サマースクール、ネイティブ・アメリカン
ロスに引っ越してから初めての夏休みのことです。アメリカは、(いいんだか悪いんだか)日本と違い夏休みの宿題が全くありません。学年が九月に変わるし。
ですが子供のこと、もちろん管理しなければ日本以上に長い三ヶ月間の夏休み、自堕落に過ごすことが目に見えています。
そういうわけで、サマースクールやサマーキャンプの出番です。
私や妹はどちらにも行きました。なお、姉は塾に行っていました。もう中学生だったし、何より頭も良く、向上心の高い子だったのです。
サマースクールは地域のものだったので、同級生のお友だちもたくさんいて、ほとんど学校と同じでした。
好きな授業を選択して(アートとか、ミュージックとか?さすがに算数とか国語とかはなかった気がする。それともあったのかな?あるとしたら、必須で必ず受けなきゃいけない、みたいな形式かな)それぞれのクラスをハシゴする形式です。
その中に「ネイティブ・アメリカン」というのがありました。
「ネイティブ。ふむふむ、アメリカの昔からの歴史ってことね。独立戦争とか、リンカーンとか、二〇年代のフラッパーとか勉強するのかな(微妙にマニアックなことに詳しい私)」
と興味を持ち、その科目も選択しました。
そうして、当日。
「あれ、ハチミツじゃん!この授業選んだんだ!」
友だちのニッキーが笑顔になります。私もうれしくなって彼女に挨拶し、彼女の隣に座りました。
「私、ネイティブ・アメリカンの血を引いてて、だからこの授業受けることにしたの」
「へー、そうなんだ」
相槌を打ちますが、頭には?マークが浮かびます。
(ネイティブ・アメリカンの血を引いてる?ピルグリム(最初にアメリカにたどり着いたとされる人たち)の血を引いてるってこと?え?)
もしかしたら私の語学力の問題で、相手の言葉を間違えて聞き取ったのかもしれない、とりあえずにへらにへらします。
渡米してまだ半年。お味噌状態の私は、友だちに優しくされることはあっても、言葉と言葉でしっかりとコミュニケーションを取り心を通い合わせるということがまだできずにいました。
そして始まった授業。
「ネイティブ・アメリカンの文化を理解しよう」という言葉に始まり、「ドリームキャッチャー」とやらを皆で作り始めます。
とうもろこしの皮?動物の繊維?なんだかよくわからないけど、これを飾るとよく眠れるようになって、いい夢を見れる?
手作業は好きだし、ドリームキャッチャーもかわいい。
けどこれはいったいなんの時間なんだろう?
「ネイティブ・アメリカンは心身ともにとても豊かな生活を送っていました」
という締めくくりの言葉とともに解散。ニッキーともここでお別れです。
ま、いっか、ととりあえず納得して、残りの授業も受けて、母の待つ車へ向かいました。
妹とともに今日あった出来事の話をし、
「ネイティブ・アメリカンの授業受けたよ。ニッキーがいてね、彼女、ネイティブ・アメリカン?の血を引いてるんだって」
すると母が
「へー。そういえば栗色の髪だもんね、そっかー」
と妙に納得してます。
「うん、そうだね」
なんとなく知ったかぶりをして頷いてからしばらくして、
「あのさあ、ドリームキャッチャーっていうの作ったの」
「ああ、ネイティブ・アメリカンのドリームキャッチャー、お母さんも聞いたことあるよ。楽しかった?」
「うん……、なんだけど、アメリカ人って、昔からドリームキャッチャーっていうの、作ってたの?」
「え?」
母が不思議そうにつぶやきます。
「アメリカ人っていうか、ネイティブ・アメリカンはそういうの作ってたみたいだね。ホームセンターにもドリームキャッチャー売ってるよ、今度見てみようか」
「え?」
「え?」
どうも話が噛み合いません。英語が第二言語の私が友だちと話す時とは違い、母とは日本語オンリーなのに。
「ネイティブ・アメリカンって、昔のアメリカ人のことだと思ってたんだけど、違うの??」
「ああ!」
母がやっと腑に落ちた、という声を出します。
「インディアンのことだよ。差別的だから、って理由で、最近ではネイティブ・アメリカンと呼ばれるようになったの」
※さらに最近では、当の本人たちが自分のことを「インディアン」と呼ぶようになり、今では「アメリカン・インディアン」が主流とか。こちらで教わりました!
「えー……」
思わぬ落とし穴です。(そもそもそんな勘違いする人いない??)
そういえば、ピーターパンの「インディアン」の描写、日本での学習帳のCMに登場する「酋長」は妙に画一的で、西部劇に至っては
「この人たち、インディアンが悪くて自分たちはヒーローみたいな顔してるけど、そもそもここ、彼らの土地なんだよね?なんでわざわざ侵入するの?悪いの白人じゃね?」
と子供心に思ったものです。
優しいからではなく、子どもの頃から疑い深く、特にいじめられっ子っぽい側の主張が気になる性格だったので。私に容姿が似ているのはむしろ「インディアン」の方だったし。
なので、思っていたものとは違いましたが、ニッキーとの時間もあり、そのクラス自体はとても楽しく受けることができました。
ディズニーの「ポカホンタス」や「ダンス・ウィズ・ウルブス」、「
「ポカホンタス」は名作で、私も姉も妹も号泣しただけに、実際には歴史を勝者(白人)の都合よく改竄した、真実は悲惨極まる悲劇の女性だったことが本当に残念ですが。誘拐され、略奪婚を強いられた上でロンドンの社交界で花形になるも、二十二歳とかで亡くなったらしい。
映画のジョン・スミス、めちゃめちゃかっこいいんだよね。実際はクズの嘘つきらしいし、そもそもポカホンタスは出会ったとしても十歳とかだったらしいけど……最低だ。
その他のところでも、サマースクール、とても楽しかったです。
発表会もあり、「ピエロ?のクラス」を取っている子たちがコントするのをゲラゲラ眺めたり。
画一的な日本教育は、皆の力を底上げするのにかなり大きな力を発揮すると思う。
その上で、自由で、その分自己責任の世界で伸びるも留まるも自分次第、というアメリカの教育も、その国ならではだな、と思います。
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