日系アメリカ人
ロスは当時アジア人がとても多く、特に私が住んでいた地域は韓国系アメリカ人、あるいは韓国からの留学生が町の人口の三分の一??(私のうろ覚えによる独断と偏見の感想のため、参考にしないでください)くらいいるのでは?というほど、たくさんいました。
姉の親友の一人も、韓国からの留学生でしたし、この間結婚式にお呼ばれしたほど今でも仲のいい妹の親友も、韓国系アメリカ人でした。
もちろん、私のお友だちにも、たくさん韓国系アメリカ人がいました。
日系アメリカ人も、全米の中ではかなり高い割合で住んでいて、何よりアメリカ社会に、完全に溶け込んでいる空気感がありました。
お互いにお誕生日会に呼びっこした、小学校で仲良くしてくれたお友だちグループのJaneという日系アメリカ人の女の子や。
私の担任の先生の、オランダ系アメリカ人の男性と結婚された、Mrs.VanHove。
彼女は日系の二世(確か二世だったと思う)でしたが。
両親共に、日本人なのに。
メイクを含めた容姿、まとうオーラ、表情の作り方、感情の出し方……
何もかもが、日本という国に住む、穏やかで優しく、気品があってかわいらしい日本女性の雰囲気とは全く違っていて。
明るく、爽やかで、華やかで。
何よりも、自分自身をしっかり持っていました。
子どもたちの憧れの先生に、私は日系アメリカ人の理想の姿を見たように思ったものです。
日本の女性と、ロスの日系アメリカ人女性、どちらがいい、悪いではなく、きれいごとに聞こえますが、みんな違って、みんないい、そんな風に思えました。
ですが、歴史を学んだ時。
私の知っていた、オープンで大雑把な、明るいロスではない、
アジア人にとって、特に日系人にとって暗黒の時代があったことを、私は知ったのです。
戦前、特に1920年頃からだと思うのですが。(調べたら、日本人移民が爆発的に増えた結果、移民受け入れを停止したのが1924年だから、当たってるといえば当たってました)
安価な賃金で働く、地元の労働者から雇用を奪うとして、アジア人を、特に日本人を徹底的に憎み、要は差別した時代がありました。
大河ドラマの「いだてん」でも、選手たちにとっては天国のように楽しかった1932年ロサンゼルスオリンピックでの、裏側での日系移民の苦悩が描かれていたのが、最近では記憶に新しいです。
(私はあのシーンを観た時、あの悔しさ、切なさをわかるなんて、クドカンはやっぱり天才だ!と思いました)
そして、真珠湾攻撃。
日本では、攻撃の知らせをするのに手間取り、不幸な事故の結果、卑怯者と世界中に非難されることとなった、とされていますが。
もちろんアメリカ人は、その一連の説を、全く知らないですし、知っていても信じようともしません。
それは現代に至っても未だに同じことで。
私は現地の学校に通っていたのは中学校三年生までだったので、真珠湾攻撃は授業でやらなかったのですが。
日系の友人たちは、口をそろえて、
「授業で真珠湾攻撃を取り扱ったとき、みんながこちらを振り返った」
と言っていました。
なお、一人が
「
日本育ちでないから、
(その是非の詳細については、さておき)
友人のことは置いておいて、私はアメリカ人のおおらかさは嫌いではない、というか好きといってもいいほどですが、一度何かをされた時のしつこさは、正直辟易します。
実際、私がアメリカに住んでいたときも、9.11のこと(nine elevenとよんでました)を、
「パールハーバー以来のことだ」
と憎々しげに言う声を、何度か耳にしています。
(はっきり言って、うざかったです)
まして。
当時の日本人が、アメリカの一般市民や、アメリカ政府そのものに、どれだけひどい目にあわされたか。
ナチスの強制収容所のように、命を奪われたわけではないのですが。
ほとんど着の身着のままで、財産を処分する暇もないまま。
「民衆の暴動から守るため」という名目で、馬小屋などの、人間が暮らせるような場所でない環境に、プライバシーも何もない状態で、アメリカ政府に収容所に押し込められてしまったのです。
例えば日系一世が、自分の意思で移住した後。
ひどい労働環境、ひどい住宅環境に身を置くとしても。
そこには、
そんな生活から、自分たちの人生を切り拓いた日系一世や、アメリカ社会に溶け込んでいた二世の、人生を全てなかったことにする、アメリカ政府が行った政策の中でも史上最悪な人道問題の一つが、この第二次世界大戦時の日系アメリカ人に対する扱いです。
しかも。
日系人全員に、アメリカに忠誠を誓うかを問う、「忠誠質問」と俗に呼ばれるアンケートを取ったそうで、
中には特に、二つの質問がありました。
27 番目の質問は
「アメリカ軍に従軍し、命令されればいかなる場所でも戦闘任務につくかどうか」、
28 番目の質問は、
「アメリカに無条件の忠誠を誓い、日本の天皇への忠誠心を放棄するか」。
この質問に ほとんどの人々は両方に、「イエス」と答えていたそうですが、あまりにも酷い、人の心を無視したアンケートだと思います。
アメリカ軍に従軍する、これはいいです、私も当時生きていたら、嫌だけどイエスと答えると思います。(当時は男性しか徴兵されませんが)
けれど、もしも家族が日本にいたら。
親兄弟や親戚と戦うかもしれない、日本やアジア諸国に行くのは、絶対にごめんです。
そしてなにより。
28番目の質問は、家族や親戚が日本に住んでいる人、そうでなくても自分のルーツが日本にあると思う人。
あるいは、日本とアメリカ、両方を愛する人たちにとっては、あまりにも、むごすぎる質問です。
天皇への忠誠心を放棄するとは、当時の日本人にとっては日本を捨てろと言われることと同義です。
どちらか、または両方の質問に「ノー」または「中立」と答えた場合、あるいは回答を拒否した場合は、その家族はさらにつらい環境下にある収容所に移住しなければならなかったそうです。
また、「イエス」と答えたら、収容所から解放される可能性があったけれど、市民である二世の場合は、それによって徴兵される可能性が生じることとなったとのこと。
アメリカも、日本も、両方とも愛している。
そう答えることの許されなかったのが、この1940年代で。
そんな中で、勇敢に戦った、日系アメリカ人たち、私たちの先祖ともいえる方々のおかげで。
ロスの日系人は、アメリカ社会にしっかりと溶け込んでいるのです。
それなのに。
コロナが世界的に流行したことで。
間違った心を持った人たちが、アジア人(中国人、韓国人、日本人、あるいは容姿が少しだけ異なる東南アジア人も)に怒りをぶつけてもいい、という風に。
今までは表に出なかった西海岸含む地域でさえ、アジア人に対するヘイトクライムが勃発しているそうです。
間違った歴史を忘れることなく、今のコロナによるアジア人ヘイトや、BLM、世界中の社会の分断を、正しい眼差しで見つめていきたい、私はそう思っています。
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