第65話 スキル開発部、頑張る
女神クエストを攻略する前から、EONポイントにはかなりの余裕があった。ルカとグレイちゃんの【幼女化】による入手ポイントが大きかったからだ。
とはいえ、いくらEONポイントが増えたとしても
そうした賄賂……ゲフンゲフン……差し入れの効果もあってか、今ではココロチンは買い物かごに、なるべく高さを持てるギリギリまで商品を積んでくれる。
最近では買い物かごが満杯になったその上に、トイレットペーパー24ロールを乗せるというのが基本スタイルになっていた。
(スキル開発部の一角では、田中様からの差し入れをデスクに積み上げてフリーイートコーナーにしているそうですよ。オアシスタナカと呼ばれているそうです)
(それって、開発部の皆さんの泊まり込みを帰って促進してたりしないよね?)
(その点については、田中様の差し入れの有無に関わらず帰れない者はずっと帰れないままなのでお気になさらずという伝言を預かっています)
(あっ、そういえば開発部の吉見さん、先月お子さんが生まれたんだよね。こんど花とベビー用品を適当に見繕って贈ってもらえるかな)
(えっと、少々お待ちください……ホントです! 吉見さんに長男が! いったいどこからそのような情報を!?)
(いや、ココロチンから聞いたよ。まぁ会話の端から推測しただけなんだけどさ)
今や俺の手帳には、スキル開発部や神ネコ配送の方々全員の名前と誕生日、その他の情報が細やかに記載されている。現在は、妖異回収部の6人についての個人情報を収集中だ。
といっても、俺の情報源はココロチンと神ネコ配送の佐藤さんや上司の清水さんしかない。会話の端々から聞き取ったことをメモして、予測したことを今のようにココロチンに投げかけて確認を取っているだけだ。
(そ、そんなに出来る方なのに、どうして前世はDTで終わってしまったのでしょうか)
(うっさいわ! それともうDTは卒業したから! これ大事だから!)
(それにしても驚くべき人心掌握術です。どうりでスキル開発部の方々の対応が丁寧かつ迅速かつ過剰なのか合点がいきました)
(そうなの?)
(はい。この間のショゴタンに【幼女化ビーム】が一度で効かなかった件への対応ですが、通常ならいくら急かしても一か月くらいは待たされるものです。ですが田中様がDTを卒業されたときには、既に対応完了の連絡が来てましたよ)
妖異という存在については謎が多いらしい。とはいえ妖異がどのような存在であれ、この世界に顕現したからには、この世界のルールに従わざる得ない部分があって、そこに関しては間違いなくスキルが通用する。
しかし、そこから外れた部分。おそらく妖異としての本質的な部分については、この世界のルールが通用しないことがあるそうだ。なので妖異に対してはスキルがどこまで効果を発揮するのか、どうやっても不明な部分が残ってしまうらしい。
(ということで、妖異というものは完全な【討伐】はできないと考えられています。攻撃することで妖異を消滅させても、それは妖異をこの世界から一時的に【撃退】しているに過ぎないというのが、現在の妖異主流学派の主張となっています)
(完全には倒せないなんて、妖異ってのはやっかいだな)
(【撃退】した妖異が戻ってくると言っても、それは数十年から数百年単位の話のようですので、人間一個人の視点で言えば【撃退】すなわち【討伐】と考えても良いかもしれません)
(なるほどねぇ)
(それでスキル開発部の件ですが、今回は【幼女化】のアップグレードに加え【妖異効果推測プラグイン】まで導入してくださいました)
(マジか……嬉しい。嬉しいけど、くれぐれも無理しないでって皆さんに伝えておいてね)
(確かに……このプラグインを作った鈴木さんは目の充血とクマが尋常じゃなかったですね)
(目薬とサプリメントと栄養ドリンクも追加で差し入れてあげて!)
【妖異効果推測プラグイン】は妖異に対して【幼女化】を何度実行すれば効果が発動するのかを予測表示してくれるというものだった。
ただ鈴木さん曰く、予測は必要と考えられる回数が多くなるほど実際の回数とズレが発生するのだとか。なので実質的には【幼女化】1回で効果が発揮されるかどうかの判断にのみ使って欲しいとのことらしい。
(これで十分だよ。一度の【幼女化】では効かないことがわかってれば、逃げる判断が素早くできるもの。あるとなしでは生存率が全然違ってくるよね)
(それを伝えたら、鈴木さんもきっと成仏できることでしょう)
(えぇぇぇ、まさか鈴木さんが!? やっぱ過労死で!?)
(まぁ、間もなくなりそうな感じでしたね。でも開発部ってそんなのばかりですよ)
俺はスキル開発部の差し入れに各種スイーツを追加してもらった。
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