第25話 神ネットスーパー
EONポイントで買い物ができる――
ポイントの利用方法は俺の想像の遥か斜め上を行っているらしい。
(神ネットスーパーで買い物って……)
(あっ、買い物ができると言っても、天上界のスーパーじゃないですよ? あくまで田中様の前世のスーパーですから。神アイテムとかは買えません)
(いや、それでも十分に凄いと思うけど。そういえば俺っていまどれくらいEONポイントを持ってるの?)
(現在は63100ポイントになります)
(ふーん。多いのか少ないのかいまいちわからん。えっと具体的にどんな買い物ができるの?)
(1ポイントにつき1円ですね。スーパーで売っているものであれば何でも購入することができます。ただし、注文は1日につき1回まで。買い物かごに収まる範囲に限られます)
(凄くない!? それに俺6万ポイントも持ってるの? セレブじゃん!)
(注文してからどれくらいで届くの?)
(注文内容によりますが大体1時間くらいとお考えください。商品は田中様の周囲2m内に配達され、その際はメッセージが表示されます。もし誰かに奪われても補償はありませんし、再配達もありませんので確実に回収してください)
(あいわかった!)
ピコーンと閃いた俺は、ヴィルとロコに声を掛けて直ちに洞窟へ引き上げることにした。
洞窟に戻ると、慌ただしい空気はだいぶ落ち着いていた。
洞窟の中央に焚き木が組まれ、その上に犠牲者の遺体が並べて乗せられていた。
洞窟の入り口にはマーカスや男コボルトが武器を携えて立っている。
洞窟の中からは黒い煙がもくもくと出ていた。残存ゴブリンを警戒して燻し出しているのだ。
俺の索敵を完全には信用しないマーカスの用心深さに、俺は彼の傭兵としての能力について評価を高く引き上げる。
ネフューが俺たちが戻ってきたのを見つけて近づいてきた。
「シンイチ、日が落ちたら夕食を取ってその後に遺体を燃やす。ぼくが死者に祭詞を送った後、シンイチがコボルトたちにここが新しい拠点となることを宣言して欲しいんだ」
「えっ、ちょっと俺、そういう挨拶とか、ちょっと」
「なにも難しく考える必要はない。シンイチは彼らからリーダーだと認められている。一言だっていいさ、彼らを安心させてやってくれ」
「わ、わかった……」
やばい! 緊張でお腹痛くなりそう。日暮れまであと1時間くらいか。まぁ、なんとでもなるか。「ここを拠点とする!」って叫べばいいや。
それよりも、まずはEONポイントだ。
(ココロチン、ココロチン! 俺は早速、神ネットスーパーで注文するよ!)
(了解しました。商品ページを表示します)
(視界に神ネットスーパーの商品一覧画面が表示される)
(おぉ、なんか懐かしい。めっちゃくちゃ嬉しい!)
俺はテンション爆上げで色々と商品を表示する。せっかくの勝利祝いだ、初回は派手に行くぜっ! といっても買い物かごが一杯になるまでか、慎重に考えなきゃな。
・がつんと愛媛ミカン (5個入り)× 5
・日本酒パック1リットル × 2
・ウォッカ 750m × 2
・紙コップ(60個入り)
・プラスチックスプーン50本入り
・乳酸菌入りアップルのど飴 × 2袋
・帝都指定ゴミ袋 50ℓ 50枚入り
・アルコール除菌シート100枚入り×3
「それと……」
(あの……そろそろ容量が限界です)
(あっ、そうなの。それじゃ……これで)
(合計7920ポイントになります。これでよろしいですか?)
(OK)
(注文が確定しました。配送予定時間は1時間後になります)
(よろしくー!)
(じゃ、行ってきますね)
(えっ!? なに? ココロチンが買いに行くの?)
(ハァ……面倒くさっ(ボソ))
視界に「美少女買い出し中……」のメッセージが点滅し、そこからはいくら呼びかけてもココロチンの応答はなかった。
それから一時間後――
俺の視界に「ご注文の商品が到着しました」とメッセージが表示され、目の前の空間に黒い穴が出てくる。穴の中から帽子を被ったお兄さんが顔を覗かせる。
お兄さんは俺に気づくと、
「チッス、神ネコ配送です。商品をお届けにあがりました」
お兄さんがビニール袋3つに分けられた商品を次々と俺に手渡してくる。全て渡し終えると、
「あっ、ハンコとかは結構なんで」
そう言って軽く会釈した後、穴の中に消えて行った。ほぼ同時に穴自体も消滅する。
俺はあまりの出来事にビニール袋を提げたまま呆然と立ち尽くしていた。
ココロチンが語りかけてくる。
(あっ、ビニール袋の代金を忘れてました。袋3つで15円ポイント差し引いておきますね。ちなみにドライアイスはサービスです)
(くそっ! ビニール袋はまだ有料のままなのかよ! あっ、ココロチンおかえりなさい。買い物ありがとね)
(へっ!? あっ、いえ、これも仕事ですので)
ココロチンがちょっと動揺していた。
俺はヴィルに声を掛けて、マーカスとネフュー、ロコを呼んできてもらった。手にした異世界の商品を配る前に、仲間である彼らには全て説明しておこうと思ったからだ。
俺が四人に話終えると、彼らは別に驚くこともなく、俺が異世界から来たことや、そのせいで不思議なスキルを身に着けたという話をすんなりと受け入れてくれた。
「まぁ、なんつうか最初から違和感があったつうか……変だったからな。今更驚きゃしねーよ」
「ぼくも同じだよ。だいたい【幼女化】なんてふざけたスキル、この世界のどこにも聞いたことなかったしね」
「オレは最初から兄ちゃんがスゲーって知ってたよ!」
「シンイチ、ツヨイ、スゴイ、オレタチ、ワカル」
畜生、嬉しくてちょっと泣きそうだ。というか泣いてたわ。
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