込んでみたって感じの食べ物だね

:もっと美味しい物は沢山あるから、試してみるといいよ


「はい! 凄く楽しみです!」

「あっ、でも私、街に入るにはお金が必要なので、その辺りも考えておかないと⋯⋯」


:スパチャ残高をお金に交換とかは?


「確かに出来るって言ってましたけど、今お金に変えてもご飯を買えないので⋯⋯」


:それもそうか


「それにもうすぐ冬が来るんです、何とかして寒さをどうにかする方法を考えないと⋯⋯」


:じゃあテントとか寝袋は?

:安いのだったら2万円くらいで買えるはずだからスパチャポイントもそれくらいで足りないかな?


「テント、ですか?」

「ちょっと調べてみます!」

 そう言って私はテントという物を調べ始めた。


「テントセット?」

 私が調べ始めるとおすすめ!と書いたテントセットと言うものが目に入って来た。


:そんなのまであるのか


「初回限定、80%オフ?って書いてあります」


:マジかよ、ちなみに何が入ってる?


「えっと、寝袋4セット、四人用テント、コンロ、お鍋、フライパン、炭、獣除けって書いてあります」


:それキャンプ用のセットじゃねぇか!

:いやでも当分ここで生活するなら必要かもしれないな

:幾らなんだ?


「えっと、通常50000スパチャ残高が10000スパチャ残高って書いてありますね!」


:買いだ、絶対買うべき


「分かりました!」


:あとスキルも買えるんだっけ?


「買えますね!」


:収納出来るスキルとか無いのかな?


「どうなんでしょうか⋯⋯」


:じゃあそれも今のうちに調べちゃおうよ

「はい!」


 私はそう促されて購入出来るスキルを再度確認する事にした。

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