ゴルフ場

ロサンゼルスは車社会で運動不足になりがちなためか、私の父はゴルフ場の会員となって母と一緒にちょくちょくゴルフをしに行っていました。詳しくは知らないのですが、父で仕事で知り合った方々とも、ご夫婦単位でしょっちゅう出かけていたようです。


ロサンゼルスには広大なゴルフクラブが混在していて、父が会員となったゴルフクラブも広々としたゴルフ場や明るい屋外のプール、テニスコート、それにレストランがあり、Fourth of July(独立記念日)やクリスマスなどのイベントのたびに盛大な打ち上げ花火をあげたりする、とても楽しい場所だった記憶があります。


アメリカで過ごした時に印象に残った大きなイベントといえば、独立記念日に当たる7月4日、それにハロウィン、11月の感謝祭、そしてクリスマスなどがあります。

(それらに比べるとイースターや、緑色のものを身につけて祝う聖パトリックの祝日は比較的こぢんまりとしたお祭りだったように思います)

特に独立記念日は、アメリカに行くまでは存在そのものも知らなかったのですが、行ってみると打ち上げ花火やパレードなど、国中を上げて盛大に祝うとても楽しいお祭りです。


私たち家族もそれぞれのイベントごとに、直近の休日にはこのゴルフ場で盛大にお祝いし、当日は母が家でごちそうを準備してくれて家族で祝うのが、我が家の習慣でした。

もちろん(?)、子どもたちのお手伝いは全くなく、むしろ忙しい中買い出しや荷物持ち等は父がメインに担当して、準備してくれたごちそうです。

ごめんね、母。


そのレストランは、出てくる食べ物もとても美味しくて、特に私たちが好きだったのが、目の前で焼いてくれるオムレツでした。

チーズやハム、トマトなど、好きな具をオーダーして、料理人の方がバターたっぷりの小さなフライパンに、卵と具を流し込み、きれいな三日月型に形を整えて、焼いてくれるオムレツ。

フォークを差し込むと、ほわっと湯気がたち、食べるとバターたっぷりの濃厚な味が口いっぱいに広がります。

あまりにもはまりすぎた私は、土曜日や日曜日、家族の朝ごはんとして、チーズを入れたオムレツをよく作ったものです。

家族は喜んでくれたけど、出来栄えは……まあ子どもの作るものなので(笑)


あるクリスマスの直前の休日のことです。私たちがいつもどおりゴルフ場でごちそうを堪能していたところ、サンタクロースのおじいさんが会場にやってきました。

「Ho ho ho, Merry christmas!」と言いながら、一番目立つ席にでんと座ります。


こういうレストランやショッピングモールに現れるサンタクロースのおじいさんには、クリスマスに叶えたいお願い事やほしいプレゼントをお願いするものと相場が決まっております。

私と、小学校3年生の妹、それに恐らく祖父母もいたせいかおつき合いとして姉も、プレゼントのお願いをするために小さな子供達の並ぶ行列に加わりました。


妹は無邪気にお願いをし、私は小学校6年生で少し反抗期だったこともあり適当にお願いをしたのですが。

姉がサンタのおじいさんの前に立った時。

「……」

サンタさんが何か言っており、姉はその瞬間苦笑しました。


実はサンタクロースは、姉の中学校の数学の先生だったのです。

それにしても中学生の姉はともかく、まだ幼い妹もいる場で、何も正体をバラさなくてもとも思わなくもないのですが、姉は

「クリスマスのプレゼントは、国の福祉みたいなもので、サンタクロースも国が管理をして仕事をしてくれているんだよ。だからクリスマスにはサンタクロースにありがとうって言おうね」

などと小さい子供には太刀打ちのしようがない説得をするぐらい口が達者な人間だったので、その時も確か、うまいことその場をまとめていたと思います。


姉、私、妹。三姉妹揃うと、本当にそれぞれ個性豊かで、見ている大人たちも面白かっただろうな、と思います。


ゴルフ場と姉でもう一つエピソードがあるのですが、中学校に入り年頃になった姉がダイエット(本当はそれほど必要はなかったのですが)に目覚めて、ゴルフ場のプールによく通っていたのですが、私もそれに付き合っていっしょによく泳いだりしていました。

その時食いしん坊の姉は、プレッツェルという乾パンのようなお菓子の入った胸に抱えるほどの大きなビンを持ってプールに行き、泳ぎの合間にビンを開いては食べていました。

(食べる合間に泳ぐ、という方が正しいかもしれません)

目の前にあると、誘惑に負けてしまい私もパクパク食べていたのですが、

「ダイエットするんじゃないの?」と反抗期の私が少し意地悪に突っ込むと、

「泳いだ分カロリーが消費されてるから、全然大丈夫でしょ!」

と自信たっぷりに返していました。


よくよく考えるとプラマイゼロ、むしろマイナスだとわかるのですが、あまりに堂々と言うので、

「そっか!」

と説得されていました。

(私もバカすぎる…)

ただ、たとえカロリーオーバーに食事をしても、健康面では少しでも有酸素運動をした方がいい、という考え方もあるかも…いや、やっぱりないか。

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