第91話 魔王を倒す?
最初にクリアしたクエストは「男の娘とベッドイン」だった。
ココロチンに詳細を尋ねたら「男の娘と同じベッドで一晩を過ごすこと」だった。同じ布団で眠りさえすればOK。つまり
かなり気恥ずかしくはあったが、イリアくんにお願いしたら二つ返事でOKしてくれた。ダンジョン控室のベッドでイリアくんと一晩眠ったら、それでクエストは完了した。
寝床に入ったときも、二人ともお酒をしこたま飲んでいたのですぐに眠ってしまった。それにしてもイリアくんはいい匂いだったな……。
翌朝、俺が目覚めたときにはイリアくんはコボルト村に出発していた。
「痛っ!」
「大丈夫ですか、シンイチ様……」
その日のライラはとても優しかった。いつもにも増して優しかった。
「恥ずかしい話だけどちょっとお尻が痛くてさ。昨日、激辛ハバネロカップ麺を食べたからかもしれない」
「そ、そうですか……そうですね」
(ココロ:おめでとうございます……じゃなくて、おはようございます。クエスト「男の娘とベッドイン」は無事完了しました)
(シリル:ご卒業おめでとうございます……じゃなかったクエスト完了おめでとうございます)
(んっ? ありがとう?)
ココロチンとシリルっちも、その日は一日ずっと俺に優しくしてくれた。
いったい何なのだろう?
まぁ、優しくしてくれるのは嬉しいけどさ。
~ ルカに相談 ~
「それで、わらわに聞きたいというのは何じゃ?」
ルカが新製品の練乳チューブアイスをグレイちゃんと一緒に吸い付きながら言った。
「魔王を倒すってクエストを受けたんだけど、もしかしてルカちゃんだったら魔王の居場所とか知ってたりするんじゃないかなーっと思ってさ」
「知っておるぞ」
「ほへぇわ!?」
ビックリして妙な声が出た。
「魔王の居場所を知ってるの?」
「もちろんじゃ、今はわらわの眷属じゃからの?」
「へぐぼぇ!?」
ビックリして妙な声が出たその2だった。
「ルカちゃんの眷属!? 魔王が!? その魔王って今どこにいるのさ!」
「お主の目の前にじゃが?」
「どぶりょぇ!?」
以下略だ。
「なんじゃ、驚くにしてももっと普通にできんのか。まったくシンイチは……、おい、フワデラ!」
そう言ってルカがフワデラさんに声を掛ける。フワデラさんは、ちょうどシュモネーに寿司弁当のサーモン握りをアーンしてもらっているところだった。何やってんだこの二人。
「んぐっ!? ど、どうしたのだ主上」
サーモン握りを呑み込んでフワデラさんが答える。
「シンイチがお前を倒すんじゃと」
「うーん? それは困るのだが……」
「フワデラさんが魔王? 魔王なのフワデラさん?」
俺は状況がつかめず目を白黒させる。
「一応、そういうことになっているらしい」
(ちょっと! ココロチン! ホントなの!?)
(ココロ:えーと、いえ、その、どうなんでしょう?)
(どうなんでしょうって……)
これまで何度も【探知】の際、フワデラさんの情報が表示されていたし、【索敵レーダー】でもフワデラさんのマーカーを何度も見ている。魔王なんて情報は欠片もなかった。
「フワデラさん、本当に本当の魔王なの? 自称だったりしない? 証拠ある?」
「いえ自称したことはないですね。周りの魔物がわたしのことを勝手に魔王と呼んでいるだけです。証拠については……これがそうなのでしょうか」
そう言ってフワデラさんは首元から紐に通した指輪を見せてくれた。俺はすぐに【探知】を掛ける。
▼ 王の指輪
(ちょっとぉ! ココロチン! これ魔王討伐の報酬じゃないか! どうして今までこれが表示されなかったのさ!)
(ココロ:ど、どうしてと言われましてもお仲間の持ち物まで採集の対象にするのはどうかと思いまして、基本的には非表示に……)
(むぅ、確かにそれはそうだけど……)
(シリル:田中様、わたしに思い当たることがあるのですが、フワデラ様にお願いして、一度田中様に殺気を放ってもらってくださいませんか?)
(ココロ:なるほど、フワデラ様に敵対してもらうわけですね)
(わ、わかった。よくわからないけどお願いしてみる)
フワデラさんにお願いして、殺気を俺に向けて放ってもらう。
グワッ!
フワデラさんの凄まじい殺気が俺に向かって放たれる。
俺ちびる。
少しだけな。
「【索敵レーダー】!」
俺の視界に赤い点が表示される。フワデラさんのいる位置にマーカーが表示された。
▼ 魔王フワデラ(鬼族♂)Lv47 〇
マーカーは赤で表示されていた。しばらくするとマーカーが点滅し始めて、
▼ フワデラ(鬼族♂)Lv47 〇
マーカーの色が青に変わった。
「なるほど、そういうことか。俺と敵対関係にあるかどうかで表示される情報に違いがあるってことだな」
(ココロ:肯定。本件については至急修正対応を依頼……)
(それはいいよ。理屈が分かればあとは俺の方で注意すればいいだけだからさ。その場限りの良しあしだけでいちいち仕組みを変えてたらキリがないし、きっと良い結果にならない)
それよりなによりスキル開発部のみなさんにこれ以上の負担は掛けられないんだよ。
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