ブレインサイト

岡 辰郎

あらすじ

 東京大学脳神経外科の教授だった私(長嶺聡)は、10年前に妻の脳腫瘍手術に〝失敗〟して死に至らしめた。その後は手術ができない精神状態に陥り、アル中同然になって表舞台から去った。だが、公安警察の迫田からある先進手術のオブザーバーを依頼される。

 手術支援ロボットをイスラエルから遠隔操作して、脳の中央部にできた巨大な腫瘍を覚醒下で取り除くという実験的手術だった。最新機器を集めた札幌の大病院の脳外科手術室『ブレインサイト』で患者を管理するのは、かつての仲間である伊藤のチームだった。

 だが手術開始直後、麻酔医の挙動が不自然なことに気づく。患者は急激な血圧低下の後に心停止する。麻酔医が薬品を偽って殺そうとしたのだ。白人の患者――イスラエル大使の息子であるデイビッドは、素早い蘇生で命を取り止める。迫田が捕えた麻酔医は、「何者かに脅迫された」と自白するのだが――。

 それは、密室となった手術室が〝世界〟の敵となる予兆に過ぎなかった。私は、デイビッドを救うために〝最前線〟に立つことを強いられていく……



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この作品は2016年に第6回アガサ・クリスティー賞にノミネートされたものです。当時のままの形で掲載していますので、国際情勢の表現に正確性を欠く部分がありますが、ご了承ください。


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