――――翁は『俺を好きなのはお前だけかよ』というアニメーション作品の感想ブログ記事を書こうとしていたが、なかなか筆は進まなかった。――――



――――それもそのはず…と表せばいいだろうか。翁は、その観賞時点の過去の思い出などを作品を通して芋づる式に思い出していた。――――



――――戸張翁は、『俺好き』をリアルタイムで観たわけではない。ただラブ・コメディというジャンルの好きな為めに、必然的に、この一品を配信サービスで観て、消化したに過ぎない。――――




云々




このひまわりとコスモスのあざといのは演出的には、のちの展開を考えるとやりすぎだが、原作が(この頃は、薬を色々飲んでいた…レキソタン、セパゾン、テグレトール…)そうなのだから仕方ないであろう。




云々




そしてパンジーが巨乳美少女女子高生だったというのは…まあ、こういうアニメのいいところ、わるいところ、がこの辺に集約されているのだろうか。私は(ヒルナミン、ハルシオン、デパス。まだあったな、これだから医者を変えたのだ。この頃の私は薬の作用か一日中ボーっとして…)




云々




云々




〈部屋のドアがバタンと開いて閉じた〉


―――「おじちゃーん元気?一緒にアニメ観よ?」それは翁の妹の子だった。

翁との関係は必然姪になる。

勿論、彼女は、今時の女の子に違いない。

しかし、戸張翁のような年金男に懐いている点では今時とか何とか形容していいのかわからない、と彼自身も思っていた。――――


――――「あれ~、これ最終話で終わらなくて、なんていうの?OVAまで続いたやつじゃん。それだけ知ってる。私は」姪は続けた「恋愛ものなら、『ドメスティックな彼女かな』、この年に制作なら。」

?…ハッとして翁は疑問をぶつけた。

「なぜ私が(Wikipediaだ。)この私が(これは2019年放送だな)〈繰り返しになるが〉――――2019年秋期にあたる作品を観ていることを知っている?」

姪は…「え、だってそれはしげ兄ちゃんが…」「ああ、よし分かった。」翁は会話をバッサリ切った。

(昨日の晩に、しげにこれを観ると言った。おおかた、さっきの流れから察するに、この年のアニメ一覧などで自分の観た作品を知ったのだろう。)……。

「しげ兄ちゃんがね、年表見せてくれたの、で解ったの。」

果たして当たりだった。――――




――――翁は気分を変えようとして……あるいは、別の言い方をすれば、――――

一等美しく仕上がった姪の外見に捉われた故……こう言った〈それは些細で何でもないことには違いなかったが不器用な人間には精一杯だった。〉

「ほら、いいものを観せてやろう」PCに入れていた『ソマリと森の神様』のBDを再生する準備に入った。

したらば無論、その作品が映る。

「で、だな」と言ってネッチフィリックスでも同作品を映し出した。―――――――――「ふむ」姪は大人しくその一連の流れを眺めていた。しかし姪も姪で、翁が何をしたいか解っていた。

(うーん、多分おじちゃんはBDとネチフリの画質の差を観せたいんだな…。しげ兄言ってたもんなあ。SVODのイニシアチブ握らせてから、所謂円盤に全く興味を示さなくなったって。…)

その『ソマリ』のBDは、たまには円盤も観たほうがいいよと、しげが父に貸してくれたものだった。

翁は、意味が全く解らなかったが、こういう経験を通して今やっと、(なるほど)と思っていた。――――


――――翁と姪は画質の良し悪しを比較したが、それは、問題ではなかった。

比べ終わった後、姪は言う「で?」翁は「いや、その…」とどのつまり最初に言ったように姪が、翁とアニメを観たい…そこに問題という言葉を使うのであれば問題があった。

これまでの翁の言動は全て姪とアニメを観ないようにするためのものであった……少なくとも少しでも【その時】を先に延ばそうと…。―――

注釈を加えるように書いておくと、この姪は、性格の上では〈簡単に言えば〉非の打ち所がない、15の少女だった。

―――ということは、翁の妹は翁が子供の頃、友達の母を見て、その友に言った「今の人ってHちゃんのおばあちゃん?」と言ってしまったという、そういう道の待ち構えているという事でもあった。――――

――――兎にも角にも翁は、女性であれ、女の子であれ、異性の魅力に籠絡されて自動人形のように何かをする、ということは絶対に彼は、避けたかった。



――――――――「おじちゃん、私、『俺がお嬢様学校に『庶民サンプル』としてゲッツされた件』観たい」

(おお、なんと気が合うのだ。それは私の大好きな作品ではないか。)

〈作者注:これもメタ発言になるのだろうか?以前も架空ヴィジュアルのどこかで『ゲッツされた件』が出てきているはずである。〉

しかし翁はこう続けた「えーっと、おじちゃんは今から眠る時間でね。ほら、もう時計がああいう時間だろ?もうそういう時間なんだ。」あたふたして言葉が変になったが、偶然とはいえ殆ど嘘偽りなく、少女への親和力から逃れることができた…。

「そうなんだ…(おじちゃん眠れない病気だから引き上げよう。眠れた方がいいもんね。)」――――


―――――ところで今日は日曜日。(おそらく〈妹〉が妻に会いに遊びに来たのだろう。半分以上、姉妹同然の仲だからな。私は寝るが、もし起きて、まだ我が家に居たら、私も少しは顔を出そう。)―――――


――――そして翁はいつものように…………―――――









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