第12話 正体と事情説明

 彼女は豪華なドレスを着ていた。こんな森の中で見るような格好じゃない。しかもそのドレスはボロボロで彼女の様子も衰弱している。


 このまま放置すれば、モンスターに襲われる前に弱って死んでしまいそうだ。


「大丈夫か?」

「……う……ぁ」


 喋れない程なのか。


「回復」

「……っ」


 表情が安らかになった。これですぐに死ぬことは無いだろうが、放置してると危険なのに変わりはない。連れて帰るか。


 畑仕事の予定を変更して、僕は彼女の軽い身体を抱きかかえる。


「おかえりなさい、早かったね」

「ちょっとね」


「その子は?」

「森の中で拾った」


「どこかの貴族の娘かな?」

「そうかも」


「申し訳ないけど、ちょっと様子を見るのを任せていいかな?」

「うん、大丈夫だよ」


「じゃあ任せた」

「行ってらっしゃい」


 男性だったら、起き上がるまで見張っておくが女性なので任せることにした。この正体不明のお嬢さんがロジーナよりも強い可能性は低いだろうから任せても安心。そもそも弱っているし。


 その間に、急いで畑仕事を終える。戻ってきたら起きているだろう。



***


「ただいま」

「おかえりなさい」


「彼女、起きましたよ。今は食事中です」

「そうか。僕もお昼ごはんを貰えるかな」


「用意してるよ。どうぞ」

「ありがとう、彼女から何か話は聞いた?」


「いえ、さっき起きたばかりで。どうやら、どこかからか逃げてきたみたいなんですが他の情報については教えてくれなかったですね」

「そうか。実は、僕の方は少し情報を見つけた」


 畑仕事を終えた後、ちょっとだけ周囲を散策してみると襲われた痕跡のある場所を見つけた。


 生まれてから今まで見たことがない、綺麗なドレスだ。いいや、ドレスなのかな。どうだろう。分からないな。知識が無い。



***



旅立つことになった。新婚旅行のような気分で。


新婚旅行って何?

この世界には、そんな風習が無いらしい。


結婚をしてから一緒に住む事が当たり前だった為、結婚式のいそがしい準備が終わり二人で非日常的な時間をゆっくりと過ごす事の出来る大切なイベントなのです。


へぇ。


説明すると、彼女は感心した。そして、興味を持ってくれたようだ。

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