第11話 順調すぎるダンジョン攻略

「さっきの魔法はすごかったな。だけど、さっきも心配したが魔力は大丈夫か?」

「今の魔法は援護の為にと思って撃ったものなので、そんなに魔力を込めずに放ったものです。だから魔力は全然消費してないんですよ」


 先ほどの魔法“ファイヤアロー”は、モンスターに当てて怯ませるぐらいの効果を想定して放ったもの。動きを止められたら良いな、ぐらいの考えで撃ったもので僅かな魔力しか込めていなかったから今の魔法で倒すつもりは全く無くて、想定外の事だった。


 アーリーウルフってこんなに弱かったか? と思ったが、多分久しぶりのダンジョン攻略で魔力コントロールがミスってしまったのだろう、不用な力が入ってしまったのだろうと考えて自分を納得させる。


「いやいや、援護と言ってもアーリーウルフを一撃で倒すなんて、凄い魔法じゃないか」


 フレデリカさんが興奮冷めやらぬ感じで僕を賞賛してくる。


「そうね、今まで組んだ魔法使いの魔法に比べて威力は段違いだわ」


 シモーネさんも追随して賞賛してくれる。聞けば、クロッコ姉妹が以前組んだ魔法使い達は非常に魔力が少なかったそうで。


 大体の人たちは魔法を10発も撃てば魔力を使い果たしてバテてしまったらしい。だけど魔法の威力は有ったそうなので、上手く指示して遠距離攻撃でモンスターにいい具合にダメージを与える切り札として活躍してもらったそうだ。


 流石にそんな魔力の低い魔法使いと比べられても僕としては微妙な気分になるだけだったが、何も言わずに胸のうちに秘めておいた。冒険者の魔法使いは姉妹の言う人達ばかりなのだろうか。


 そんな風にして、久しぶりのダンジョン突入して最初の戦闘はあっけなく終わった。


 その後もどんどん奥に進んでいくが、今居る階層のモンスターはどんなに魔力を絞って当てても一撃で倒せてしまえるような魔力耐久が低いモンスターしか居ないようだった。


 これじゃあ、クロッコ姉妹の力量を見る前にモンスターを倒しきってしまう。


 しかも、魔力を殆ど使わないので、モンスターとの戦闘終わりの間、ダンジョンの内部へ突き進んでいる合間に全魔力が回復してしまう。そのぐらい、今使ってモンスターを倒せる魔法は魔力がほとんど必要ない。


 流石に出現するモンスターに歯ごたえがないと僕達3人の意見が一致し、2層、3層と最短ルートでダンジョン地下の奥へと突き進んでいく事に。


 5階層まで進むと、僕のファイヤアローの魔力を絞った遠距離からの牽制魔法を当てても一撃で死なないようなモンスターが出てきた。


 だがしかし、前線で振り上げるフレデリカさんの大剣と剛力で繰り出される一閃、僕とフレデリカさんの二撃でモンスターは尽く生命力を失っていった。


 そして、万が一倒し切れなくて光の粒子にならなくても、シモーネさんが弓で的確に射止めていく。


 今日即席で作ったパーティとして互いの動きにはまだ多少のぎこちなさは感じるが、だんだんと連携が上手くできるようになっている。

 

 姉妹が普段狩場にしている10階層。ココに来れば苦戦するかもと思っていたが、僕の牽制魔法で足止めしてからフレデリカさんが一撃を加えて、トドメにシモーネさんが弓で撃って仕留める。


 まだ光の粒子になっていなければ、ダメ押しにモンスターに向かって僕が魔法を当てる。


 このようにして攻撃パターンが上手くハマって、非常に簡単にモンスターを倒していくことが出来た。


「いやぁ早く着いたな。エリオットが居たから、ココに来るまでにいつもの3倍ぐらい早さでたどり着いたな」

「ほんとに。モンスターが近づいてきたら見える前にエリオット君が教えてくれるし、モンスターからの奇襲も受けなかったからダメージも受けなかった。本当に楽に来れたわ」


 なんだか、くすぐったいぐらいに褒めてくるクロッコ姉妹。探索魔法が非常に有効で、ダンジョン内部の状況を大体把握できるために、モンスターの出現位置や他の冒険者の位置などがハッキリ分かる。これらの情報を手に入る事ができたから大分楽にダンジョン攻略に進めるわけだ。


 そして姉妹のよく来る狩場で、しばらく僕たちはモンスターのドロップ品を狙って戦闘を繰り返し行った。

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