第18話 正式には格闘技じゃないので、上半身裸でやるわけが無い
ビビるんですけど。
木曜日、試合当日。さっき登校したと思ってたのに、もう放課後なんですけど。
嫌なことは時間が過ぎるのが遅い、っつうけどよ。嫌なことに近づく時間は、速くなんのか。理解不能の意味不明だわ。気は進まないが、こうなった以上は腹くくるか。
オレとシブイバシ、および天下無双の二人は、堂々と教室で運動着に着替えた。この学園は男子のみの校舎となってるから、普通に全員が自分の席で着替える。
正式には格闘技じゃないので、上半身裸でやるわけが無い。防護壁があるっつっても、汚れは普通に身体につくんだよ。何故かな。
競技場である中庭は入場の際、西棟と東棟と入口が別れんだ。これは蓬田英二曰く、相撲と同じナントカだとさ。挑戦者側が先に西棟から入り、された方か保持者は東棟から入る。
オレ達は西側からの入場となったので、先に中庭へと足を着けた。西からが何故か気に喰わないのか、入場してもシブイバシはブツブツ言っていた。
「奴ら保持者だが、挑戦してきたの向こうだろ」
「どうでもいいだろ、んなこと」
シブイバシの首の紋様は稲妻っぽいが、オレのは糸ヨージみたいな形だから意味不明だ。雷紋様は何人か被っているが、オレのだけ特殊すぎて気持ち悪いくらいだぜ。
そうこうしてる内に、天下無双の二人が入場。大友悠は馬の蹄鉄みたいなやつ、馬鹿だからかな。板垣央は紋様までカッコイイことに、鎖のようになってるんだよな。羨ましい。
「うぉい、シバいたるわ」
開口一番、のっけから大友悠はチンピラみたいな口調だった。
シブイバシが乗ろうとしたので、慌てて止めた。お前の相手はソッチじゃねえよ。これ以上馬鹿に口開かせると面倒だから、さっさと始めるように指示した。
共闘戦の場合は仲間と拳を合わせてから、互いに拳骨を当てる。文字通り手を組む。って意味らしいが、組んではないよな。組んでは。いや、組みたくは無えよ気色悪い。
オレが隣のイケメンと拳を合わせ、目の前のイケメン二人と拳骨が合わさった時。試合開始の鐘が鳴った。
予想通り、馬鹿がシブイバシの方へと向かってきたな。オレは相棒の背中を九時方向に押してから、真正面の大友悠の方へと駆け出した。
「なんやニシフク! どけや!」
「るせえ! おめーみてーな無能には、オレで充分だっての!」
その一言にカチンと来たのか、大友悠はオレの方へと拳を放って来やがった。
とりあえず第一段階目は、これで完了。二段階目の成功は、シブイバシ頼りで情けないが。元々はあいつが原因なんだから、ケツを拭ってもらうしかない。
大友悠の拳が真っ向から来たので、取り合えず回避だ回避。オレだって他の生徒と同様、真面目に基礎訓練は受けている。優男な蓬田英二ほど、対人戦が苦手って訳じゃない。
すると大友悠の馬鹿は、回避された拳の軌道をいきなり変えてきやがった。いわゆる裏拳ってやつで、オレの顔面に手の甲を当てに来た。
いちいち動きが素早いが、これもどうにか回避。後ろに三歩ほど飛んで、少しばかり距離を取る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます