第77話 首脳会議

 いや、クエスト「男の娘を攻略せよ」自体には全くもってこれっぽっちも興味はないよ? 興味はない。ないけど……


(ココロチン、気になるから聞くだけなんだけどね? この男の娘クエストの報酬の「買い物かご+1」って何?)


(言葉の通り、神ネットスーパーでの買い物に利用できる買い物かごが1つ増えるということですね)

(おぉ、つまり買い物の量が今の2倍になるってこと?)


(受注されますか?)

(えっ、いや、いい、聞いてみただけ)


(それでは受注された二つのクエスト詳細を表示します)

(お、おう。お願い)


≫ 女神クエスト:勇者を探せ

≫ マルラナ山の麓に転生した勇者が行方不明となりました。

≫ 勇者を探してください。

≫ クエスト参加資格:田中真一

≫ クエスト報酬:

≫ (勇者発見)

≫  EON 20万ポイント(支援精霊ボーナスあり)

≫  買い物かご+1

≫  デュフデュフ動画プレミア会員登録


≫ 女神クエスト:妖異 ドドミ=ゴの狩猟

≫ マルラナ山脈にドドミ=ゴとミ=ゴが異常発生しています。

≫ 女王体であるドドミ=ゴを狩猟してください。

≫ クエスト参加資格:転生勇者、召喚勇者、神命勇者、一般転生者

≫ クエスト報酬:

≫ (討伐) EON 50万ポイント(支援精霊ボーナスあり)

≫ (捕獲) EON 50万ポイント(支援精霊ボーナスあり)


(これ明らかに勇者が行方不明になったことと関係あるよね!?)

(これは……確かに)


(というかフツーは疑うよね?)

(ふむ。個人限定クエスト管理部と汎クエスト管理部の間で連携がうまく取れていないようですね。これが縦割りの弊害かぁ)

(そ、そんな理由なの!?)


(もともとは一つの部署でクエストを管理していたのです。怪しげなコンサルタントのセミナーに触発された上層部が「業務改革だ!構造改革だ!」と張り切った時期があって、確かその時に分割されたんですよね。そのとき色々と揉めてお互いに確執が……)

(わかった。もういい)


 思ったよりも根深い問題を覗くことになりそうだったので、俺はツッコむのを止めた。深淵を覗くものは深淵からも覗かれちゃうからな。


(ドドミ=ゴのクエストを追っていけば、勇者の手掛かりも掴めるかもしれないしな)

(そうです! 頑張りましょう、ふぁい・おー!です!)


 なんだかココロチンがやる気になっているが、支援精霊ボーナスが結構入るってことなんだろうか。




 ~ 出発 ~


「……というわけで、マルラナ山脈に行こうと思います」


 俺は首脳会議でそう宣言した。


 ちなみに首脳会議というのはカッコイイからそう呼んでいるだけなのだ。


 出席者は、俺、ライラ、ルカ、ロコ、ステファン、フワデラ、トルネラの7名だ。


 フワデラとトルネラはルカの眷属で、ルカからグレイベア村の管理を任されている。


 フワデラは村の開発と防衛面を任されている二本角の大柄な鬼人。彼はここから遥か東方にある別の大陸出身で、いつも背中に大きなカタナを背負っている。


 カタナはまんま日本刀なのだが、どの世界でも東方って同じような文化になるものなのだろうか。


 トルネラはラミアの女性だ。エロい。じゃなくて赤毛と緑の瞳を持つ美人さんだ。上半身はそれはもうBCB(ボン・キュ・ボン)で、ライラがいなければ俺はガン見していたに違いない。ちなみに話すときにはチロチロと舌が飛び出す。


 トルネラは主に村の物流と農園の開発をルカに任されている。それにしてもあの上半身と下半身の境はいったいどうなっているのだろうか。


 腰布で隠されているのでナニがどうなっているのかナニかと気になる……。腰布の上からでは魅惑的なヒップラインしかわからない。ナニはどうなっているのか……。


「シンイチ様……」

「はひっ!?」


 ライラの声に俺は我に返った。


「マルラナ山脈について何か知ってることがあれば教えて欲しい」


 スッとフワデラが手を挙げる。


「マルラナ山脈には入ったことはないが、その近くまでは行ったことがある。厳しい冬が何年も続く土地だ。他の季節が半年も続かずまた冬が来る。厳しい環境だ。弱いものは長く生きることができない。人間族も魔族も動物もすべて手強い」


 ん? 行くの止めようかな?


「ただ人や亜人は義に厚い。彼らの信頼を勝ち得れば飢えや寝床に困るということはないだろう。もし冒険者パーティーに加わってくれることとなれば、彼らほど頼もしい戦士はいない」


「フワデラ、お主、シンイチに付き添ってマルラナに行ってやれ」


 ルカがナイスなフォローを入れてくれた。


「ふむ。それは構わないが、そうするとこの村と主上の守りが……」


 フワデラさんが少し考え込む。


「なに、たかが数か月のことじゃろ。それとも何か、お主が鍛え上げている部下共は頼りなくてわらわたちの守りを任せられんか?」

「むっ。そんなことはないぞ。……分かった。オレがシンイチ殿に同行しよう」


「よし、決まりじゃな!」


 ルカちゃん、グッジョブ!


「あっ、ありがとうございます!」


 俺は立ち上がってフワデラさんに90度のお辞儀をした。


「いや、シンイチ殿は主上の婿殿です。眷属に、そう腰を低くなされるものではありません。しかし、御身のことは必ずやこのフワデラがお守りすると誓いましょう」


 フワデラさんも90度の丁寧なお辞儀を俺に返してきた。


 鬼人が冒険パーティーに参加決定か……


 やったぜ!



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