週6で愛を探す

111asano

第1話 堕天使あらわる

お前が見出だすのは愛ではない

お前には静けさを求める

手足もなく

烈天使のもとで

震える心もなく

来るべき死も持たない


フィリップ・ラーキン






 オレは愛を受けて育った。


 あまやかされた訳ではなく、親や親族から、注がれた。きっと28才になった今でも。だから愛の容器が空になることはこの先もない。それはなぜか確信できる。


 ここ数年、淋しいと感じたことは一度もない。





 ある金曜日の朝、世間的には昼、いつものようにスッキリ目覚めた――



 パソコンの画面にAVを再生しながら、コーヒーを飲む。


 電動式性家電が、やる気のない風俗嬢より快楽を与えてくれる。


 だから、恋人は必要ない。




 その日も、朝のルーティーンをこなしていた。


 違うことは、タイトルぐらいだっただろう――





「お取り込み中のところー」


 と、言ったのかどうかは覚えていないが、郊外にある16㎡のワンルームに天使が舞い降りた。

 6つの羽を持ち、短い手足、丸みを帯びた癒し系のフォルム。2つの羽で覆い隠した顔の隙間から覗く真んまるい優しそうな眼、その眼の片隅で、ユルユルの精神で鎮座するオレを見ていた。


 羽で顔を覆っているのは、未だにコロナを気にしているからではないように思えた。


 そのときのオレが感じたのは、それだけだった。

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