第49話 お買い物終了ですか?

 目的の物を全て購入出来たので帰ろうと駅に向かって歩いていたところ、葉月ちゃんが何かを思い出したように話しかけて来た。


「そうだ、先輩の今日の運勢は何だったんですか?」


 やばい、すっかり忘れてた。今日の運勢は金運アップでレンタルスキル『期間限定のいつもと違うものがすごい鑑定見えるよ♪』があったのだった。今から骨董品探しに行った方が良いだろうか?


「実は今日の運勢、金運アップらしいんだよね。金運アップしてる感じが全然ないけどね……」


「金運アップですか……。そんな運勢もあるんですね~」


「ねぇ薫くん、あそこの宝くじ売り場で宝くじ買ってみたら? 年末ジャンボ宝くじ売ってるわよ」


 お義母さんが指差す方向を見れば、小さな宝くじ売り場があった。年末ジャンボ宝くじ発売中! っていうのぼりが立っている。


「ちょっと買ってみましょうか」


「そういえば私の運勢も現金持って行けって出てたけど、この事だったのね~」


 なるほど、宝くじ売り場では基本的に現金購入なのだ。つまりお義母さんもここで宝くじを買って当たるってことか!


 売り場には僕たちの他に誰も並んでいないのですぐに購入する事が出来ました。葉月ちゃんも自分で買ってた。そういえば、購入した宝くじを『期間限定のいつもと違うものがすごい鑑定見えるよ♪』で見たら何か分かるかもしれないな。




【年末ジャンボ宝くじ(連番10枚)】

 年末のジャンボな宝くじです。

 おおすごい、当たってますよ!!

 おめでとうございます。300円の当たりです。



「……」


 これが『期間限定のいつもと違うものがすごい鑑定見えるよ♪』ですか? 確かに前の鑑定と違って当たっている事が分かるからすごい鑑定だと思うけど、300円って必ず1枚入ってるからね?


 ちょっとお義母さんと葉月ちゃんの購入した宝くじもコッソリと見てみよう。



【年末ジャンボ宝くじ(連番10枚)】

 年末のジャンボな宝くじです。

 おおすごい、当たってますよ!!

 おめでとうございます。300円の当たりです。



【年末ジャンボ宝くじ(連番10枚)】

 年末のジャンボな宝くじです。

 めっちゃすごい、当たってますよ!!

 おめでとうございます。3000円の当たりです。



「……」


 どういう事だ。金運アップした状態なのに誰も高額当選していないぞ。よし良く考えよう、今日の運勢を思い出すんだ。……確か『じゃあ一日だけ特別な力を貸してあげるから頑張ってね♪』って書いてあった。つまり金運はアップしていないと言う事だ。やはり僕はこの鑑定を使い、何かを得なければいけないのだ……。


「……先輩、どうしたんですか? あ、あのキャリーオーバーってやつが気になるんですね」


 葉月ちゃんの言葉でハッと意識が戻った。宝くじ売り場を見れば、ロト7でキャリーオーバーが発生中というのぼりが立っていた。のぼりには、1等当せん金10億円と書いてあった……。もしかしてこれか?


「ちょっと試しにロト7買って良いかな?」


「あ、私も買います!」


「じゃあせっかくだから、私も買おうかしら~」


 売り場の横にある記入用紙を手に取り、『期間限定のいつもと違うものがすごい鑑定見えるよ♪』で見てみた。



【ロト7の記入用紙】

 1~37までの数字を7個選びましょう!

 キャリーオーバー発生中につき、次回の1等当せん金は最高10億円です!

 頑張ってね~。



「……はぁ」


 正直なところ、ガッカリしてしまった。『期間限定のいつもと違うものがすごい鑑定見えるよ♪』だったら当たりの数字が7個書いてあると思ったのだ。そんな都合の良いことはありませんでした。


 このレンタルスキルの正しい使い方は何だったのだろうか?


 競馬で馬の状態を見極める? 骨董品を買う? 武器屋でお得な武器を買う? 売られてる奴隷の持ってるスキルを見てお得なやつを買うのか? 僕はもう現実とラノベの鑑定が混じってしまい、良く分からない事を考えてしまった。


 でも、今までこの鑑定にたくさん助けられた。修二が死ななかったし、楓さんだって死ななかった。そして何より、葉月ちゃんと恋人になれてご両親にも良くして貰ってる。これ以上を望んだら罰が当たるね。


 僕は一度冷静になり、この能力は僕には使いこなせない物だったのだと諦める事にした。きっとラノベの主人公だったら何かしら使いこなして大儲けしている事だろう……。


「……先輩、まだ書かないんですか? 私は3つも組み合わせ書いちゃいました。あと2つ組み合わせ書けるので、ちょっと考えてみますね」


「うふふ……私は4つ組み合わせ出来たわ~」


 よし、僕も二人を見習って楽しもう。もしかしたら当たるかもしれないじゃないか! そう思って用紙を見たら、おかしな事が起こっていた。


 手に持った記入用紙から【吹き出し】が出ているのは今まで通りだ。でも、記入用紙のマークシートのところに薄っすらと黒い線が入っていた。線が見えるのは各組合せのどれも同じ番号が7個だ……。


「あの二人とも、ちょっとお願いがあるんだけど……」


「どうしたんですか?」


「あ、お金足りなかったの? あるわよ~」


「いえ、お金はあります。その……1組だけ僕と同じ番号で購入して貰って良いですか?」


「……良いですけど」


「あらあら、期待しちゃうわよ~?」


 僕は自分の記入用紙に1組だけ薄っすらと見える黒い線を塗りつぶし、葉月ちゃんとお義母さんに同じ番号を書いて貰った。念のため、僕は間違いが無いか3度も確認した。筆記テストの確認でもこんなに真剣に確認した事がないぞ……。


 そして、それぞれが自分のお金で購入した。この結果は来週の金曜日だ。無くさないように大事にしまっておこう。たぶんこれが、神様の言っていた『期間限定のいつもと違うものがすごい鑑定見えるよ♪』なのだろう。


 ちなみに他の種類のロトの記入用紙を鑑定してみたところ、同じように薄っすらと線が出ていた。ロト6では6個の数字が出ていたのだ。僕は半信半疑でロト6も買ってしまった。だって本当に当たっているか分からないからね。ちなみにロト6は月曜日が抽選日です。ワクワクが止まらない!


 まだ結果は分からないけど、外れても良いと思った。左腕に感じる葉月ちゃんと、右腕に感じるお義母さん、そして出張中のお義父さん。家族みんなで幸せになれれば、それで良いと思ったんだ。


「楽しかったですね。またみんなでお買い物行きましょうね!」


「そうね~。次はパパも誘って行きましょう」


 そして僕は、こんな楽しい休日を与えてくれた神様に感謝した。感謝の念を神様に飛ばしていたら、葉月ちゃんが僕の耳元で囁いた。


「今日の夜はどんな下着か楽しみにしてて下さいね……先輩」


 どうやら今夜も眠れない夜になりそうだ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る