番外編 第9話 ぶっころなの
急遽開催されることになった夕食会ですが、どうして開催される事になったのかサッパリ分からない。うちの母さんがあんなにも強引だなんて、知らなかったよ……。
「神様、どうして急に夕食会なんてやるんでしょうね~?」
僕は何気なしにお猫様に聞いてしまった。
『うにゃー! ……この! ぶっコロなの!』
母さんの買って来たピンク色の猫じゃらしに果敢に飛びかかるお猫様は、僕の話なんて何も聞いていないのだった。
たまに猫じゃらしを捕まえさせて上げないと、僕に襲い掛かって来るのです。調子に乗って猫じゃらしを捕まえられないようにしていたら、僕の足を嚙まれました……。子猫なのに地味に痛いのです。
さっきスマホに連絡が来たけど、もうそろそろ椎名さんが到着する時間だ。初めて異性とのお食事会な気がする。もちろん家族を除く、になるけど。
――― ピンポーン♪ ―――
「あ、来たかも」
『にゃうーん! また敵なの!? いやなのー!』
お猫様は玄関チャイムの音が苦手らしく、聞いた途端テレビの後ろに隠れてしまった。そしてコッソリとテレビの隙間からこちらを覗いているお猫様がプリチーです。
母さんは台所でお鍋の用意をしているので、僕がお出迎えです。玄関を開けたら椎名さんが居た。少し顔が赤くなっているけど、すごく綺麗だと思った。
「こ、こんばんは。図々しくも来ちゃいました……」
「い、いらっしゃい椎名さん。どうぞ上がって下さい」
椎名さんに見惚れてしまい、声が上擦ってしまった。あ、スリッパ買ってないや……。
「ごめんなさい。スリッパまだ買ってませんでした……」
「大丈夫よ。ふふ、気にしないで」
「今度来るまでに買っておきますね」
「あら、またお誘いしてくれるのね。楽しみにしておくわ」
「あ、その……はい!」
僕は焦ってしまい、変な事を言ってしまった。でも、椎名さんと仲良くなれたら嬉しいな。
女性との接し方がイマイチ分かりませんので、特に会話も出来ずに椎名さんを客間に案内するのが精一杯でした。
「わあ、掘り炬燵だ。いいわね」
「どうぞお好きなところに座って下さい」
客間の畳には、外すと掘り炬燵になる場所があるのです。足を入れられるから楽だよね! お猫様のお気に入りであるフカフカの座布団を用意してあります。
『うにゃん? 知らない奴がいるの』
「あ、猫ちゃん!」
「椎名さんです。怖い人じゃ無いので安心して下さい」
テレビの後ろからお猫様が恐る恐る出て来た。でも尻尾をピーンと伸ばしているから、ちょっと嬉しいのかな?
「ふふ、猫ちゃんに紹介してくれるのね。ありがと」
「あっ。つい……」
そうだ、神様と会話出来るのは僕だけだったのだ。他の人から見たら、ニャーニャー言ってる猫とお喋りする変な奴に思われてしまうのだろう。
『こいつ、あの匂いがするの!』
「わぁ、こっち来た。触って良いのかな? ……あ、すごい柔らかい」
お猫様が自分から椎名さんの手に頭をグイグイ寄せ、頭突きをしている。こっちまで聞こえるくらい喉をゴロゴロと鳴らしていた。こんなお猫様見た事ないぞ……。椎名さんはそんなに良い匂いがするのだろうか? 僕も椎名さんに抱き着いてクンカクンカしたいです!!
「春希くんー、ちょっと手伝って~」
そんな事を考えていたら、母さんに呼ばれてしまった。そうだ、母さん一人に夕飯の用意を任せる訳には行きません。お手伝いせねば!!
「はーい! ごめん椎名さん、ちょっとお猫様をお願いします」
「あ、うん……」
『すごく匂いが濃いの……もうコイツにしようかな……なの……』
微かに聞こえたお猫様の声はちょっと意味が分からなかったけど、すごくトリップしている感じがした。
母さんからお鍋を受け取り、客間へ持って行く。どうやら今日はしゃぶしゃぶになったようです。母さんの手には大皿いっぱいにお肉があり、食べ応えがありそうだ。
そして、母さんと二人で客間へ入った時、椎名さんが泣きそうな声で言って来た。
「ハル君……私、この猫ちゃんの声が聞こえるようになっちゃった……」
椎名さんの言っている内容を理解するまで、僕は頭が真っ白になってしまった。
何かしたんですか神様!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます