第6話* 旅の仲間1
俺は三人の幼女を乗せた馬の手綱を引いて山道を歩いていた。
「お兄ちゃん、おしっこ……」
「はいはい」
俺は馬を止めて幼女を下す。
「もう自分で出来るね?」
「うん」
「よし、いい子だ」
俺が頭を軽くなでると幼女は少し離れた木陰に隠れて用を足していた。
(……)※沈黙
何故か頭の中にジト目を感じる。このままではロリコン殺人視線で脳が焼かれそうな気がしたので、俺はココロに脳内で話しかける。
(ココロのおかげで山賊たちの乗っていた馬をゲットすることができました。ありがとうございます)
でも俺は馬なんて乗れないから、結局、幼女を馬に乗せて引っ張るしかできないんだよな。
馬は三頭いたけど、他の二頭は最初のうちは俺たちについてきていたけれど、いつの間にかいなくなってた。
「お兄ちゃん、おしっこ終わったー」
「ほいほい」
幼女を馬の上に抱え上げ馬の上に乗せる。
「じゃぁいくよー」
「「「はーい!」」」
俺は馬の手綱を引いて歩き始める。
(……)※沈黙
今までのシーンで俺が何か非難されるような要素あった?
……なんて言ったら藪蛇になりそうなので黙っておく。
「探知」
ボソッと俺がつぶやくと、脳内で(ハァ……)というため息の後に視界に情報とマーカーが表示される。
▼ 月見草(害獣除け)
▼マウンテンベリー(HP回復+2)
▼マウンテンベリー(HP回復+2)
▼マウンテンベリー(HP回復+2)
▼マウンテンベリー(HP回復+2)
▼木の棒(攻撃力+5)
俺はいそいそとそれらを拾い集め、マウンテンベリーを幼女たちに分け与える。月見草は馬に括り付けた荷物袋に収め、木の棒は杖として使うことにした。
(ありがとうございます。ココロさま)
(……)※沈黙
うーん、嫌われてるなぁ。それでもまぁ、ちゃんと必要なときには手伝ってくれるみたいだし。ホント、ありがたいよ。
再び俺は馬の手綱を引いて歩き始める。しばらくするとまた視界に情報が表示される。
≫ 盗賊Aの幼女化。残り時間 00:58:57
≫ 盗賊Bの幼女化。残り時間 00:58:55
≫ 盗賊Cの幼女化。残り時間 00:58:50
そろそろまた【幼女化】を掛けておくか。俺は昨日から一時間おきに三人を【幼女化】している。
寝ている間に幼女たちが山賊に戻るなんて最悪の事態を避けるために、2時間おきに30分の仮眠をとるようにしていた。
時間管理はココロにお願いしていて、30分たったらアラームで起こしてくれる。
さらに幼女たちには自分が寝ているときに(アラーム音で)ビクッ!ってなったら、何が何でも起こしてねと念を押しておく。
しかし、いつまでもこれじゃマズイよな……。そう思いつつ、俺は幼女ひとり一人の頭に手を載せて「イェスロリータ」と呟いた。
≫ 盗賊Aを幼女化しました。残り時間 01:58:57
≫ 盗賊Bを幼女化しました。残り時間 01:58:55
≫ 盗賊Cを幼女化しました。残り時間 01:58:53
≫ EONポイントを210獲得しました。
(ぴろろん! 田中真一がレベルアップしました。各ステータス値が向上しました。【幼女化】レベル2。幼女化の持続時間が3時間になります。魔力デポジットが19%。リキャストタイムが50分になりました)
おっ、持続時間が伸びたのはありがたい。それでも今のままの状況がいつまでも続くとマズイことになるな。早く何とかしないと。
(左方向15m先の崖下に街道があります)
(それって山から出られるってこと?)
(肯定。ここから斜面を下って行けば安全に街道へ出ることが可能です)
ココロの指示に従って街道に出ると、何となく人の世界に降り立ったようで気持ちが軽くなった。
何しろ前世が都会生まれの都会育ちだったので、山の中はとても怖かったのだ。
(これで人に出会えたら最高なんだけどな。転生モノなら、この辺でメインヒロインの亜人少女とかに出会うとかさ)
(ロリコン……ボソッ)
しまった思わず脳内で語ってしまった。
(でもそろそろ連れが欲しいよ。せめて見張り役を交代して眠れるくらいの信頼度がある連れがさ)
(幼女がいるではないですか)
(それ、もし俺が3時間以上寝てしまったら貞操と命が終了するよね? )
(……)※沈黙
(それでもいいとか思ってないよね!? ねっ!?)
(ぴろろん! 後方より二頭立ちの馬車が接近中。距離20m……18m……)
(誰が乗ってるの?)
俺の全身に緊張が走る。だって初めての出会いが山賊ですよ? 警戒して当然だよね。
(御者が一人と荷台の折の中に三人。護衛がいないことから、ここから遠くない移動先に人間の拠点があるものと考えられます。距離9m……8m……)
俺は馬を止めて振り返り、後方からの馬車を待った。
ヒヒィィン!
俺たちのすぐ横で馬車が止まり、御者が声を掛けてきた。屈強そうな御者の男は俺たちを見て目を丸くして驚いていた。
裸に近い幼女三人を乗せた馬を引いて歩く12歳そこらの子供なんて、そうそう見ることはないだろう。そりゃ珍しいはずだ。
「よう坊主、こんな所でいったい何してるんだ?」
「こんにちは!」
明るく挨拶を返す俺の視界には、御者の頭上に情報マーカーが表示されていた。
▼ 奴隷商人 Lv20
「ちょっと山の中で獣に襲われて両親とはぐれてしまいまして。何とかここまで妹たちと逃げてきたのですが……」
「それは災難だったな。もしかしてバーグの街に向かっているのか。なら連れてってやろうか?」
「ありがとうございます」
お礼を述べながら、俺がちらりと荷馬車に目をやるとマーカーが表示される。
▼ エルフ Lv35
▼ 犬系亜人 Lv10
▼ 人間 Lv29
(これって奴隷だったり?)
(肯定。それぞれの手足に金属製の拘束具が装着されています)
ふと奴隷商人と目が合う。そこには俺がこの世界で最初に出会った山賊連中と同じような、ギラギラした欲望の炎が揺らめいていた。
俺たちを拾い物の商品くらいに思っているのだろうな。
「あの……父からは親切を受けるときは必ず先に礼をしなさいときつく言われてます。少ないかもしれませんが、これお金です」
そういって俺はポケットから銅貨を取り出し、商人に向けて手を差し出す。
「そりゃいい親父さんだな。金が少ないのは気にしなくてもいいさ」
どうせお前らを売り払えば金がたんまりと入るんだから……とか思ってるんだろうな。
奴隷商人が俺の手から銅貨を受け取ろうとしたその瞬間、俺はその手を握ってつぶやいた。
「イェスロリータ!」
ボンっと音がして煙が立ち上る。煙が晴れると御者台には幼女がキョトンとした顔をして座っていた。
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