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「守、お願いがあるんだ」
「はい」
「僕とこれからもずっと一緒に僕の傍で生きていて欲しい」
「え……」
その時風が吹き木々の葉が揺れる音がした。何かが変わった瞬間の息遣いを感じた。
そしてそれは僕の心も同じだった。
僕も一緒にいたい。ずっと、隆二と。
「ここでそれを誓って欲しい。ずっと僕と一生添い遂げると」
僕は心臓の鼓動が一気に跳ね上がり。胸の鼓動が少しも落ち着かなくなった。
隆二さんのお母さんのお墓が視界に入ってきて。
そしてここでそれを誓うことは隆二さんにとってどれほどの決意かわかった。
僕は何も迷うことはなかった。隆二に対する気持ちになにも迷いがない。
「はい。誓います。ずっとあなたと死ぬまで一緒にいます」
それを聞くと隆二さんは僕を包み込むように微笑んだ。
「僕もここで誓う。僕は守と死ぬまで一緒にいる。守と一生添い遂げる」
隆二さんの着ているスーツは風にやさしく揺れていた。
大きな手がそっと僕の顎に手を掛け引き寄せる、唇にゆっくりとやさしくキスをした。
僕は唇の温もりに目の前が滲んできた。
あれあれ、可笑しいな。嬉しいはずなのに、涙が止まらない。嬉しくても人間って泣くんだな。
涙が止まらない僕の肩をそっと隆二さんは抱き寄せてくれた。
僕らは互いの顔を見て少し可笑しくなって、僕は余計涙がとまらなくなった。隆二さんの胸に顔をうずめて泣いた。
遠くの山は次第に暮れて行き、辺りは次第にオレンジ色に変わった。
僕はこの日肌に感じた彼の温もりと、優しいそよ風と、夕焼けを生涯忘れないと思う。
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