17

 鼻をテッシュで抑えながら隆二は可憐の方を向いた。そのままそれを鼻に詰めると彼は服を着始めた。

 僕は服を着るとキッチンに行く。ため息をつくと少し水をコップについで飲んだ。


「あーあ。今だから言えっけど、もうお前さ、女も男も見境なく群がってきて払うのにそりゃ一苦労。ま、いっか。あー小腹すいたー守、なんか酒のつまみ作って」

「何言ってるんだよ、酔っぱらいはさっさと寝てくれっ」

「いいじゃん~筑前煮作って~!!」

 可憐は隆二に背中を向けてこちらに視線を送ると甘えたように言う。


隆二が可憐の背中を見て変な反応をしたので、僕はピンときて慌てて可憐に言った。


「いい加減上着着ろっての!」

「作ってくれなきゃこのままでいるぞー」

「わかった! わかったから! 明日の夕飯に作ってやるから、服着ろって」


 もう……。

 にやにやしながら可憐が上着を着ると、僕は冷蔵庫の中の物を調べた。

 材料が足りないな。


「もう二人とも寝ろよ、可憐、和室に布団敷くから」

「へいへい」

 僕は呆れ顔でやってられないと思いながら、布団をさっさと敷くと可憐はそれに引き寄せられるように布団に潜り込む。


 僕は呆れ顔のままシャワーを浴びに行った。

 

 僕がシャワーから出るともう可憐は和室の布団の上で高いびきをかいて寝ていた。


 隆二が1人リビングでテレビを見ている。


「全くもう、ほんとうにしょうがないな」


 隆二はぼんやりとテレビを見つめている。


「隆二、隆二ももう寝なよ!」


 近くまで行ってから僕の存在に気づいたのか隆二が慌てて振り返った。


「あっ、ああ……」

「今日はごめん、こんな奴の付き合いさせちゃってさ」


 僕は半分拗ねながらキッチンにお茶を取りに行くと、隆二の分のお茶も入れて、はいと差し出した。


「まぁ、彼女も色々あるみたいだし。素直そうないいお姉さんじゃないか」

「そうですか? ほんとマイペースすぎて、僕は振り回されてばっかりですよ。 家に居る時だっていきなり飛び出して行って、誰かと決闘したって言って帰ってきて、僕に怪我の手当てさせるんですよーケンカマニアですよね」


 隆二がためらいがちなしぐさをしたので、僕はピンときてさっき隆二が可憐の背中を見たときの反応を思い出した。


「あれ、見たんですね?」

「えっ!」

「可憐の背中の傷」

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