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「抱かれたい」の五文字を言わせるために両手を塞いだ君は不在


記憶喪失になってまっさらになってもう一度出会ってみたい


出会わなければ良かったとは思えない ただ選択肢を間違えた


跪く意味を知らない君といて祈りの意味を知りゆく真夏


愛するの意味を初めて知った時すでに私は人妻だった


身体さえ君を知らずに生きてたら私は今も笑えてたかな


もう君の思い出だけで蘇る人間だけにはなりたくないな


迷いすら楽しめるような年齢になったはずでしょ不惑なんでしょ


苦しさを吐き出すのは解決を望むからじゃない楽になりたい


一切の欲望などは捨ててゆき笑うだけの機械になりたし


好きにしていいよと君は笑うけどすべての君に囚われて夏


汗ばんだ身体ふたつで藻搔いてるどうか溶けてひとつになって


溶けあっていきたいと願うのに皮膚や空気が邪魔をする真夜中


快楽の記憶は取って置いてるのそれとも疾うに捨てるべきなの


後悔が重きほうへなびきたる吊り橋の揺れを恋と思ひて


もう二度と会わないことも今すぐに抱かれることも厭わない恋


もう二度と巡り合わない夏と知るただ一度きりあなたの隣


いつかしら終わると知れて泣く君の「終わりは今じゃない」が響いた


終わることばかり議論する僕らには未来を妬む権利があった


手料理を振る舞うほどの仲でなしわれの特技は知られぬままで


不恰好なあなたのパスタを知るのは私だけでいいと思うの


信じると愛しているの隔たりで次の電車を見送れる夏

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