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それなのに僕は彼女を乱暴者だなんて言って、ううん、可憐が僕に乱暴者のように見せていたんだ。
僕は……。可憐にどう謝ったらいいのだろう……。
夕食の時間になる頃には隆二が帰ってきていて、彼が買ってきてくれた幕の内弁当を二人で食べていた。
今日は何故か僕よりも隆二の方がおしゃべりだ。音楽のテレビを見ながらあれこれ彼の方から話しかけてくる。
さっきの話については何も話題にしない隆二が今はありがたかった。
折角買ってきてくれたお弁当、いつもならこんな沢山の美味しいが詰まったお弁当なら僕のほうが早く食べ終わってしまうくらいなのに、かまぼこも玉子焼も、煮豆もあんまり喉を通らない。
申し訳ないと思いながらも僕はそのまま立ち上がるとキッチンで水を汲むためにグラスを取り、そのまま水道から水を汲んだ。
「さっき僕の携帯の方に連絡があってね、今日も可憐さん友達の家に泊まるって……」
「……」
でも隆二が突然可憐の名前を出すものだから、たまらなくなり、僕は嗚咽が止まらなくてそのまま声を上げて泣いた。
キッチンの流しの水の音が僕の泣き声をかき消してくれていた。
そんな僕に隆二はなにも言わずにそっと背中から抱きしめてくれた。
僕は彼の方を向くと彼に縋り付いた。涙が止まらない。
「僕は……酷い姉弟だよね、僕は……」
僕の言葉に隆二は首を横に振るだけだった。
僕はそれ以上は言葉が続かなくなり、ただひたすら涙が止まらず、彼のシャツを濡らしてしまった。
「これからは僕が彼女の役割を果たさないとね……」
僕が不安そうに顔を上げると隆二はくすっと笑顔になった。
「大怪我をして君を護るわけじゃないよ? なんていうかな……君と一緒になりたいんだ……」
僕は腫れぼったくなった目を思わず見開いてしまっただろうか。
隆二がクスリと笑って僕の鼻の頭を人差し指で触れた。
けれど、その言葉の重さは今の僕にはまだわからなかった。
一緒になるということは、お互いに責任を持つこと……?
嬉しいことも悲しいこともあらゆることがこれからは同時に受け同時に立ち向かうということ?
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