第14話 中古
腹が満たされ、久しぶりのベッドに安息を覚えたからか、眠りすぎてしまった。
目が覚めるとすっかり日が昇ってしまっていた。
慌てて飛び起きるとオルフィリアは身支度を済ませて、待ってくれていた。
あまりに幸せそうに寝ているので起こすのがかわいそうだったと彼女は笑う。
ギルドは朝早くに依頼を求める冒険者たちで混むので、今から買い物に行き、昼食を食べ終わったぐらいの時間でちょうど良かったとのこと。
昨夜の情報収集の結果を尋ねたが、父親の消息を知る者はいなかったようだ。
ただ、彼女の父親の所属していた『深緑の導き手』はかなり有名なパーティであるらしい。このノトンの町でも聞いたことがあると答えた人は何人かいたが、現在何をやっているかまでは誰も知らなかった。
顔を洗い、長く伸びた髪を結ぶ。
鏡を見ると、こけた頬や落ち窪んでいた眼窩はだいぶマシになっており、血色が良くなっていた。
彼女が買ってきてくれていたパンにとり肉と野菜を挟んだものを食べ、二人で部屋を出た。
仕立て屋に行くと服が出来上がっていたが、なぜか寸法が合わなかった。
肩回り、胴回り、袖など全体的に窮屈で激しく動き回ると破れそうだった。
初老の店主は激しく動揺し、プライドが許さないからと仕立て直しを申し出てくれた。採寸し直してみると、やはり一日の変化としては異常なほど、寸法が大きくなっていた。同じようなことが起きることはないと思うが念のために、かなりゆったりした大きめの服にしてもらうように注文し直した。
出来上がりは明日の朝には間に合わせてくれるとのこと。
結局、服が間に合わなくなってしまったので仕方なく、古着屋で一番近い体格の男物の服を買ってもらうことになった。その服も大きめで足下の丈が長めだったが、着れないほどではなかった。少し間が抜けた印象を与えるが仕方ない。聞けばこの世界では、服は貴重品で、仕立て屋で服を買うのは贅沢で、庶民は古着を買って自分で直しを行ったり、布地を買って自分で作るのが一般的とのことだった。
さらに余計な出費が増えてしまい、彼女に済まなく思った。
武器や防具も新調しようとオルフィリアは提案したが、服と同様のことが起こり得る気がしたので、中古の品を扱う店で買うことにした。
店に入ると禿げあがった体格のいい店主が親切に武器の解説をしながら、
あれこれ勧めてくれたが、一番安い中古の鞘付き長剣一本とかなり使い込まれた皮の胸当てを買ってもらった。
それに古い外套を買ってもらい、羽織ることにした。こうすれば雨風を防げるだけでなく、身体の貧弱そうな見た目を隠せて一石二鳥ではと考えていた。
武器に長剣を選んだのは、値段もあるが一般的なイメージがあったからだ。
ファンタジーの主人公はだいたい剣を持っているし、とりあえずで選ぶ武器としては
長剣は妥当ではないかなと思った。
選んだ一振りはところどころ刃こぼれしているし、意匠も凝ったものではない。
長さは足一本分より少し長いくらいで、真直ぐな両刃を備えていた。
長剣は在庫もたくさんあったので安かったのだ。
重さもあまり感じず、振ってみても全然疲れそうに思わなかったので気に入った。
新品で全身を固めるより、ベテラン感が出て舐められなさそうな気がしないでもない。
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