第44話 ルート選択ですか?
豪華で広々とした客間の中で、僕は困っていた。目の前には紫苑さんと美人秘書さんの二人が僕を見つめて来る。……美人秘書さんは冷たい視線だけどね!
せめて葉月ちゃんとかが居てくれたら僕を支えてくれるのに……と内心思ったけど、これが僕のお仕事なのです。家族を支えて行くために、負ける訳にはいかないのだ。
さて、これからどうしようかとずっと考えていたが、とりあえず鑑定した結果をメモ帳に書き込んで行くか……。来週から紫苑さんの言うアルバイトが始まったなら、40人分も手書きとかやってられないからパソコンを用意しないとダメかもしれない。美人秘書さんの内容も手書きで書くとすごい大変だ。
あまり時間を掛けてもしょうがないので、書き込んだメモ用紙を美人秘書さんへ渡しました……。紫苑さんには少し待って貰って、まずは美人秘書さんに確認して貰います。
「……こ、これは!?」
初めて聞いた美人秘書さんの声は、とても澄んでいて透明感のある優しい声でした。きっと目の鋭さで損をしているタイプです。今は目を大きく開けて可愛いです。僕が葉月ちゃんと付き合ってなかったら危なかったね!!
さて、本人が固まっているうちに、僕は鑑定結果の考察をしよう。
【
天王寺家を支える陰の立役者である港家のご令嬢32歳の独身です。
身長175cmと女性にしては身長が高く目つきも鋭いため、相手に冷たい印象を与えてしまう可哀想な女の子です。
でも本当は超乙女な一面もあり、理想の王子様を求めている処女です。
人に言えない性癖として、身長の低いショタっ子をグチョグチョにしてしまいたいという願望がある。
あと、天王寺楓の部屋にこっそりとエロ本【あべこべ世界に迷い込んだショタが、年上のお姉さんに甘やかされてドロドロに溶かされるまで(ラノベ)】を忍ばせた犯人です。
しかし今ではそれを凄く後悔している。何故ならば、自分の理想とする男子を楓が連れてきてしまったからである。
彼女はいま、どうやって楓から中野日向を寝取ってやろうかと、虎視眈々と狙っているのだった……。
※今日の運勢※
今夜がチャンス! 中野日向は今晩一人ですよ~。
あなたの行動によって将来が確定します♪
①天王寺楓に己の全てを嘘偽りなく打ち明ける → ヒナタちゃん共有ハッピーエンド【妾だっていいじゃない! 幸せだもの】
②天王寺楓に黙ってヒナタを襲う → バッドエンド【ゴリゴリマッチョと共に】
③何もしない → バッドエンド【ゴリゴリマッチョと共に】
補足情報として、湊家のお母様は妹の妊娠を知り喜ぶと共に、姉の婚活に焦っています。明日になったらゴリゴリマッチョが紹介されるよ!
まず、楓さんがあの性癖になった理由がやっと分かった。この美人秘書さんが楓さんの部屋にあのエロ本をわざと置いたのだ。もしかしたら自分の性癖の理解者になって貰いたかったのかもしれない。
その結果、楓さんはうちの兄貴を連れて来た。まさに美人秘書さんの理想とする、あのエロ本に出て来るショタっ子のような兄貴が現れてしまったのだ。きっとビックリしただろう。
そしてエロ本に書かれているような体験を、楓さんは毎晩体験しているのだ。きっと美人秘書さんは指を加えて悔しがったに違いない。日に日に募る劣情は、限界を迎えようとしていたのだ。
今日の運勢には重要な事が書かれていた。これを見る限り、美人秘書さんには『ヒナタちゃん共有ハッピーエンド』か『バッドエンド』の2択しか無いのである。バッドエンドという事は、美人秘書さんは幸せになれないのだろう。まあ普通に考えて、超乙女でショタっ子が好きな美人秘書さんが、ゴリゴリマッチョな男性を好きになる訳が無いよね……。
ヒナタちゃん共有ハッピーエンドを選択した場合、うちの兄貴はハーレムルートに突入するのか……。美人秘書さんが楓さんに全てを嘘偽りなく打ち明ける事により、楓さんが味方になるって感じかな? まあこれから
