第4話あの人の元へ急ぎたいけど。

襲撃する側も馬鹿では無いらしく、応援が来る前にこの場を片付けたい様だ。

犠牲者を出しても目的を優先する動きを見せている。



脱走を目論む捕虜もいて、この機会を逃すまいと走り出す。

そう、あのコソ泥だ。



しかし10歩を過ぎたところ、背中に矢を撃たれてそのまま地面に前屈みで倒れていく。


そうする内に襲撃側は下斜面の連中が3番目の馬車に近づいて来た。


こちらに目的の人物がいるらしい。

気づいた防衛側の指揮官が剣を片手に向かってくる。


両側が一人の人物に視線を注ぐ中。


指揮官「クレイグ!お前だけは生かして帰さん‼︎ここで逃すなら私が!」と叫び、剣を振り下ろそうとした時、横から飛んで来た矢が肩に刺さってよろめく。



指揮官「くっ!」

すぐさま後ろに回った反乱軍の一人から革装甲の隙間に脇腹を刺されて崩れて行く男。



兵士「マルカス様!マルカス様がああぁぁ!」



反乱軍「早く閣下を救出しろ!急げ‼︎」

反乱軍「閣下!よくご無事で!お迎えに参りました!」

クレイグ「ああ、ご苦労だった。速やかにこの場から移動しよう。」


反乱軍「承知しました!二手に分かれて撤収します!」



指揮官を失った兵士達は陣形を崩され一人一人倒れて行く。勿論襲撃側もかなり被害を被ってる様だ。


反乱軍が撤収して行く。帝国側の兵士達は多くが死んだが何人かは基地の方に撤退出来た模様。


戦いの悲惨な光景が目の前に広がっていた。



そこから少し離れた森の中、私の足元にマルカスという名前の男がいた。


私「リコ、この男を生かして欲しい。治療をしてくれ。」



先程マルカスを運びながらリコに治療をお願いした。出来ればこの男だけは生きて欲しい。


リコ「多量出血並びに臓器損傷が激しいです。現在治療ナノマシンを投入、外部の出血はメディカルパッチで塞ぎました。心停止の為、テンタクルアームを用いて直接心臓を動かし正常心拍まで戻してます。」



リコ「心拍戻りました。各臓器正常に戻りつつあります。ナノマシン回収。意識戻ります。」



私はサイラスの装着を解除して男に話しかける。



マルカス「ううっ!ここは…」


私「気がついたか?治療が間に合って良かったよ。沢山血を流したからもう少し横になった方が良い。」



マルカス「ポーションを使ったのか⁉︎ 私の部下達は⁉︎」



私「申し訳ない。ポーションは1つしか無かったのだ。何人かは撤退出来た様だが、後の人達は勇敢に戦ったよ。私は馬車の下で死んだ振りをして難を逃れた。」



マルカス「そうだったか…。君も逃げられた筈なのに貴重なポーションまで使って私を助けてくれたのか。命の恩人だ、君は。」



私「マルカス。あなたを助けたのは私としても理由あっての事だ。あのまま逃げてしまえば私は反乱軍として烙印され、一生追われの身となる。偶々初めての地を歩いていて捕まったのに反乱軍と一緒にされた誤解を晴らしたかったのだよ。


そして出来ればこの大陸を自由に旅したい。」



マルカス「そうだったのか、確かに君は反乱軍リストにも入って無かった。命令とはいえ、悪い事をしたな。申し訳なかった。」



私「誤解が解けて良かった。私はこれで失礼する。もうすぐ助けが来るから暫く待っていてくれ。もしもの為に君の武器もこちらに置いて行く。」



マルカス「確認の為に名前を聞いて良いか?それと、この指輪を持っていてくれ。我が家紋のものだ。もし困った事があればそれを見せてやれば役に立つ筈だ。」



私「それは有難い、是非使わせて頂く。私はアキラ。ヤガミ・アキラだ。では!」



そこから少し離れた後、サイラスを装着し早々と森をぬけていく。



私「リコ。先ずは大陸中央部を目指す。情報収集した後は北西部に行くぞ。」


リコ「サーイェッサー!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る