君の一瞬を、僕は描く。
夕暮 春樹
放課後誰も居ない教室で君と出会う―①
僕はいつも放課後に一人のこって教室で絵を描く。
でも、今日は部活の事で先生に呼ばれていたから、遅くなってしまった。
教室に戻ると、見知らぬ色白の黒髪の女子が僕のスケッチブックを見ていた。
するとこっちに気づ付いたのか僕のスケッチブックを持って逃げるようにして去って行った。
声をかけようとしたがその頃には姿が見えなかった。
僕は混乱しながらも外も暗かったので帰ることにした。
次の日の授業中はずっと昨日の放課後の事をずっと考えていた。
でも、あの女子に見覚えがある訳でもなく、考えてもきりがないので考えるのをやめた。
放課後になったら彼女が現れるかもしれないと思って、いつも通り絵を描いて待ってみたけれど、彼女は現れることはなかった。
次の日の朝いつも通りの時間に登校すると、下駄箱の中に手紙が入っていた。
一瞬だけラブレターか?と考えたが僕にそんなものがくるはずがない。
内容は、「今日の放課後話があります。教室で待っていてください。」
誰からの手紙かは分からないが、きっとこの前の少女だろう。
色々考えても時間の無駄になるので、僕はその少女を待つことにした。
放課後、野球部やサッカー部の掛け声が聞こえる中、僕は教室でただ一人手紙の少女を待ちながら絵を描いていた。
少しすると教室のドアが開く音がした。
ドアの方を見てみるとそこには、僕のスケッチブックを持った黒髪で色白の少女がこっちを見て立っていた。
目が会うと少女はこっちに歩み寄ってきてスケッチブックを僕に差し出した。
「ごめんなさい。あの時は君の絵に見とれていて、そこに君が来て、あせって、持って帰ってしまいました」
そういうと少女は頭をあげてまた話し始めた。
「でも、君の絵にはすごく感動した。君ってよく人を描いてるでしょ。その絵の人達が生きてるみたいで、今にも動き出しそうで、とても輝いて見えた。」
「そう言って貰えて嬉しいよ。ありがとう。」
少しびっくりしたけど嬉しいのは本当だ。
「あっ、自己紹介がまだだったね。私は望月いろは。よろしく。君の名前は?」
「僕は、白上冬弥。よろしく。」
戸惑いながらも、そう答える。
「冬弥くん。よろしくね。」
そういうと彼女は微笑んだ。
すると彼女は、申し訳なさそうに話し始めた。
「ひとつお願いがあるんだけど、よかったらここで一枚描いてくれない?」
「別にいいけど」
そう言われて断る理由も無かったから、さっき描いていた絵の続きを描くことにした。
それにしても人に見られながら描くのは少し描きづらい。
描き終わると、彼女は目を輝かせてこっちを見ていた。
「うん。やっぱり冬弥くん才能あるよ!」
「そうかな。もし良かったらその絵あげようか?」
「ほんと?!もらっていいの?」
「うん、あげるよ。」
「やったー!」
ふと、時計を見るともう7時をまわっていた。
「あっ、もうこんな時間。またね。」
そう言って彼女は教室を出て行った。
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