第15話 彼氏と彼女の戦い(一学期末考査)③


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 ああ、勉強が捗らない……。

 だって、何だかモヤモヤするんだもん。


「間違いなく嫉妬よね……。江奈ちゃんが勉強教えてもらってるだけなのに……。それくらい彼女としてドーンと構えていればいいのに……」


 それに今思えば、祐二との勝負って必死にならないとだめよね。

 だって、買った方が負けた方にひとつ好きなことをさせれるって……。

 もしも、私が負けちゃったら…………。



 帰宅後すぐに私は、祐二に部屋に連れ込まれる。

 そして、鞄を投げ捨てるように床に置くと、そのまま私の唇を塞いでくる。

 ……ちゅ……ちゅる……ちゅぱ……

 

「も、もう! 早いってばぁ……。シャワーも浴びてないのに……」

「友理奈の汗の匂いも好き」

「………もう。バカぁ………。変態だよぉ……」

「嫌い?」

「ん~ん。好き……。大好き……♡」


 薄手のカッターシャツの背中の部分でブラジャーのホックを祐二はさっと外す。

 後ろからカッターシャツのボタンを胸元の部分だけ外され、私の肌があらわになる。

 祐二の指は意地悪く私の敏感な先っちょを刺激してくる。


「……き…もち………いい……♡」



 と、妄想がかなり進んだところで、私の部屋のドアが開く。


「ひいっ!?」

「あ、ごめん! 着替えようとしてたの!? ノックしたら良かったね……」

「え、江奈……どうしたの!?」

「あたしたち休憩で甘いものとしてカステラ食べてたんだけど、祐二が友理奈ちゃんにも持って行ってあげろって言うから持ってきてあげたの。ジュースも一緒に持ってきたから、置いとくね」

「あ、ありがとう!」

「勝負、頑張ってね!」

「う、うん!」


 私は作り笑いで何とか誤魔化す。てか、バレてないだろうか……。

 今の驚かされた結果、私の下着は濡れていた……。

 もう、本当に恥ずかしい……!



 新しい下着に着替えて、私は食べ終えた食器をもって、2階からキッチンへと降りてくる。

 が、ダイニングやリビングには誰もいなかった。

 祐二の様子を伺おうとそっと、ドアを開けると、


「わぁ……神楽くんって、本当に教え方が上手なんですね!」


 久遠寺さんが祐二の横で質問をしていた。


(て、何で増えてるの~~~~~~~~~~~!?)


 私は思わず叫んでしまいそうになる。

 そ、それによく見ると、祐二の右側には江奈、左側には久遠寺さんが挟むように座っていて、見ようによってはハーレム状態だ。

 そ、それに、祐二の部屋のローテーブルに久遠寺さんのIカップが乗ってるように見える……、というか乗っている。


(な、なんていやらしいおっぱいなの!? しかも、ほんわかおっとり系とか……ラブコメ好きの祐二にはドンピシャじゃないの!)


 私は今にも歯ぎしりをしたくなってしまう。

 が、そんなこと言っていても仕方がない。むしろ、二人も教えることになったのだから、自身の勉強時間の確保が難しくなるのだから、私は自分のことに集中することが一番いいのだと飲み込むことにした。

 そっとドアを閉めると、足音のしないように部屋に戻り、再び勉強を始めた。



      6


「んんっ……ちゅるちゅる……むは……」


 まさかの事態だった……。

 せっかく、ここまで勉強が捗っていたというのに、まさかの試験前日が「死の宣刻」の日になってしまうなんて……。

 しかも、よりによって、学校の廊下を歩いているときに、私の目の前で祐二は意識を失った。

 周囲も驚いたが、私はあくまでも冷静に、近かった応接室を借りることにした。あくまでも熱中症ということにして……。

 とにかく、だれにも見られない場所が必要だった。

 そこで応接室のソファにゆっくりと寝かせて、「私が様子を見ます」と申し出て、そのまま今の状況に至る。

 一週間に一度、祐二の身体に起こる「死の宣刻」を止める方法は、私たち転生者がエッチなキスをすること……というか唾液の享受だ。

 キスを終えると、祐二はうっすらと目を開ける。


「……友理奈……ごめん」

「本当よ。昼休みとかにキスしてても、この呪いを止めることはできないのね……。キスの事前予約的なものはないのね……」

「そんなことができるなら、もっといっぱいキスするのにな」

「―――――!?」


 私は思わず恥ずかしくなってしまい、顔が赤く染まってしまう。

 無意識になんてすごいこと言いだすのかしら……、コイツは。


「と、とにかく、明日から試験なんだから、アンタも頑張りなさいよ」

「ああ、分かってるって……。ぜってー負けねぇから」


 私がドアを開けると、そこにはクラスの女子が構えていた。

 私の顔は引きつる……。そもそも何事なの!?


