第463話 目の前で…夏

 どうしても欲しいというわけでもないのだが、売っていたら買おうかなくらいの感覚でプラモデルを見に行った。

 すでに棚に並べられるのを待つ人が3人。

「仲間だと思われたくない」

 そんな思いと待ってまで欲しいものでもない、そんな思いで店を出た。

 ひと用事済ませて会社に帰る途中、ふと気になって再び、店に寄った。

 そのプラモデル、最後の1個を手に取って悩む人がいた。

 僕も隣で悩んだ…。

 これが最後の1個…もし、この人が棚に戻したら僕は買うのか?

 その場合、僕はスプレーも買わなきゃならないぞ、確か『黒』がない。

 塗装するとしたら…艶黒に銀でラップ塗装、クリアオレンジが似合うかな?

 クリアオレンジは、まだあったはずだ。

 悩むこと数分、彼は棚に戻さずレジに向かった。

「………別にいいけどね」

 だが、なんとなく腑に落ちない。

 色々あるのだ。

 目の前で最後の1個を買われたこと、数分間、塗装で悩んだ時間、そもそも待ってりゃ買えたという事実…色々な思いが駆け巡り、総じて悔しいような気持ちに落ち着いている。


 欲しいわけじゃないのに、買い逃したような後味の悪さ。

 皆さまも、こんな経験ありますか?

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