親戚の女の子
――驚いた。
あの茶髪のツインテール。
気の強そうな表情をこちらに向け、俺の姿だけをその瞳に宿しながら歩み寄ってくる。
「
何故か我が“松本高校”の制服に身を包んでいた。まて、コイツは確か他の高校へ進学したんじゃなかったのか。親父からそう情報だけ聞いたけど。
「賢さん、久しぶりだね。お父さんから聞いているかもしれないけど……私は
「――は? 家出だと? まてまて、親父からは“複雑な事情”があるとしか……あぁッ!」
あの親父、俺に面倒事を押し付けたなァ!
「私はこれから、賢さんの部屋で寝泊まりすればいい?」
「ちょ……勝手に! まだ俺は
「いいんじゃん、親戚なんだし」
「ていうか、お前とこうして長々会話するのも、ほぼ初めてだぞ。いつも『うん』とか『へぇ』とか淡々としていたし」
「事情が変わったの。今は賢さんしか……頼れる人がいない」
肩を落とす菜枝。
そうあからさまにされるとなぁ。
心苦しいというか、何と言うか。
「う~ん、とはいえ俺の部屋は無理だ」
「そんな……」
だけど、住む場所はある。
そう、俺には
でも俺だけの判断では無理だ。
隣でやや呆れ顔の璃香を説得しないとな。
「璃香、こいつは親戚の子で『
「へぇ、こんな可愛い親戚がいたんだ。意外ね」
「まあ、昔の話だったがな。まさかこうしてまた再会するとは思わなかったけど」
そのまま
「ねぇ、賢さん。その……ギャルの人、誰?」
「そうだな、この金髪のお姉ちゃんは同じクラスの『
「か、会社!?」
「ああ、商店街の近くにある」
「う、うそー…。冗談だよね?」
「本当だ。住むなら、そこを紹介してやる。ただし、璃香次第だ。管理は、この秘書がしているからな」
「ひしょぉ!?」
さっきから驚きまくりの菜枝。そりゃそうだよな、普通に考えて高校生の会話じゃないな、これ。俺でも何を言っているんだと思うが、これが
「菜枝ちゃんだっけ。何やら訳ありのようね」
と、璃香は、菜枝に握手を求めた。
「よ、よろしく……お願いします」
「うん。この賢には話さなくていいから、まずはお姉さんに話してみて」
「……それでいいなら」
まずは璃香に任せておこう。
あとでこっそり教えて貰えばいいしな。
「まあ、まずは昼飯にしよう。放課後でいいだろ――って、だめだ。まずは、小島の件を何とかしないとなぁ」
「小島って?」
首を傾げる菜枝に、俺は事情を説明した。
「――って、わけなんだ」
「へぇ。元アイドルの凄腕プログラマーさんを会社に入れたいんだね」
「その為には小島を刑務所送りにしないといけない」
「んな無茶な!」
菜枝は、見事に突っ込んでくれた。
おぉ、コイツ良いノリしているな。
昔より、今の方が俺は好きだな。
「何か方法があるといいんだけどな」
「分かった。私も強力するよ、賢さん」
「マジ? いいのか」
「うん、これからお世話になるんだもん。私も賢さんのお手伝いをするよ」
まあいいか、親父からの頼みでもある。断るわけにはいかない。俺が責任を持って、この子の面倒を見ないと。
「無茶はするなよ、菜枝」
「はぁーい!」
本当に大丈夫かなぁ……。
少し心配だけど、空腹に負けた。
璃香の弁当をいただこう。
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