2.ファミレスにて
「キーンコーンカーンコーン」
授業終了のチャイムが校内に鳴り響いた。
それと同時にクラス中の生徒が席を立ちだした。
さて俺には今日の放課後、超ハイスペックな幼なじみの舞と一緒に帰るという一大イベントがある。これは俺の高校生活にかかわる大事なことだ。どのような話をしようなどと甘い妄想を膨らませていると優樹に声をかけられた。
「なあ今日この後暇か?」
「残念だがあいにく今日は忙しいんだ」
とちょっと優樹を煽るように言った。勿論いつもの俺ならこんなこと言えなかったが……
「ふーん……忙しいのか。蒼汰が忙しいなんてこともあるんだな」
「人をなんだと思ってるんだ」
「理由は聞かないでおいてやるよ。まあ大体検討はつくけどな」
優樹は不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
(コイツなんて顔をしてやがるんだ……)
「じゃあ俺は帰ってゲームでもしようかな。またな」
「ああ、また明日な」
俺たちはお互いに別れを告げた。そして優樹が教室を出ていった10秒くらい後に舞がものすごい勢いで俺の教室に入ってきた。
「蒼汰ー!」
「遅かったな。授業が長引いたか?」
「いや私が遅くなっちゃっただけ!じゃあ帰ろっか!」
笑顔とともに放たれたその一言でさらに俺の心拍数がぐーんと上昇した。そのやりとりを見た男子が俺に向けてとんでもない殺気を放ってくる。
(いいだろう!お前らには一生体験できることのないことだぞ!)
「蒼汰く~ん……後で話があるんだけど……」
「あいにくだが俺はお前らに話すことなんて一つもない!」
そう俺が話すとクラスのラグビー部のガタイの良い三人組が俺に襲い掛かって来た。
「おい!やめろ!」
「お前らコイツを絶対に離すなよ!」
「おう!」
俺は必死に抵抗するが、ラグビー部の一人が他の2人を指示をし見事な連携をとっている。
「ちょっと!やめて!」
その言葉により瞬く間にして教室の空気が変わった。俺を押さえつけていたラグビー部の男子生徒達はクソ―!と叫びながら半泣きで逃げていった。
「もう男子ってすぐそうなんだから!」
舞は先程と同じく怒ってはいるが、今は少しだけいつもの優しい声が混ざっているような気がした。
「助けてくれてありがとな」
「当然のことをしたまでだよ」
褒められて嬉しかったのか舞は、頬を掻きながら言った。
「でーもー……蒼汰も悪いよ!」
と頬をプクっと膨らましながら言う。
(怒ってるときもかわいい……)
怒られているというのに内心そんなことを思ってしまった。でもかわいんだもん!しょうがないよね!
「ごめん。俺も馬鹿にするようなことを言ったのは悪いと思ってるよ」
「本当?なら許そう」
彼女は偉そうに豊満な胸を張った。
「じゃあ帰るよ!ファミレスは蒼汰の奢りだからね!」
「なんで俺なんだよ!」
「私に世話を焼かせたからね」
「まあ舞には日頃からお世話になってるし今日は奢るよ……」
「ありがとっ!」
(マジでありがとっ!の言い方反則すぎるだろ!?)
俺が奢ることが決定したがいいだろう。何故かって?舞がかわいすぎるから!学校を後にし、俺たちは帰宅途中にあるファミレスに寄った。店内に入り席に着くとメニュー表を見ながら舞が聞いてきた。
「蒼汰は何頼む?」
「うーん……じゃあ俺はこのグラタンにしようかな」
「じゃあ私も同じのにしようかな」
とメニュー決めは以外にもあっさり決まり、店員さんを呼んで注文した。
以外にもと言うのは、小学生のとき家族ぐるみで一緒に食事をしたことがあった。そのときに舞はとても悩んでおりメニュー決めでかなりの時間を使っていたからだ。
「今日は話があって蒼汰のこと誘ったんだ……」
「話ってなんだ?」
「実はね……私蒼汰に……」
舞は深呼吸し、話し出した。
「私と文化祭のフォークダンスを踊ってください!」
あまりにも予想外な言葉に俺は開いた口がしばらく塞がらなかった。俺が思考停止しているのと同時に舞も頬を赤らめながらうつむいていた。
「俺で良ければ全然いいぜ!」
しばらく沈黙の時間が続きたが、心の底からうれしかった俺は気づけば無意識に舞に返事をしていた。これが潜在能力ってやつかな。
「本当?ありがとっ!」
まだ少し頬は赤かったがいつもと同じ舞が戻ってきた。
(一日にこんなにもありがとっ!が聞けるなんて俺は幸せ者だぜ……)
そうこうしているうちに注文した料理が届いた。
「わー!美味しそう!」
「そうだな!めっちゃ美味そうだな!」
頼んだグラタンは割と本格派でとてもいい香りがしていた。
「ねえ蒼汰」
「何だ?」
「私があーんしてあげようか?奢ってもらうんだしこれくらいしないとね」
(付き合ってもいないのにあーんだと!?)
今にも飛び出してしまいそうな心臓を抑えながら俺は舞に言った。
「せっかくだししてもらおうかな」
(どうだ舞!まさか反撃してくるとは思わなかっただろう!)
俺が完全に勝ち誇っていると、舞が俺のグラタンをスプーンですくい俺の口の前に差し出してきた。
「はい、あーん」
「あ、あーん」
俺はとっさに口の前に出されたため条件反射で口を開けた。口の中に広がるクリーミーな味わい。そしてあーんしてもらったからだというのか、今まで生きてきた中で食べた何よりも美味しく感じた。
「おいしい!舞にあーんしてもらったからかな?」
「良かった!でも実は美味しいかどうかの毒見でした」
「おい!なんだよそれ!」
「えへへ、ごめんね」
舞の一言により緊張が一気に解けた。一通り食べ終わった俺達は会計をし店を出た。
帰り道、舞とグラタンについて熱く語り合いながら俺達は帰った。
【あとがき】
1話を見てくださった方々本当にありがとうございます。
このシリーズはどこまで続くか分かりませんが、全力で書いていきたいと思っております!また改善点などがあればご教授いただければ幸いです!
「
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