「ねえねえ、摩耶さんって神楽くんとどういう関係?」

「へ!?」

「だって、何か意味深な話してなかった?」

「別に!?」

「最近、昼休みになったら二人とも教室からいなくなるけど、一緒にご飯食べてるとか?」

「そういう関係じゃないって……」

「やっぱりライバルは江奈ちゃん?」

「いや、だからライバルって何?」


 私はひっきりなしにゴシップネタの好きな女子たちにあれこれ訊かれる。

 私は全否定をしつつ、その取り巻きから離れる。

 今日は、学校にいることは明らかに不利! 絶対に自宅に直行するしかない!

 私は昇降口から自宅まで彼女たちに追いつけないように走って逃げた。

 バレたら面倒なことになるんだから………。



     7


 試験期間は9教科もあるにもかかわらず、あっという間の4日間だった。

 あの日以来、クラスで私に対する噂が浮上したけど、テスト期間中はあまり接触を断っていたことも功を奏したようで、テスト期間が終わるころには、噂も沈静化されたようだった。


「だからって、試験明け早々、こうやって屋上で会ってたら、また噂が再燃しそうよね……」

「そうだよなぁ……」


 久々に二人きりになれた私と祐二。

 祐二は私を後ろから抱きしめている。後ろから私の黒髪に鼻をこすりつけている。


「あんた、それ何やってるのよ?」

「久々だから、友理奈の匂いをたっぷりと吸い込んでるんだよ」

「………何だか、それはちょっとエッチっぽいわ」

「そうか? じゃあ、お前もやってみる?」


 やりたいに決まってるじゃない! どれだけ耐えてきたと思ってるのよ!?

 それに距離を開けていたから、その影響で下半身の疼きも普段以上にキツイのが来たし……。

 私は振り返ると、祐二の太ももに座り、抱っこされるようにして、首筋に鼻をこすりつける。

 何だか、変態みたい……。でも、祐二の匂いがする……。

 だんだん、気持ちが高まっていってしまう。

 私はちらりと上目遣いで、祐二の方を見る。

 祐二は緊張しているのか、遠くに視線をやっている。


「バカ祐二!」


 私はそのまま彼の唇に私の唇を押し付けた。

 いやらしいキスではなく、恋人同士のキス。

 エッチなキスではなく、甘酸っぱいキス。

 いっぱい青春したい。いっぱい彼を愛したい。

 前世で愛せなかった分だけ……。いいえ、それ以上に―――――。



 そして、週が明けて結果が貼り出された。

 私はその結果を江奈たちと見に行く。


「やっぱすごいよねぇ……」

「本当。さすがって感じ……」


 周囲の言葉が私の耳に突き刺さる。

 私は貼り出された結果を前に、呆然と立ち尽くしていた。


【 二位 摩耶友理奈 八六九点 】


 そっと目を右にやると、


【 一位 神楽祐二  八七〇点 】


 一点差か……。

 近いようで、遠い一点差よね。


「摩耶ちゃん、すごいね!」

「今回もすごい点数をたたき出しちゃうんだね!」

「あはは……。でも、上には上がいるんだもん。困っちゃうよね」

「神楽くんは別格だよ。最近、寝不足だったみたいだし……」

「え……? そうだったの?」

「江奈たちが言ってたんだけど、江奈たちに勉強を教えた後に自分の勉強をするから、寝るのが2時とか場合によっては3時くらいになっていたらしいよ」


 そうだったんだ……。

 そんなこと知らなかった。同じ屋根の下にいながらも……。

 それなのに、私ったら、江奈に勉強を教える分、自分の勉強時間が減るから……とか考えていたなんて……。

 これって一点差だけど、あっちは江奈や久遠寺さんに勉強を教えつつやってたわけなんだから、あきらかに完敗じゃない。

 そう思っていると、私の横に祐二がやってくる。


は今回はすごく近づいたな?」

「いえいえ、聞いたところ、は幼馴染に勉強を教えながらだったらしいですね。大変だったでしょうに……」

「ま、次回も精進しろよ!」


 そういって、祐二は去っていった。私も祐二と同じ方向に向かって歩き出す。

 建物の柱の陰のあたりで、祐二が壁にもたれてる。

 私はそこで周囲の視線を気にしつつ、立ち止まる。

 そして、彼の胸に飛び込み、


「もう! すっごく悔しいよぉ! あんなに頑張ったのに負けちゃうなんて! 次からは私も勉強会に参加させなさいよ! 絶対よ! これは彼女命令なんだから!」


 私は悔しくて涙が溢れだすが、見せたくないので顔を上げられない。


「おいおい……。賭けには俺が勝ったっていうのに、お前ってやつはそんな身勝手な……」

「いいじゃない。これはこれ。それはそれなんだから……。て、賭け!? そうだったわ……。好きなことされちゃうのよね……。や、やっぱり私を押し倒すの!?」

「お前や江奈の脳みそはエッチなことしか考えられないのか? 違うって! 別に押し倒す気はないよ。今度の休みに一日デートしてくれないか?」

「………………へ?」


 私は彼の言った言葉に対応できず、反応できなかった。

 デート……。デート!?!?!?

 私は人生で初めて、デートのお誘いというものを受けたのであった。

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