第16話 お出掛けデート(準備編)②
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「へぇ……? で、私が友理奈ちゃんに何を教えればいいんでしょうか?」
私は若干、不機嫌そうに……、だが、一応は紳士的な対応をする。
「えっとね……。その、異性の人と一緒にお出かけするための服装とか……」
友理奈は両手の人差し指どうしをツンツンと突っつきあいながら、照れ隠しをしつつ話してくる。
何なんだ……? この可愛い生命体は……?
が、私の取れる態度と言えば、
「はぁ!?」
「ええっ!? そんな怒ること!?」
私は素っ頓狂な声を上げると、友理奈は驚きふためく。
「い、いえ、別に怒ってるわけじゃないんですけれどね……」
そう。私はあくまでも大きな声を上げただけだ。
理由は二つある。
そもそも「異性とお出かけ」って、早い話が、祐二くんと一緒に出掛けるってことでしょ?
どうしてそうなったの!? それって恋人同士だから? という反応。
そして、もうひとつは「デートをどうすればいいか知らないって何それ!?」という純粋な驚き……。
とはいえ、普通に社交界デビューも果たしている友理奈がまさかのこの慌てふためく感じは何だか滑稽に見えなくもない。
「異性とお出かけ……て、誰とかなぁ……?」
「えぇっ!? そ、そんなこと言わなきゃダメかな?」
「まあ、ある程度推測はできるけど……。祐二くんとでしょ?」
「……ううっ!?」
「何だか、最近の友理奈ちゃんってすごくアホっぽくなってるわよね……」
「ちょ、ちょっと!? 誰がアホよ!」
友理奈は私に猛抗議してくるけれども、さすがにそれを謝罪するつもりもない。
転校してきた当初は、すごく近寄りがたいオーラを放っていたような気がする。
それが、祐二くんと付き合うことになってからというもの、友理奈の素が見えるようになってきた気がする。
まあ、構えなくて済むのだからよいのではあるものの、これでは威厳も何もないではないか、と言えなくもない。
気が緩んでいたら、私たちの誰かが祐二くんを奪い取ればいいと思えるのだが、ちゃんと自分の方を常に見せるところが、摩耶友理奈という女の秀逸なところだったりする。
今回の試験対策でも、祐二くんは私と優紀ちゃんの二人に対して、指導をしてくれていた。
この2週間は、私の知る限りでは、友理奈は祐二の部屋に夜な夜な押し入るようなことはしていない。
本当に自身の勉学の結果向上というひとつの目標のために、欲を殺してでも勉強に努めていたのだと思う。
そこはすごいな、と感じた。
とはいえ、昼休みともなれば別だ。
昼休みになると、一緒に昼食をとって、祐二の温もりに触れるという行動は何一つ変わることはなかった。
だが、そのタイミングでは勉強の話は一切なしだ。
友理奈は祐二くんに甘えるだけ甘えていた。もちろん、毎日のキスも忘れない。
きちんと祐二くんに対して、あなたの彼女は私なんだから、余計なちょっかいを出したらだめよ、という意思表示みたいなものなんだろうけれど、摩耶財閥の跡取りがこんなんでいいのだろうか、と少し不安にもなってきてしまう。
そ・れ・に……、私にだって、嫉妬がないかと言えばそんなわけない。
これまでは同い年でもお兄ちゃんのように慕ってきた祐二くんを友理奈に搔っ攫われた気がしなくもない。
幼馴染としてずっと一緒に居てくれる優しい存在であった祐二くんが突如として私の隣からいなくなるというのはどうしても解せない。
そんな気持ちは心の奥底から湧き出ることはあった。
だから、私は学校では極力仲良く一緒に居る時間を楽しむようにした。
もちろん、家(みんなで寮として使っている友理奈のお父様が用意してくれた家)に帰っても、目の前には祐二くんがいるんだから、別に良いと言えば良いんだけれど……。
でも、目の前でイチャイチャされているのを見ると、心がざわついてしまうのも事実だったりする。
「とにかく、祐二くんとデートをすることになったんですね?」
「はうっ!? そ、そうなんだよ……」
「どうしてです?」
「はい?」
「どうして、祐二くんとデートすることになったんですか? まさか、あなたの提案ですか?」
「ち、違うわよ! これは祐二から誘ってくれたの……」
はぁっ!? 祐二くんが友理奈に対してデートを誘ったですって!?
どこにそんな甲斐性が……、いいえ、羨ましすぎる! ……じゃなくて。
「脅迫でもしたんですか? 祐二くんってそんなデートに誘うなんてことないと思うんですよね……」
「ひ、ひどい……。まあ、私と祐二の間で、期末考査の勝負をしていたのは事実なんだけどね……。で、それに祐二が勝ったんだけど、その結果、ひとつ何でも言うことを聞くということで、デートに誘われたの」
「何ですか、それ? どちらにしても友理奈ちゃんには美味しい話じゃないですか……」
「ま、まあ、そうなんだけどね……。でも、それは結果論的な観点から見てるから言えることでしょ。私だって、最初は何をされちゃうのかって……」
と、そこで頬を赤らめる友理奈。
どういった辱めを受けるとでも思っていたのだろうか……。
これではとんだ痴女ではないか……。
「まあ、とにかく服装をどうにかすればいいんじゃないですか?」
「服?」
「そうですね。私服は持ってきてるんでしょ?」
「いや、それが……。結構ラフなものばかりで……。それこそ、出かける用の服は自宅に置いてきてしまったので……」
言われて思ったが、確かに彼女は普段、家で着ている服は、ショートパンツとかやたら足を出している……、もとい、動きやすそうな服装が多いと感じた。
あとはパーカーとか……。
確かに女の子同士で買い物に行くには構わないが、デートともなるとそんな服装ではいけない。
「私の服を貸してあげてもいいんだけれど……」
と、私は友理奈の顔から視線を少し下げてしまう。
視線に気づいた友理奈は、ムスッと頬を膨らませて、
「ふふふ……。いいよ、別に……。私の胸には少々大きすぎるものね……」
「あははは、ごめんね。友理奈ちゃんよりも結構大きくて!」
「もう! 控えめにこっちが言ってるというのに、どうしてマウントを取りに来るの!?」
「ふんっ! 私にも友理奈ちゃんに負けていないものがあるってことだもん!」
「キィィィィィィィィッ!!! 本当に腹立つわね! そ、そんなの脂肪の塊じゃない! 小さい方が感じやすいんだから!」
「………え? 友理奈ちゃん?」
「あ………いや、そういうつもりで言ったんじゃなくて……」
友理奈ちゃんの顔色がさっと引いてしまっている。
「あ、何だったら攻めてあげようかなぁ……。敏感なところ……」
「あうっ! ごめん! さっきのは謝るから! あと、私の実家に一緒に来て! ちゃんとおもてなしもするから……。で、服を選んでくれないかしら……」
何だか、巻き込まれた感が半端ないけれど、仕方なく、私の午後は友理奈の実家に行くことでスケジュールが決まってしまったようだ……。
ま、いっか。
友理奈の実家ってどんなところか気にもなったし。
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