第17話 情報収集

「ただいま」


 しばらくして、バハドゥートは戻っきてた。彼は手に、シャルロットから受け取り持っていったモンスター素材の代わりに、大きな袋を持っていた。


「はい、無事に換金できたよ」

「え? 私が持つの?」


 バハドゥートは、換金できたと言って金袋をシャルロットに手渡した。手渡された彼女は、驚き怪訝な表情を浮かべながらそれを受け取る。ずっしりと重かった。


「というか、換金に行くのなら皆で一緒に行けばよかったのに」

「そうだ、みんなで一緒に行きたかった」


 シャルロットと、ミラベールも加わって一緒に行けばよかったのになと訴えるが、1人で行った理由をバハドゥートは語る。


「こんなに人目を引く者たちが4人も一斉に金の交渉に向かったりすると、交渉する相手を萎縮させてしまうだろう。それに、何か面倒事を起こすかも」

「たしかに」


 だから1人で交渉に向かったと、バハドゥートは説明した。そして、直前に起きた面倒事を思い出して納得するシャルロット。


「とりあえず、今晩休める宿屋を探そうか」


 バハドゥールは話題を変えて、次の行動について離し始めた。別に野宿でも問題は無いけれど、人間の姿で過ごしている時は人間らしい生活をしたいと考えて、資金も手に入れたし宿屋に行こうと提案する。


「いいね」

「皆でお泊りだ!」

「早く休みたい。疲れた」


 ということで宿を探しに、今度は4人全員で街の中を歩いていく。すぐに泊まれる宿屋を見つけたので、そこで滞在することに決めた。


 それから一週間、到着した時には名も知らなかった街に滞在して、全員で手分けをして情報収集を行った。



***



「そういえばバハドゥートさんは、この街のことを知ってるのですか?」

「いや、初めてだ。ただ、知らない街を歩いたりするのは慣れているからな。世界が変わっても、僕の知っている世界と比べて、人や街の作りにそんなに違いは無いようで助かった」


 最初から慣れた様子で迷わずバンバンと街の中を進んでいったので、そんな疑問を持ったシャルロットがストレートに尋ねる。すると、バハドゥールは答えてくれた。自分の居た世界と似ているから、行動もスムーズに出来たからだと。


「ところで、他の皆は別々の世界から来たのか?」

「おそらく、そうだと思います」

「私は知らない」

「多分そうなんじゃねぇか? 分からんが」


 4人それぞれの持つ情報をすり合わせて考えてみた結果、4人とも別々の世界からやって来たんだろうという結論が出た。


「僕は元の世界に帰るつもりは無いけれど、他の3人はどうだ?」

「私は、絶対に帰るつもりは有りません」


 バハドゥートの問いかけに対して、シャルロットが元の世界に帰るつもりは無いと即答していた。表情は暗くて、静かな声だが悲痛な叫びのような迫力があったから。よっぽど帰りたくない、と思う理由が彼女にあるらしい。


「私も、べつにいいかなぁ。戻らなくても。みんなと一緒に居たいな」


 笑顔を浮かべて、ミラベールが答える。彼女も、自分の居た世界に何の未練もないような感じで、元の世界に帰るつもりはないと答える。


「俺も別にいいよ。元の世界に戻らなくても」


 適当な返事をする感じで、答えるベリル。ということで、この場にいる異世界から呼び出されてきた4人全員が、元の世界に戻ろうとは思っていなかった。


「帰還する為には、こちらの世界に我々を呼び出した魔法陣について調べてみる事で帰る方法を見つける事が一番の近道だと思う。もしかしたら、帰還する為の魔法陣もあの場に用意されていたのかも知れない」

「たしかに」


 改めて、バハドゥートは皆に問いかける。


「元の世界に帰りたいと思うのなら、今から召喚された場所に戻って調べてみる事が一番の近道だと思う。だが、それは必要なくなった」

「そうだな」


 この場に誰か、元の世界に帰還したいと思っている者が居るのならば、帰還の方法を調べるために一度、召喚された場所まで戻る、という方法もある。だが、誰も元の世界に戻る必要は無いと満場一致で決まった。だから、誰も戻ろうという意見は口に出さなかった。


 バハドゥートが皆の表情をしっかりと確認してから、これから進むべきだと考えている場所について皆に知らせる。


「なら、これから向かう先はココが良いと思うよ」


 そう言って、バハドゥートは皆の前に地図を取り出してきて、ある場所を指差す。

そして4人は、ウィシュトシュタという名前の商業都市に向かうことに決定した。

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