管理人さんと自称錬金術師との日常生活

猫と犬が好き

第1話 料理ができないのなら錬金したらいいじゃない!

「管理人さーん! たすけてくださぁーい! 」


 朝、アパートに声が響く。


 だが、いつものことというよりはもう風物詩なので「何事?! 」とはならない。


 逆にこの声を聴かないと1日が始まらないという人がいるほど。


 俺は「またか……」と憂鬱な気持ちになる。


 俺は管理人室から出ると顔に生地的なものがついた自称錬金術師の上山友莉かみやまゆりがいた。


「今度はなんだ? マンドラゴラがギャン泣きしたのか? スライムが突然変異したのか? それとも実験失敗? 」


「違いますよぉ〜! とゆうか、スライムはまだできてません〜!! パンケーキ作ってたら爆発したんです〜! 」


「もうお前料理作るのやめろよ」


「イヤです! 自炊した方が生活費が浮くんです! 」


 頑なだなぁ。それなら料理教室に通えよ。


「で、いつも通り綺麗にすればいいのか? 」


「はいっ! よろしくです♪ 」


 それと同時に「キュルルル〜」と可愛らしい音が上山から聞こえてくる。


「えっと……。ご飯食べさせてもらえませんかね? お腹空きました」


「……わかった。野菜炒め温めるよ」


「管理人さんのお料理おいしいから楽しみです! 」


 だったらはじめから食いにこいよ。料理を爆発させて綺麗にするよりはマシだから。


 でも、それ言ったら絶対「いいんですか?! 是非! とゆうか、毎日通っちゃいます! 」って言いそうだから言わないけど。



 〜自称錬金術師、上山が住む202号室〜


 台所には黒焦げになったパンケーキの山、壁には爆発した時に飛び散ったと考えられる生地が芸術みたいな感じで張り付いていた。


「なあ、どうやったらこうなるんだ? 」


「知りません! 」


「もうお前料理すんな。コンビニ弁当にしろ。それか料理教室に通え」


「私は貧乏人なんですよ?! そんなお金ありません! 」


「もう真っ当に働けよ。錬金術師なんてやんないでさ」


 俺は壁についた生地を取りながら話す。


 うわっ、水分飛んでカピカピになってやがる。


「需要があるんですよ? この前なんてオタクに等身大の推しキャラの自立型のフィギュア作ってあげましたから。依頼料は100万でした。ですが、その他諸々の費用で手取りは10万です」


「もう割に合わないからやめちまえ」


「イヤです♪ 」


 上山は満面の笑みで答える。


 マジでこいつだけ清掃費として家賃に上乗せしようかな。


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