「  」





―――翁は普段通り?…普段通りとは一概に言えない―――


―――そのアニメーション作品に対して怒りには満たないが疑問を投げかける内容のブログ記事を書いていたからだ――――



これは、一等不思議なのだが作者は読書代がかかりすぎて毎月の食費も圧迫されているとか何とか、Wikipediaに書いてあった。

しかし【アニメで表現されているのを見る限り】そんな、書見での経験が、この作品を名作に押し上げているとは言えないように見える。

私にはよく分からない。本当によく分からないが、凡作ではないのか…。




―――翁がそう書くのは制作会社が優秀で名を馳せているところであったからである。――――




私は、不勉強だし、悪いがそういう不出来な頭の目線で観賞することしかできないが、このアニメで表現されている雑学が物語の出来に作用しているかというとまた別の話であると見受けられる。




――――翁は左顧右眄をやめて、とにかく自分の書きたいものを書けるよう努力していた―――




この無学の頭で考えるに、ここに出てくる第7話の抽象的自我という考え方…主役がビー玉でも落っことすように少しばかり説明を下している…そしてそこに、…アンチテーゼとして数々のアニメで出てきたシュレーディンガーの猫だ。

私は、主役が言ったことが本当なら抽象的自我という考え方に興味を抱いている。

つまり支持する。―――繰り返すがアニメ内で説明されている範囲で解る事に限るが。

……解る?解っているのか甚だあやしいが、自分なりの解釈を僭越ながら通させていただこう。

…となるとこの前者は後者、つまりシュレーディンガーの猫に重箱の隅をつつかれたようなものではないのか???




―――最早何について何を書いているのか翁は見失っていた。――――




――――それは、アニメのタイトルを書き忘れているのからして明白なことだった――――




――――そこへ、妻からメールが入ってきた。「休憩いかがですか?お茶を用意しますよ」翁は席を立った。慣れないスマートフォンで返事をするより、直接行ったほうが早いからだ。――――




――――「あら、あなた、私はメールが来るとばかり…」翁は言う「どうもあれは、慣れない」「そうですか、難しいところですね、メールは必ず暗記しなくてもいいものですけれど、せめて、私達への電話の仕方は覚える…というか慣れていただけると嬉しいですわ。…けれど、無理なさらないで下さいね。それでは、そんな事は忘れて、お茶をいれましょう」

翁は微苦笑を浮かべながら「驚いた、忘れていいのかね」と妻の矛盾へ軽く一太刀をいれた。

妻は顔を赤らめて「それは、いじわるですわ」「もう少しお待ちください。…そうだ、歌謡曲でもかけましょうか、あなたがもう使わなくなったMDを、たまには使ってみましょう」

音楽が流れだした。しばらく…、鹿児島の知覧茶を飲みながら両人は、それを聴いていた…妻は夫の気が紛れるように、その曲ごとにそれにまつわる思い出話などしながら…。

ところが雰囲気が一変したのは『人生いろいろ』が流れ始めた時からだった。

「そうだな」とか「うん」とか、相槌をしていた翁は、妻の異変に気付いた。

「すみません。あなた、私…」妻は涙をブラウザーという服の袖で拭いていた。

それを見た翁は、感じやすい心により、その曲にも引っ張られ、こちらも涙をブワと流し始めた。

曲の間中、落涙していたが、特に翁の心を打った歌詞は 『笑いばなしに涙がいっぱい』だった。

そして、妻が救われたように言った「あ、次の曲です、なにが流れるのでしょうか、明るいのがいいですね」

次は『しあわせについて』…さだまさしの持ち歌だった。

さらに涙はやまなかった。『ひとりひとりは 皆とても優しいのに 何も傷つけあう事などないのに』翁は、妻は、家族の事を思い泣いた…曲が次に移っても、しばらく泣いたままでいた。――――



――――ようやく涙をぬぐい終わった後、翁は無言でリビングを出た。(もしかして、ひょっとしたら…私が…)思考を輪廻しかかった途端、ブログの事を思い出した。

先ほどの一連の事があったのを思うと、批判精神の垣間見える記事、お茶を飲む前に書いたもの、左顧右眄などとか、そういう次元の話ではないように思われた。

翁は、下書き保存、をクリックして、記事にしばらく蓋をすることにした……。――――







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