第10話 復活の女神

 抜穴を超えた先には階段があり、降る道筋をわかりやすく示していた。


 「この先だ、堕天界は」

長らく気を伺っていた。神属の天使として翼を黒く染め潜伏し、全能に情報を与えながら


「総てはゼウス様の御心のままに、穴を開けるよう教えた箇所はユグドラシルの急所ではなく〝堕天達の急所〟となる箇所‼︎」

マンセマットの横流しにより、堕天使の侵攻はゼウスに筒抜け。返って堕天界への侵攻を赦すトリガーとなった。


「ゼウス様にまかされた任、神官を操る統率長であり情報伝達。叛逆者の根城を破壊する為に私は存在している!!」

降り階段の先に、黒い渦が見える。


「あそこだ! 皆の者、飛び込むがいい!」

統率長の命を受け一斉に飛び込んでいく

最後の一人が渦に飛び込んだのを確認すると、続いて自らも飛び込み下界へ進む。


「……暗いな、光を灯す。足元に気を付けろ」

白き翼は光をもたらす

闇を晴らすとそこにはためく黒き翼、頭の輪は既に〝天使のそれ〟を超えていた。


「お前、ユスリカか?」


「……。」

返事は無い、だが見開くその目に総てが映る


「叛逆者...いや、貴方たちは....〝食糧〟」

闇は足元から再び沸き立つ。

脚部を捉え、蔦のように絡み付き喰らう。



「うわぁぁっ!!」


「なんだ、これは⁉︎」

兵士の殆どは貪られ崩れてしまった。

力無きものは幸福だ、なまじ力が強ければ糧となるばかりでは命を使い切ることはない。


「お前、いつの間にこんな力を..」


「貴方にも分けてあげるわマンセマット、与え過ぎて暴走しなければいいけど。」

捕らわれたマンセマットの口元に、金色の聖杯を傾け中から液体を垂らす。


「ぐっ..あが....」


「気付いて無いと思った?

そうよね、だって貴方はまだ目的の堕天界にすら〝辿り着いていない〟んだもの。」


(辿り着いていない?

ならば此処は一体何処だ!?)


堕天界に続く階段は黒色、しかし降りてきた階段は白い色をしていた。それ程わかりやすく大きな違いに気付かないとは。


「うがぁっ!!」


「やっぱり黒い翼がお似合いよ、貴方は。」


「うがあぁぁぁっ!!」

神の力は強大にして規格外、そこに堕天使としての覚醒が混じれば更なる覚醒を促す。


「さて、私も向かおうかしら。

全能が治める〝ユグドラシル〟とやらに」

白き階段を踏みしめると、光は閉ざされ堕天の黒き闇へと染まる。


「復讐、というほど恨みは無いのだけれど。」


入り口の穴を通じて、堕天使達に聖杯の滴が落とされる。折られかけていた翼は覚醒によって再び活気を取り戻していく。



        下界広場



「ブルル...」


「..なんだ、急に様子が...」


「ブルルオォォッ!!」


「おいおい、ウソだろ..!?」


       城内地下監獄


「キシャアッ!!」

凍結された囚人達が氷を破り奇声をあげる。目覚めたその姿は眼を潰され心は無く、殺戮を求めるのみの化け物と化している。


「なんなんだこの気味悪りぃのは?」


「ヒヒヒヒヒヒヒッ!!

素晴らしい力じゃ、流石神のオボシメシッ‼︎」


「随分見れない姿んなったな、ジイさん。」

奇物を扱う主はより奇怪な姿へ変貌する



 「…来たんだね、ユスリカ。

彼もそろそろ動く頃かな、そうだろ?」


「……」

全能の元へ再び還る。


「..来たか、ジュピター」


「右腕を返して貰おうか、ゼウス!!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る