アイデア

ネッシー

寿命が見える男 前編

僕は寿命が見える家系である。

そしてそれを生業に占い師をしている。

それは多くの人に知られており、僕は幼少の頃より大変迷惑な思いをしていた。


僕が1番最初に持った記憶は親戚の家で驚かれた記憶だ。

僕は家系の中でも大変優れた視力を持っており、人の事故による寿命やなどの環境因子の寿命まで見ることが出来た。

勝手に見えてしまいこちらとしては大変迷惑だったが、優秀な跡取りと喜ばれた。


ここまででわかるだろうが、僕の家は大きな家系で、特殊遺伝によりこの寿命が見えるという非人間的能力を授かった。

歴史の影の中で私達はずっと様々な人を支え、時には落ちぶらせてきた。

僕は能力を授かった代わりに、職業や結婚する人、老後の過ごし方など全て決まってしまった。

身の振る舞い方ももう幼少期の頃に教養され、幼稚園では孤島のように浮いていた。


別に寂しくはないけど。


そんな社会の常識だけを下手に知った捻くれ者は初めて高校の頃友達が出来た。


「ねえあなたって人の寿命が見えるって本当?」


女だった。1年生の夏休み前で鬱陶しい梅雨を抜け、夏本番が始まる頃。

黒い髪が綺麗で腰くらいまで伸びていた。

前髪は眉毛の上で揃っていて、あとは目が細いくらいしか特徴は無かった。


よく彼女は自分のことを「平安時代なら美女だった。」と言うことがあった。

それを不安そうによく漏らしていたが、その髪を変えることは無かった。


話を戻そう。


「そうだけど。」

僕はこの時変なオカルトマニアだと彼女を断定した。

僕に話しかける人は大体弄ってくる奴や仕事柄知り合った奴ばかり。

そして地味な今まで話したことの無い女男は大体オカルトマニアだった。

「へぇー。本当だったんだ。」


次はどんな人でも同じことを言う。

『私の寿命はわかる?』


「それはおかしな話ね。」

そう言い彼女は伏せてしまった。


なんだこの女は。


後から見れば彼女は女子の1つの群れに属していて、大変お喋りな女だ。


そしてそれから暫く経った別の日。

僕は部活に席を置いていないので、夏休み来ることは無かったが、1日だけ私用で学校に訪れた。


僕の家は寺であり、この土地と深く結びついている。寺と占い、今回は寺として学校を縁起を守る仕事だ。

そのため僕は学校に呼び出されたのだ。

人が居なくならないと出来ない用事だったため、部活で居なくなる時間まで教室で待った。

3時間程度であっただろう。

空は1番変化する時間の手前に差し掛かっている。宿題を持ってきていたため、そんなに暇はしないと思い待つことにした。


その日、いよいよ日が暮れるそんな時間に美術部に所属していた―初めて友人になったおかしな女――彼女と偶然鉢合わせた。なにやらクラスに物を取りに来たらしい。


彼女は目が合ったと思ったら大きく視線を逸らし、自分のロッカーに物を取りに向かった。

なんて不快な女だ。


しかしそれと同時にあの出来事を強く思い出した。そして考える。

彼女は一体何を思ってあんな会話をしたのか。



「なあ、夏休み前なんであんなこと聞いたんだ?」

「へ?」


彼女は驚いたような反応を見せ、記憶を探り探りって思い出したようだ。


「あー、あれね。」

彼女は俺の前の席に座った。彼女の髪は綺麗に降りてきた。

「実は私は昔貴方の家にお世話になったの。父が病気でね。だから気になっただけ。」

大した理由ではなかった。小さくがっかりした。

「そうか。」

と答えて会話を終わらせようと思った。


彼女はせっかく座ったのにこれで終わるのは味気ないと思ったのだろう。

「でもどうしてそんなこと聞くの?」

彼女の方へ視線を動かす。すると戸惑ったようで

慌てながら言った。


「ほら!あなたにそれを聞く人なんて沢山いたでしょう。だから不思議に感じたの。気に触ったのならごめんなさい。」


僕はその席に座った時点で気に触っている。

「いや大した理由はない。ただ自分について聞いてこなかったのが初めてだったから。それだけだ。」

「そうなんだ。そういえば夏休み毎日学校来ないよね?今日はなんで来たの?」

これは友人と接しているときのような彼女だ。

「たまたま用事があった。予定より時間が余っているから宿題をやっている。」

「それは素敵ね。」


彼女との会話は違和感があった。

今考えてみれば簡単だろう。

初めて”されなかった事”が沢山あったからだ。


例えば僕に関する質問する人は居ないこと、そして話を続けようとする人も居ないこと、1番は俺についてここまで興味を示す人は今まで居なかった。


僕は見方によっては悪者になる。

そして自分と違う他者を排除するのは、この社会ではよく起こることだ。

僕は昔からそれの的になってきた。

それなのに…。


「お前は変わっているな。自分についてなんの興味も無いのか?」

僕がそんなことを言うから彼女は少し怒りつつ、そのまま答えた。


「こんなに面白い人を前に自分のことなんて気になる人がある訳ないでしょう。」

「面白い人?」

癇に障る言葉。

「そうよ!今まで寿命を見える人なんて話したことなんか無いもの。」

それはそうだろうけど。例えほかの家系、人でそういうところがあっても自ら申告する輩は居ないだろう。


「ねえ、もっと聞いてみてもいい?」

彼女が細い目だが、好奇心を顕にしながら聞いた。


「僕は丁度暇をしていたから構わない。でも君は部活だろう。」

「いいのいいの!もう作品は完成しているしね。」


ここから僕と彼女の友人関係が始まった。

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