しばらく思考の海に潜っていたら、美人秘書さんが現実を受け止めたようだ。
「わ、私はどうしたら良いのでしょうか……?」
美人秘書さんは困惑した感じで、弱弱しい声が聞こえた。この感じを見ると、本当に
「どんな結果だったのかしら。私にも見せなさい」
紫苑さんの命令には逆らえないのか、美人秘書さんは唇を噛みしめて苦痛の表情を浮かべながらメモ用紙を紫苑さんへ渡してしまった。あの感じだと、紫苑さんのスキルが働いている気がした。きっとどんな人でも
紫苑さんは受け取ったメモ用紙を見て、口角が上がったように見えた。きっと想像以上に面白い結果だったのだろう。良く考えたら紫苑さんが知ってる占いの結果といえば、『ステーキが食べたいニャン』とかだもんね。
美人秘書さんはオロオロしている。そりゃそうだ、楓さんの性癖を歪ませてしまった張本人なのだから……。
「ふ~ん。そうなのね~」
「……っ」
紫苑さんが美人秘書さんを見つめ、探るような視線を送っている。一方の美人秘書さんは、もう逃げたくて仕方がないと言った表情だ。
「優香さん、これに書いてある事は本当なの?」
「……ま、間違いございません……奥様」
重い空気が漂っている。僕はどうしたら良いのか分からず、キョロキョロと視線が泳いでしまう。うう……胃が痛くなってきた。
「うふふ……私の言った事は本当だったでしょう?」
「……はぃ」
可哀想に美人秘書さんは縮こまってしまった。でもこれで僕の鑑定能力は理解して貰えたと思う。
「じゃあ来週から薫さんと一緒に仕事して貰うから、準備とか任せたわ」
「か、畏まりました。あ、あの……私はどうしたら良いのでしょうか……?」
美人秘書さんが薄く涙を浮かべて紫苑さんに聞いてしまった。僕も紫苑さんがどう反応するのか気になります!
「うーん……そうねぇ、薫さんはどうしたら良いと思います?」
「うぇっ!?」
ここで僕に振るのか!? ひどいよ~。でも美人秘書さんがゴリゴリマッチョと一緒になっても不幸にしかならないだろうし、答えは一つしかないよね……。
「え、えっと、神様がバッドエンドと言うからには、悲惨な未来しか待っていないと思います。逆にもう一つの方はハッピーエンドです。兄貴を共有してハッピーエンドと言う事は、きっと誰も不幸にならないのでは無いかと……お、思います」
「私もそう思うわ。……はぁ、優香さんは楓が帰ってきたら全部話しなさい。港家の方は私が止めておきます。上手く行ったらしっかりと働いて貰いますからね?」
「ありがとうございます……奥様」
どうやら美人秘書さんには『ヒナタちゃん共有ハッピーエンド【妾だっていいじゃない! 幸せだもの】』ルートを選択させるようだ。まあ自分から望んでバッドエンドに行く人は居ないよね。ゲームだったらCGとかエッチシーン回収のためにバッドエンド選択しそうだけど、現実だからね! セーブなんて無いのです……。
うん、一件落着だ。みんな幸せになってハッピーエンドだね! 兄貴は良く分かってないだろうけど、お幸せに!
「じゃあ薫さん、お仕事の詳細を詰めましょうか。まずは……」
やっと今日の本題に入れるようですが、話を聞いてみたところ今までの話と大きく変わるところはないですね。お給料もたくさん貰えるようで、喫茶店でのアルバイトをしなくても良いくらいでした。どうしよう、少し減らそうか……。葉月ちゃんに相談しよう!
そんな感じで無事に打ち合わせは終了し、来週の金曜日は東京にある会社で面接に立ち会って鑑定するようです。お仕事用のPCは支給して貰えるようです。助かった……。でもスーツは自分で買わないといけないので、明日のお買い物の時に買おうと思います。
よし葉月ちゃんの元へ帰ろう! と思ったところ、紫苑さんから待ったが掛かったのだった。
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