PHANTOM ONLINE - ファントムオンライン

 会社なので当然ながら、自動販売機もあった。冷たい缶コーヒーを購入。それとキャロリーメイトを頂き、朝食を済ませた。


 部屋を出ると、指示通りに菜枝が待っていた。退屈そうに。


「お待たせ、菜枝」

「おまたー、菜枝ちゃん」


 俺と璃香が呼びかけると、菜枝は顔を輝かせた。



「二人とも待ったし、ちょっと寂しかったよ! ひとりであの空間はちょっと贅沢すぎるね。まるでお城に一人で住むお姫様気分だった」


「俺もまだ慣れないが、快適で良いだろう。それより、会議室へ向かうぞ」



 エレベーターで十階へ。

 そのまま会議室へ入って俺は、ホワイトボードとかディスプレイのある位置へ。璃香と菜枝を少し距離を置いて座らせた。


 あとは、和泉だが――お、連絡が来た。



『わたしも後で必ず向かいます。一時間後には出勤できると思います』



 良かった。

 来てくれるのなら、何だっていい。俺には和泉の力が必要だ。その間に璃香と菜枝に説明を進めていく。



「和泉は、一時間後に会社へ出勤してくれるようだ」



 璃香は「栖胡ちゃん、来てくれるんだ。嬉しい」と微笑み、菜枝も「へえ、あの元アイドルの栖胡ちゃんだよね。すごー!」とか騒いでいた。


 菜枝のヤツ、和泉のアイドル時代から知っていたのか。Wikiウィキ先生によれば、アイドル期間は高校一年の時だけという。それなのに結構なファンが付き、人気があったんだとか。


 しかし、衝撃の引退宣言。

 今や高校生プログラマーとして名を馳せているようだった。



「さて、これからだが……璃香にも伝えてある通り『オンラインゲーム』を開発する。それが我が社の目標だ」


「えぇ~~ッ!?」



 もちろん、驚いたのは何も知らない菜枝だけ。



「その為に和泉を引き入れたのだからな。小島事件では大変だったが、それも解決した。これからは正式な社員として働いてくれる」


「賢さん、ちょっと質問があるんだけど」


 少し動揺気味に挙手する菜枝。


「どうした、疑問があれば何でも答える」

「おんらいんげーむって何!?」



 俺はズッコケた。

 そうか、菜枝はプレイした事がないんだな。



「話すよりも実際に遊んで貰う方がいいだろう。今時はスマホでもあるから、それでプレイしてもらう」

「えっ、スマホにあるの?」

「ああ、パソコン版とかもあるけどね。でも、パソコンがないしな」



 残念ながら、この会議室にはプロジェクターしかなかった。なので、スマホで済ませてしまおうと思ったが、璃香が立ち上がった。



「パソコンが必要なのね、賢」

「いや、スマホでいいよ」

「どうせプレイするなら、パソコンの方が気分が出るでしょ。あたしは、スマホよりパソコン派だし」


「マジ? 璃香ってゲームするんだな」

「するよー。FPSだけどね」

「なら、キーボードとマウスを使ってこそだな。それにパソコンの方がボイチャも出来るしな……って、そこまでの環境はいいか。じゃあ、頼むわ」


「ここで待っていて」


 璃香は、会議室を出てどこかへ行った。十分も掛からず戻って来た。その手には、ノートパソコン。そういう事か。


 テーブルに置き、マウスもセット。

 回線は無線が飛んでいるらしい。


「この会社、Wi-Fiワイファイがあったのか」

「うん。元々導入済み。名前は昨日変えておいたから、この『ark-5G』がそう」


 スマホでも確認したが、本当にあった。こりゃ便利で助かる。俺は今回、オンラインゲームとしては老舗であり、古参が多い『PHANTOMファントム ONLINEオンライン』をインストール。パッチを当てた。


 このゲームは、十年以上運営されており、全盛期は同時接続十万以上を誇った。今でいう五十万、百万規模だ。



 これをお試しで菜枝に体験してもらう。

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