第5話 平均睡眠2時間
卒業式から1週間後、仕事が始まる。
朝は4時起き、始発で集合場所の新宿に向かい、そこからマイクロバスで現場に移動する。
マイクロバスに乗ると、眠そうなドライバーさんに挨拶をし、厳しい目線のお局スタッフに弁当を取れだの、お茶を取れだの指図され、最後に自分の分をとり、補助席に座る。
マイクロバスに揺られ、現場に着くと、朝食弁当のゴミの回収をしながら、コーヒーを沸かし、現場の準備をする。
上司の田島さんは優しく、色々と細かく教えてくれた。社長は、朝から椅子に座り私の淹れたてのコーヒーを飲みながら、煙草を吸いながら、スタッフと談笑をはじめる。
腹の中で『手伝ってよ』と思いながら、黙々と仕事をすると、また別の上司の奥田さんが車から降りてきて、流暢な関西弁で指示し始める。
どう考えても1人じゃ無理な仕事量だが、めげずにやり続けた。
昼ごはんのお弁当は、5分で平げ、みんなが食べた弁当を生ゴミ、プラスチック、箸を分別し、かたして行く。
奥田さんが、眠い目を擦りながら近寄ってきた。
「おい、里中!それ終わったら次現場行って、特機はこんどいてや」
「はい」
「時間ないで」
「、、、はい」
「70パーくらいでやれや」
「、、、はい」
特機とは、カメラや照明を高い場所に構えるイントレやカメラワークに使うレールのことを言い、これがかなりの重量で、毎回投げ出したくなるくらいだった。
そんな日々が続いた2週間後、私は立て続けに2日間寝坊した。
理由は、わかっている毎日撮影が終わると、社長に誘われ朝の2時まで飲みに行かされ、2時間後には出発という日々が続いていたからだ。
『やる気があれば起きれる』と社長に言われたが、体力的にもピークが来ていた。
「これ以上寝坊したら、クビ」といわれ、初めての給料を使い、ドン・キホーテで爆音が流れる目覚まし時計を2つ買い、翌日に備えた。
そんな日々が半年過ぎた時、美香から久々に連絡が来て、衝撃が走ったーー。
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